オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。

以下の記事はHiVi2011年4月号に掲載されています

ユニットを一新した第5世代が登場
エネルギー感溢れる鳴りっぷりが魅力だ

<PROFILE>
 比較的手頃な価格で人気の高いタンノイのマーキュリーシリーズ。本機は第5世代となる最新モデルだ。視聴したトールボーイ型の「V4」のほか、ブックシェルフ型の「V1」もラインナップする。いずれも新開発となる歴代最軽量かつ高剛性の振動板を採用したウーファーや、ネオジムマグネットを使ったソフトドームトゥイーターを使用している。

 このほか、独自のDMTテクノロジーによる不要な共振を排除したネットワーク回路や、シルバーコーティングOFC銅線の内部配線を採用。キャビネットもさらに堅牢性を高め、振動による音色への影響を低く抑えたほか、バスレフポートの共振周波数を低く設定し、低音再生能力を高めるなど、数々の改良が加えられている。

<IMPRESSION>
 視聴は、プレーヤーにデノン「DVD -A1UD」、プリメインアンプに「PMA -SX」という組合せで行なった。

 本製品は横幅204㎜と、トールボーイ型のスピーカーとしては標準的なサイズだが、低音がかなり豊かに出ることが印象的。モコモコと不明瞭な低音になることがなく、ベースラインも明瞭で弾むようなリズムもきちんと再現できる。

 アンジェラ・アキのCD「愛の季節」を聴くと、充実した低音に支えられたヴォーカルも厚みのある再現となる。発声の強弱などの微妙なニュアンスもしっかりと再現され、歌にこめた感情までもよく伝わってくる。実在感のある生き生きとした再現だ。

 続いて、小編成のジャズCD「プラチナ・ジャズ?アニメ・スタンダード Vol.2?」を聴く。ウッドベースのブリっとした厚みのある弦の響きや弾むようなピアノのメロディーが気持ちいい。表情の変化だけでなく、ドラムの刻むリズムの変化もしっかりと再現するなど、反応のよさが生き生きとした音の再現に大きく貢献しているようだ。

 バーンスタイン指揮のベートーヴェン『交響曲第9番』のようなオーケストラ曲では、惜しくも各楽器の前後の奥行や、ステージの立体的な再現が不足気味に感じた。写実的にステージを描写することよりも、音楽全体がひとつとなって生れるグルーヴ感やエネルギー感の再現が得意なタイプだろう。

 BDソフトは、マイケル・ジャクソン「THIS IS IT」を聴いたが、ズシッと響くドラムのリズムも不足なく再現し、リハーサル中の抑えた歌声を生々しく描くなど、2ch再生でもその場の雰囲気がよく伝わる。この力強さとリアルで溌剌とした音の出方は、ライヴ音源好きな人にはかなり魅力的な音だと思う。

スピーカーシステム
TANNOY Mercury V4 ¥115,500(ペア 税別)※価格は当時のもの
●型式:2ウェイ3スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:152㎜コーン型ウーファー×2、25㎜ドーム型トゥイーター
●クロスオーバー周波数:2.6kHz
●出力音圧レベル:91dB/2.83V/m
●寸法/質量:W204×H970×D281mm/14.2kg

ラインナップ

Mercury V1 ¥40,950(ペア 税別)※価格は当時のもの
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:130㎜コーン型ウーファー、25㎜ドーム型トゥイーター
●クロスオーバー周波数:3.2kHz
●出力音圧レベル:86dB/2.83V/m
●寸法/質量:W170×H300×D255mm/4.5㎏