Netflixで4月2日から配信開始されているアニメーション「Sol Levante」。これは、世界初となる4K HDR制作の作品だ。アニメの未来像とも言える映像と音をさっそく視聴してみた。

 「Sol Levante」は、次世代の4K HDRアニメ制作を見据え、試験的に開始されたプロジェクト。監督・演出は斎藤 瑛、作画技術監督が江面 久となっている。4K解像度で手描きアニメーションを制作するために必要な技術開発や、制作のための環境作りなども含め、ひとつひとつ模索しながら作業が進められていったという。作品自体は5分足らずの短編で、「聖地」を探して旅をする女性と使い魔が、遺跡の守護者や聖地の四大精霊と戦いを繰り広げるというもの。

斎藤瑛監督

 さっそく観てみると、なかなかに凄い映像と音(ドルビーアトモス)で迫ってくる。冒頭には、魔法呪文が鏡のような輪になって表現される映像が出てくるが、その呪文や文様がとても緻密。それを見つめる女性は、描線がとても細い。女性の瞳も細密に描かれているし、睫も1本1本が描きこまれていることに感心する。なにより驚くのは、それらが動いていること。精緻に描かれたイラストがそのまま動いているような印象なのだ。

 モンスターとの戦いはスピーディーに展開し、従来のアニメらしい動きの面白さも出ているが、映像は驚くほど緻密。女性の髪が揺れる描写では、細かな髪の1本1本までがしなやかに動いているのが分かるほど。モンスターの動きも、不気味な色とディテイルまで豊かに再現され、魔法のようなエフェクトが多用され、見応えのあるアクションになっている。

 また、感心するのは背景画のきめ細かさ。鬱蒼とした森は木々が何重にも重なって奥深さを見せるし、その枝のひとつひとつも細く鋭いので、絵画的な美しさとアニメ的な深い森の雰囲気が入り交じった、見たことのない感触の映像になっている。

 そして、女性が使い魔である大きな鳥に乗って空を飛ぶ場面では、視点は一気にワイドとなり、眼下の村や森の景色が一望できる。緻密に描かれた背景がカットの切り替えなしで壮大なパノラマ的な映像に広がる様子は、なかなかの迫力。草原を飛んでいくシーンで風になびく草がざわざわと揺れているのも、今までにない感触だ。

 こうした映像では、デジタル制作環境をフルに活かし、手描きの原画を元に動画をコンピューターでアシストするなど、新しい技術もふんだんに盛り込まれている。四大精霊はCGで描かれたキャラクターとなるが、炎の精霊が動くたびに火の粉が舞っているなど、実写のCG処理とは違った、アニメならではのエフェクトが組み合わされている。手描きのキャラクターも4K解像度なので、CGのキャラクターと組み合わせても違和感がない。じっくりと見ていくと従来のアニメの延長線上にある映像なのだが、それでいてアニメとは思えない異質の映像にも感じてしまう。

▲プロダクションスチール

▲プロダクションスチール

 ドルビーアトモスの音響は三次元的で、シームレスな空間の中で、さまざまな音が実体感をもって動き回る。アニメーションならではの動きの面白さ、ズームやパンニングを多用したデジタル制作ならではの自由なアングルが多用されることもあり、リアルな臨場感とはひと味違う、仮想現実を体験しているような感覚になる。

 5分ほどの映像と音はあっという間に終わってしまうが、ついついリピートして見直してしまいたくなる。近い将来、こういう高精細なアニメ作品が登場することも楽しみだし、手描きアニメがより緻密に描けるということで、アニメの表現力はさらに何倍にも高まるという実感もあった。今後のプロジェクトの展開も楽しみだし、未来のアニメを先取りした映像と音は、アニメ好きならばぜひとも見てほしいと感じた。

▼メイキング映像

4K HDR手描きアニメプロジェクト「Sol Levante」メイキング映像 - Netflix

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