アナログ黄金時代にライヴ収録された
極め付きの超名盤の理想的な再生

 ステレオサウンドから発売された、音質も演奏内容も極め付きの名盤2タイトルをご紹介したい。

 ひとつはフランスのシャンソン歌手バルバラの『ボビノ座のバルバラ/リサイタル'67』(以下『ボビノ座のバルバラ〜』)で、もうひとつはフランク・シナトラの『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』。どちらも音匠仕様(グリーンレーベルコート)のSACDシングルレイヤー+CDの2組で、音にうるさいオーディオファイルにも満足いただける高品位ディスクである。

 『ボビノ座のバルバラ〜』は1967年録音で『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』は1966年録音と、どちらも半世紀以上前の録音だが、今聴いても古さがまったく感じられないまことに優れた録音。加えて、この2タイトルは録音時期が近く、どちらもライヴレコーディングであるという共通点がある。

 1960年代後半はアナログ録音が頂点をきわめた録音の黄金時代である。というのは、60年代はまだ2トラックもしくは4トラック録音が主流で、少ないトラック数と少ないマイクロフォンによって、瑞々しい音がダイレクトに録音されていた時代と言えるからである。60年代終わりから70年代になると8トラック、16トラック、24トラックと録音トラック数が増え、オーバーダビングや編集が容易になったものの、録音の同時性や濃密な空気感、一発録りの緊張感といったものが薄れてゆく傾向が出てくる。その意味でも極上の演奏が極上の録音で堪能できるこの2タイトルは、オーディオファイル必携であり、かつ『ボビノ座のバルバラ〜』も『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』も今回が世界初のSACD化である。

 『ボビノ座のバルバラ〜』はパリにあるミュージックホール「ボビノ座」でライヴレコーディングされたアルバムで、バルバラの歌とピアノに加えて、ジョス・バセリのアコーディオンとミッシェル・ゴードリーのアコースティックベースによる名人級と言える演奏が、きわめて生々しく、まさに見えるように記録されている。

 ボビノ座に漂う濃密な空気感や観客のざわめきが理想的に再生されると、我々はボビノ座の最前列でコンサートを聴いている、という気分に浸ることができる。彼女の発する微かな吐息やかすかな震えを伴なうなめらかなビブラートはまさに官能的としか言いようがない。

 マスターテープは初回LP製作時に使用された正真正銘のカッティングマスターで、保存状態はきわめて良好。マスタリング・エンジニアはパリでスタジオを主宰するPoussin氏で、キャリア豊富でDSDの扱いにかけてもフランス国内屈指の実力者といわれる人物だ。

 Poussin氏によるマスタリングは、スチューダーA80MK2で再生した音声を、一度PCMを経由して低域を中心にごくわずか補正した後、SADiE5を使ってDSD2.8MHzに変換するという方法。わずかな補正はPoussin氏による判断だが、結果はオリジナルアナログ盤と聴き比べてもまったく引けをとらないウェルバランスとともに、きわめて精細かつニュアンス豊かなサウンドとなっていることが分かる。

 SACD+CD2枚組

『ボビノ座のバルバラ・リサイタル ‘67/バルバラ』
(ユニバーサル・ミュージック/ステレオサウンドSSVS-013〜014)¥5,000+税

●全10曲収録
●演奏:バルバラ(ヴォーカル)、ジョス・バセリ(アコーディオン)、ミッシェル・ゴードリー(ベース)
●初出:1967年フィリップス
●録音:1966年12月パリ、ボビノ座
●マスタリング・エンジニア:Poussin(DES Studio Paris)

     ●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/rs_sacd/3221

 『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』はラスヴェガスのサンズ・ホテルで行なわれたライヴを収録したアルバムで、シナトラ初のライヴ作品ということでも当時話題を呼んだアルバムである。

 本作でフランク・シナトラのバックを務めるのはカウント・ベイシー・オーケストラで、編曲と指揮がクインシー・ジョーンズという正真正銘の超豪華版。カウント・ベイシーは通常他人が指揮するショーではほとんどピアノを弾かないが、ここではベイシー自身がピアノを弾いているという点でも貴重な記録だ。さらに録音は1回のショーではなく、計10回にわたって行なわれたショーから選りすぐりの21曲が収められていて、発売後はビルボードに44週にわたりチャートイン、見事ゴールドディスクに認定されたという記念すべきアルバムである。

 内容は、シナトラの歌もベイシー・オーケストラの演奏もゴージャスそのもの、かつ収録曲は「ベスト・オブ・フランク・シナトラ」と言いたいシナトラの代表曲ばかりという文句なしのパッケージだ。

 完璧主義者のシナトラのアルバムはもちろんどれも優れているが、オケを録音した後でじっくりと歌をダビングするという几帳面なスタイル故に、ある意味整いのよい仕上がりとなっている。それもあってか「シナトラの本領はステージでこそ発揮される」と言われていたのも事実。そんな彼のライヴの凄さが見事に証明されているのがこの『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』で、理想的なシチュエーションでシナトラのパフォーマンスが遺憾なく発揮された、正に奇跡的なアルバムとなっている。シナトラのみならず観客のノリもまた最高で、臨場感豊かな録音とは正にこのことである。

 本盤のマスターとなったのはLP(2枚組A〜D面)のカッティング用アナログマスターテープ4本で、米国でデジタル化(192kHz/24ビット)されたものが、日本のソニー・ミュージックスタジオでDSD変換されている。マスタリング・エンジニアはSACDを知り尽くした鈴木浩二氏。経験豊富な鈴木氏のマスタリングは50数年の時空を越えて、サンズ・ホテルのステージ上で繰り広げられた華やかなライヴを文字通り会場の空気ごとそっくりリスニングルームに運んでくれる。

 これだけ大掛かりなショーを、観客はもちろんベイシー楽団のおしゃべりまで細大漏らさず記録した当時の録音技術の凄さもよくわかっていただけるはず。ぜひ長きに渡って愛聴いただきたい。

 SACD+CD2枚組

『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ/フランク・シナトラ』
(ユニバーサル・ミュージック/ステレオサウンドSSVS-011〜012)¥5,000+税

●全21曲収録
●演奏:フランク・シナトラ(ヴォーカル)、クインシー・ジョーンズ(編曲、指揮)、 カウント・ベイシー楽団
●初出:1966年リプリーズ・レコード
●録音:1966年1月26〜29日、2月1日ラスヴェガス、サンズ・ホテル
●エンジニア:Lowell Frank
●マスタリング・エンジニア:鈴木浩二

●ご購入はこちら→https://www.stereosound-store.jp/fs/ssstore/rs_sacd/3220