俳優・渡辺いっけいが初主演を飾った映画「いくつしみふかき」が、いよいよ6月19日(金)より公開となる。本作は、プロデューサー兼、渡辺とW主演の遠山雄の知人の実話をベースとした、人間の心理の奥底に迫るヒューマンな作品。

 流れ者の広志(渡辺)は、とある村で加代子(平栗あつみ)と出会い結婚。しかし、その後、息子進一(遠山)の出産中に、妻の実家に盗みに入ったことで、村から追放されてしまう……。それから30年、父と息子はお互いを親子と気づかないまま共同生活を送ることになる。果たして、父と子、そして妻の和解は成るのか? ここでは、広志の情婦となるアリサを演じた「のーでぃ」にインタビューした。

――出演おめでとうございます。見事、オーディションで役をゲットしたそうですね。

 映画という以外どんな作品か明らかになっていない、もちろん役柄も分からない形式のオーディションでしたが、逆に興味を持ってオーディションを受けてみました。

――日本人役のオーディションで、本編の役と同じような日本語がカタコトの外国人を披露して、審査員の興味をひいたとか。

 はい。とにかく目立つことを考えて芝居をしました。

――なぜ、カタコトの子を披露しようと思ったのでしょう?

 オーディションの現場に行ったら、とにかく人が多かったんです。そこで、どうしたら目立つことができるかなって考えて、私が得意というか、私じゃなくてはできないことをしようと思って、自己紹介の時にちょっと日本語が下手な外国人っぽい感じを出してみたんです。そうしたら、審査員の方々は、「不思議な人が来ちゃったな」っていう雰囲気でしたので(笑)、最後にきちんと、日本語は話せますよって、ネタ晴らしをしました。

――ネタ晴らし後の反応は?

 よかったーって、場が和むような雰囲気は受けましたね。とにかく私としては、印象を強く残すことができたかなっていう手ごたえを感じて、帰途につきました。

――それがあって、実際の役柄の設定が変わったと。

 そうなんです。もともとは普通の日本人のキャバ嬢でしたけど、オーディションの私を見て、カタコトの日本語を話す台湾人になったそうなんです。まさか、あのままの雰囲気で演じることになるとは思っていなかったので、びっくりしたのは覚えています。

――物まねしながらそこに感情をのせていくのは、逆に難しかったのでは?

 両親は台湾人ですが、私は日本生まれ、日本育ちなので日本語はネイティブなんです。けど、カタコトのほうが自分の意識というか、心を開放しやすくて、すんなりできました。前に出演させていただいたドラマでも、カタコトの外国人役を演じたことがありますので、得意と言えば、得意なんです。でも、最近はそういう役ばっかり来たらどうしようっていう悩みも出てきちゃいました(笑)。

――カタコトな部分は置いておいて、アリサの役づくりは?

 根は素直なので、人を信じたいけれど、これまでにいっぱいいっぱい騙されてきて……。そのために人を簡単には信じられなくなってしまった女の子なのかなと思ったので、一人で強がっているというか、寂しく見えるようなお芝居を心掛けました。

――そんな時、渡辺いっけいさん演じる広志と出会って。

 現場で演じていて感じたのは、アリサは台湾から一人ぼっちで出稼ぎに来ていて、たとえ周りに馴染めたとしても、日本で帰る家には誰(家族)もいないということで、精神的にもかなり無理を重ねてきたのかな、ということでした。そんな時に広志と出会ったことで、その弱みに付け込まれてしまったんだろう、と思いました。

――その前には、常連の社長にも言い寄られていましたが。

 一人日本で働いている彼女にとって、社長は、下心丸出しの理不尽な人というか、虚勢を張っているようにしか見えなかったんでしょうね。そこに、「俺についてこい」っていうパワーの強い広志が来て。そんな人になびくのは、ある意味自然な流れだったのかなと思います。

――その後は、いろいろな意味で、行くところまで行ってしまいます。

 それまで生きてきた中で、周りに正しい行ないをする人が少なかったか、いなかったんだと思います。悪いこととは感じつつも、これまで経験してきた悪さとは種類が違うだけで、ある意味、楽しんでいる瞬間もあったのかもしれません。

――お互いの救いになった?

