古典球にはめずらしい、傍熱型の3極出力管をつかったパワーアンプである。WE271A。筆者は初めて見る球なので、本誌別冊「歴代名出力管」で探してみたけれど見当たらない。短いコメントと、A1級シングル出力の動作例が辛うじてみつかった。

 開発年は1932年。1914年の101Aに始まって1938年の300Bへ連なるWEの3極出力管の中でも、オーディオ用傍熱型は271Aだけのようである。WEのチューブマニュアルによれば、翌1933年に出現した300A(直熱型)とはずいぶん素性が異なる、なるほど傍熱管だ。とはいえ電極の支持にビス・ナットを使用するなど入念なつくりで、姿かたちも美しい。これは格別高度なWEファンのための超希少球ということができそうだ。


左にRCAアンバランスの入力端子とアッテネーター、中央に各チャンネルのDC電流計を配置。真空管は外側から6SQ7GT(ITT)、76(RCA)、271A(WE)と並び中央に整流管5R4(PHILIPS)。

リアビュー。スピーカー端子はネジ留式で、4、8、16Ωで独立している。

底板を開けた内部。完全な手配線で、手際よく配線されている。

傍熱型3極管ウェスタン・エレクトリック271A。最大プレート電圧450V、最大プレート電流60mA。

 このアンプは271Aの標準的な動作例にならい、Ep約400V、Ip40mAの自己バイアスで動作させている。2W強の出力だろうか。ヒーターは交流点火。傍熱管だからS/Nに問題はないはず(公称値で直熱管よりも30?ほど向上)だが、WE流儀の中点タップ付き給電を堅持しているのが興味深いところ。前段は6SQ7と76の2段増幅で、少量のオーバーオール&ローカルNFBをかけている。+B電源は5R4整流だ。音はいわゆるピラミッドバランスで、媚びのない落ち着きが印象的。ヴォーカルやピアノの粒立ちにも大物の器量を感じる。テスト機は試作品らしく、まだ伸びしろがあると思った。

トランスの配置と構造を確認する高津氏。