ZYX(ジックス)を主宰する中塚久義氏は、オルトフォンのMC20を設計した技術者としても知られる人物。このアルティメイト・天空(アストロと読む)は最高峰MC型フォノカートリッジである。配線材はモデルによって6N無酸素銅線と5N純銀線、24k純金線の3種がある。試聴機として用意されたのは6N無酸素銅線仕様のXだ。

 発電コイルの後方にダンパーがあるのが一般的な構造だが、本機は両側にダンパーを置いたシンメトリー構造がユニーク。マイクロリッジ針にC1000カーボン複合材カンチレバーを採用するなど、多岐にわたるZYXの独自技術を結集させた特徴の多いハイエンド機だ。前方に置かれた石球はラピスラズリ製で、本体の重心位置と振動系の支点位置を合わせるためのバランスウェイトということだ。

 本誌試聴室ではエアータイト製の昇圧トランスと組み合わせて聴いている。アンセルメ指揮「三角帽子」は高精細で視覚的イメージの音が体感できた。細部まで明瞭な音を聴かせながら密度感が高く、深々とした音場空間が展開されるのだ。笛の鋭い音色が特にクリアーなのは、カーボン複合材カンチレバーの助力なのかもしれない。続いて聴いたドナルド・フェイゲン「ザ・ナイト・フライ」はリズムが深く沈んだ、やはり映像感覚の鮮明な音が印象的。圧巻は井筒香奈江のダイレクト・カッティング盤。透徹した空気の気配と生々しい声色の存在感が凄かった。

MC Cartridge
ZYX
Ultimate-天空 X
¥1,050,000

●発電方式:MC型 ●出力電圧:0.24mV ●内部インピーダンス:4Ω ●適正針圧:1.7g〜2.5g(標準2.0g) ●自重:7.9g ●針交換価格:¥735,000 ●備考:発電コイルをX(6Nクリスタル銅)/S(5N銀)/G(24K金)の3種から選択可 ●問合せ先:ヒノ・エンタープライズ TEL.06(6170)5731

同社製ヘッドシェルLive18(¥55,000)に装着して試聴した。カーボンファイバー製カンチレバーを採用し針先形状はマイクロリッジ。コイルボビンの前後にダンパーを配して針先の振動をストレートにコイルに伝達し、リニアな応答性を追求する。マグネットはサマリウムコバルトを採用。コイル巻線は音色の異なる3種の仕様がある。ラピスラズリ製の石球は、軽量なポリカーボネート製ボディを制振する役割も果たす。


Ultimate-天空 Xをレコード盤に下ろす三浦氏。アナログプレーヤーはリファレンス機のテクニクスSL1000Rを使用。

組み合わせた昇圧トランス エアータイト ATH3 ¥150,000

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