現在発売中の『スター・ウォーズ スカイウォーカー・サーガ 4K UHD コンプリートBOX』に収められたサーガをチェックしていこうというこのシリーズ。第二回は「スター・ウォーズの日」(5月4日)公開ということもあり、『EP4』〜『EP6』のオリジナル三部作について語らないわけにはいきません。ということで、該当三部作のUHDブルーレイをHiVi視聴室でチェックしてもらいました。もちろん、衛生面にも充分配慮し、ソーシャルディスタンスを守った上での取材です。(編集部)
私的ホームシアター史とも重なる、特別な作品。
しかし『スター・ウォーズ』を追いかける旅は、まだまだ続く…… 酒井俊之
自宅に居ながらにして好きな映画を繰り返して観ることが出来るようになる。そんなことなどまったく想像もつかなかった1978年。大阪・梅田にあった映画館「OS劇場」でシネラマサイズの巨大な湾曲スクリーンで70mm版を観たことが『スター・ウォーズ』との長い旅の出発点だ。
映画館から始まり8mmフィルム、ビデオ、LD、DVD、ブルーレイ。いかにOS劇場での原体験に迫ることが出来るか? そのことがそのまま極私的ホームシアター史とも重なっていると言っても過言ではない。「HiVi」誌面での視聴企画でもたびたび弩級のシステムでディスクを観る機会に恵まれてきたのも幸運だった。思い出は尽きない。
いよいよ来るべきところまで来た。おそらくこれが最後のパッケージ化にして家庭用では最高峰のフォーマットで『スター・ウォーズ』を楽しめる時がやって来たのだ。今回の4K UHDブルーレイ盤に使われている新たな4Kマスターは先にUSディズニープラスでの配信版で確認済みだ。4K化されたことよりもむしろこれまでのグレーディングが全面的に見直されていることに驚いた。ディスク化された暁にはさらに素晴らしいものになる。手応えを充分に感じながら……いざ視聴のスタート。
タイトルロールの黄文字の色、宇宙空間に吸い込まれていく浮遊感と立体感が素晴らしい。スターデストロイヤーのディテイルの再現力、精細感はやはり従来のHDマスターの印象を上回る。一気にS/Nがよくなり、絵のコントラスト感や透明感が上がった。思えばブルーレイ化された時にも大胆にグレーディングが変わっていた。色鮮やかでいわゆるビデオっぽいテイスト。それはそれで新鮮な驚きを与えてくれたが、4K/HDRマスターは劇場で観た時のままのプリントのトーンを彷彿とさせる。
と、言いたいところなのだが……ここまで色味を抑えた“渋い”印象だったかどうかは少々判然としない。フィルムらしさを感じさせつつも意外なほどグレインの存在を意識させない。どちらかというと映画を観た後にさんざん眺めていた劇場パンフレットや「THE STAR WARS STORY BOOK」に掲載されていたスチール写真の画調を思い出した。それだけ今回の新マスターはひとコマ単位で質が向上しているのだろう。
特別編でこれ見よがしに挿入された新しいシークエンスもオリジナル版に馴染んでいる。まるで1978年当時からそこに存在していたかのようだ。新たなグレーディングで特に印象に残ったのは『エピソード4』のルークやレイア、『エピソード6』のパルパティーン皇帝など登場人物のフェイストーンだ。瞳にキャッチライトがしっかり入っているのも容易に確認できる。高解像度化とHDR化の賜物だろう。キャラクターの表情が生き生きとしている。
JVCの8Kプロジェクター「DLA-V9R」による8Kアップコンバート映像は、ウチで観る4Kアップコンバート映像との格の違いをまざまざと見せつけた。7.1.4のアトモスサラウンドでは、とりわけジョン・ウィリアムズのスコアが力強くも心地よい。映像と同様にきわめて上質だ。
この絵と音にどこまで迫れるか? 久しぶりにやる気が湧いてきた。今年末から国内でもスタートする予定のディズニープラスで配信される(であろう)ドルビービジョン版も気になる。『〜スカイウォーカーの夜明け』で“スカイウォーカー・サーガ”は終わりを告げた。しかし『スター・ウォーズ』を追いかける旅は……まだまだこれからも続きそうである。
“STAR WARS Saga Continues…”
これがソフト購入の最終形になるんだろうなあ。
40年を超える『スター・ウォーズ』体験が今遂に…… 久保田明