 さあ、どうなんでしょう。救い云々はともかく、二人のつながりはずっと途絶えずにいたとは思います。

――今回、いっけいさんと共演しての感想は。

 子供のころからテレビで拝見している方でしたので、出演が決まったときはもう、嬉しくて楽しみでワクワクしていました。現場でも、すごく優しくて、そしてきさくな方で、常に共演者の方に気を配っている姿が印象的でした。オン/オフの切替えも素早いですし、勉強になることばかりでした。

――そう言えば、カタコト外国人の物まね(?)を始めたきっかけは?

 二十歳ぐらいの時に、あるドラマで中国人の役をいただいたのがきっかけなんです(笑)。私は、中国語と日本語のバイリンガルなので、はじめは中国語を話す中国人の役だと思っていたんです。そうしたら急に、「日本語で話してみようか」となって。そこで、慌てて、友達とか親戚のことを思い出しながら、その物まねっぽい感じでやってみたんです。気づいたらもう、10年はカタコト外国人を演じていますから、長いですよね。

――撮影から公開まで大分時間がかかりました。

 ようやく、たくさんの人に観ていただける機会が来たことは、一出演者として素直に嬉しいです。たくさんの方に観ていただきたいです。

――最後に、今後の目標は?

 女優としてはやはり、主演を演じたいですね。そして、自分にしかできない役をもっと突き詰めていきたいです。

 もう一つは、金融関係です。お金を稼いだり、生み出す仕組みに興味があるんです。現在は、ラジオNIKKEIさんの番組「夜トレ」にゲスト出演させていただいていますので、両輪で活動していけたらいいなと思っています。頑張ります。

映画「いつくしみふかき」

6月19日(金)より、テアトル新宿にて公開ほか 全国順次公開予定
出演:渡辺いっけい 遠山雄 のーでぃ 三浦浩一 眞島秀和 塚本高史 金田明夫
監督:大山晃一郎
脚本:安本史哉 大山晃一郎
配給・宣伝:渋谷プロダクション
(C)映画「いつくしみふかき」製作委員会

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■あらすじ
30年前。母・加代子(平栗あつみ)が進一(遠山雄)を出産中に、あろうことか母の実家に盗みに入った父・広志(渡辺いっけい)。「最初から騙すつもりだったんだろ?」と銃を構える叔父を、牧師・源一郎(金田明夫)が止め、父・広志は“悪魔”として村から追い出される。進一は、自分が母の知らないものを持っているだけで、母が「取ったのか? この悪い血が!」と狂うのを見て、父親は“触れてはいけない存在”として育つ。
30年後、進一は、自分を甘やかす母親が見つけてくる仕事も続かない、一人では何もできない男になっていた。その頃父・広志は、舎弟を連れて、人を騙してはお金を巻き上げていた。
ある日、村で連続空き巣事件が発生し、進一は母を始めとする村人たちに、「悪魔の子である進一の犯行にちがいない。警察に突き出す前に出ていけ」と言われ、牧師のいる離れた教会に駆け込む。「そっちに行く」という母親に「来たら進一は変わらない」と諭す牧師。
一方、父・広志は、また事件を起こし、「俺にかっこつけさせてください」という舎弟・浩二(榎本桜)に、「待っているからな」と言っても、実際には会いに行かない相変わらずの男で、ある日、牧師に金を借りに来る。「しばらくうちに来たらどうだ?」と提案する牧師。牧師は進一のことを「金持ちの息子」だと嘘を吹き込み、進一と広志は、お互い実の親子だとは知らないまま、二人の共同生活が始まる。

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