1940年代を舞台にしたドラマ『スパイの妻』が完成、NHK BS8Kで6月6日の放送が決定した。

 本作は、映画監督・黒沢清が、主演に蒼井優を迎え、高精細8K撮影に挑んだ話題作だ。戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンスとなっている。

 1940年、太平洋戦争前夜の神戸。福原聡子(蒼井優)は、満州へ赴いていた夫・優作(高橋一生)の帰りを待ちわびていた。ところが帰国後、幼なじみの憲兵・津森泰治(東出昌大)から呼び出され、夫が満州から連れ帰った女の死を告げられる。嫉妬心に駆られた聡子は、夫の行動を疑うなかで、彼が持ち帰った重大な秘密を目にしてしまう。かの地で一体、何があったのか。真実を知ってしまった聡子は驚きの行動に出る。

●登場人物
 福原聡子(蒼井優)……神戸の貿易商・福原優作の妻
 福原優作(高橋一生)……神戸の貿易会社・福原物産の社長
 津森泰治(東出昌大)……神戸憲兵分隊の隊長。聡子とは幼なじみ
 竹下文雄(坂東龍汰)……優作の甥。優作とともに満州へ渡る
●放送予定:6月6日(土)14:00〜15:54(114分)NHK BS8K
●作:濱口竜介、野原 位、黒沢 清
●音楽:長岡亮介
●演出:黒沢 清

<出演者、スタッフのコメント>
蒼井 優さん
 「この時代の女性を演じるのは今回が初めてだったのですが、思い描いたところに自分が行けているのか、どこか感覚が凝り固まっているのではないか、と常に自分を疑いながらの撮影でした。また、黒沢監督は、立ち位置と動きを決めてくださって、そこからどうするかは、演じる側の俳優に委ねられるため、終始『正解は何だろう?』と思いながら演じていました。正解を当てに行くというよりは、不正解を知っていくことで役を形作っていくことができたように思います」

高橋一生さん
 「黒沢監督作品に初めての参加でしたが、監督の世界観はひじょうに明確でしたので、動きの指示や細かな機微において、提示されたものの中でどれだけの事が出来るか、楽しみながら取り組むことができました。特に、この時代の人間を演じるならではの、現代的な口調ではない台詞群を、どう解釈して出力するかという作業は、個人的にも面白い体験でした。また、撮影終盤には、大掛かりでクラシックなオープンセットを前に、百人以上のエキストラの皆さんが行き交う中で、1カットのひじょうに長いお芝居をやらせていただきましたが、各部署のスタッフの方々が動いていることを感じてここに参加させていただいていることの感謝と興奮がありました。そして、蒼井さんはお芝居で会話が出来る方なので、とても安心して刺激的な経験が出来たと思っています」

黒沢 清さん
 「過ぎ去った時代がまとう抽象性と、カメラが切り取る生身の人間の実在感とをどうやって両立させるのか、それは最初至難の技に思えました。しかし結果は素晴らしかった。何より主演俳優二人が渾身の演技でこの時代のリアリティを体現してくれたこと、そして各スタッフたちがそれを支え、超濃密でどこか神秘的な8K映像が見る者をたちまち1940年代の日本へといざなってくれたこと、すべてが最高のかたちで結びつきました。このような幸運な経験は、私の長いキャリアの中でも初めてのことです」