向かって左からC−3PO、R2−D2。そしてレイアの肩を抱いたルーク・スカイウォーカーが、医療船リデンプションの窓から広大な宇宙を眺めている。目の前を横切って飛びたつミレニアム・ファルコン号。その船にはカーボン冷凍された盟友ハン・ソロを探す、ランド・カルリジアンとチューバッカが乗っているのだ。
宇宙はどこまでも深い。物語はどこに進んでゆくのだろう。ダース・ベイダーも同じ星々を見ているのだ。
シリーズで唯一エンディングで宇宙空間が扱われる『エピソード5/帝国の逆襲』の名場面に酔いながら、あるいは『エピソード4/新たなる希望』のカンティーナの酒場のエイリアンたちに再会しながら、『スター・ウォーズ』シリーズとの出会いを考えていた。
ビスタサイズの予告篇が終わると、ゴゴゴゴゴ(という音はしなかったけれど)湾曲した大スクリーンが上下、左右いっぱいに広がり、D150(ディメンション150)方式の上映が始まった東京・新宿プラザ劇場。レーザーディスクの封を切り、ジャケットを開けたときの匂いも蘇ってくる。もう40年以上が経ってしまったのか。光陰矢の如しだな。
これまで数え切れぬほど観た『スター・ウォーズ』シリーズだけれど、とりわけクラシック・トリロジーは思い出深く、ついに登場した4K UHDブルーレイでまたこころが躍ってしまった!
低予算寄りで仕上げられた『エピソード4/新たなる希望』はタトゥイーンの砂漠の場面などノイズが気になるところもあるけれど、それも日本公開された1978年初夏の気配を運んでくれる。黒が締まって、オープニング・ロールの星の数も増えたかのよう。世界が広々と見渡せるのだ。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』以降のシークエル・トリロジーの高精細と深い発色には敵わないけれど、対象の実在感はぐっと増しており、とりわけ予算が増えた『帝国の逆襲』と『ジェダイの帰還』は、アナログSF時代の白眉がさらに磨かれたように感じられる。ミニチュアの美しさ。ストームトルーパーの装甲も立体的でピカピカ。それでもやっぱり雑魚キャラなので、より愛着を覚えてしまいそうだ。
ベイダーの重呼吸音やスペースシップの飛行音。ジョン・ウィリアムズの音楽も豊かにサラウンドし、セリフもきちんと口元から出ている。『帝国の逆襲』で小惑星帯のなかに突っ込んでゆくファルコン号の軋みも迫力満点、かつクロストークがなくクリアーだ。
これがソフト購入の最終形になるんだろうなあ。『スター・ウォーズ』よ、永遠なれ。人生の大きな円環が閉じたような感慨を覚える。
『スター・ウォーズ』を好きで居続ければ、
夢のような体験ができると、15歳の自分に教えてあげたい 泉哲也
1956年生まれ、新宿プラザで『EP4』を体験したという久保田さんと、1965年生まれ、OS劇場で同じく『EP4』と出会った酒井さんという、まさに1978年世代と一緒にスカイウォーカー・サーガの原点を体験した。
かくいう僕は1963年生まれ、『EP4』との出会いは確か鹿児島松竹高島だったと思うけど、記憶が定かではない。カーブドでもサラウンドでもない映画館だった気がするけど、でもスクリーンから目が離せなかったことは覚えている。
この年は6月に『EP4』、8月には『さらば宇宙空間ヤマト』が公開されるというSF好き中学生にはたまらない状況で、気分的には一年を通してお祭りだった。その強烈な印象が、後のぼくの人生に影響を与えていないとは言い切れない、というか影響ありありです。
そんな思い出の作品をレジェンドファンと一緒に(約2mずつ距離をおいて)4K/HDR&ドルビーアトモスで見直して、約42年のマニア人生に悔いはないと感じた次第。15歳当時の自分に、そのまま好きなことを追いかけていけば、夢のような体験ができると教えてあげたい、マジで。
画質・音質についての感想はおふたりの原稿を読んでもらえればと思いますが、当時の気分を思い出させつつ、最新のクリアーな画像が実現できるなんて、想像すらしなかった。
もちろん世の中には、ぼくよりも遙かにマニア度の高い『スター・ウォーズ』ファンはいるはずだけど、そんな人たちにもぜひこのUHDブルーレイを体験して欲しいと強く感じたのは確か。パッケージは高価で悩ましいのだけど、ファンにはぜひ頑張って欲しいのであります。
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