ラックスマン
CL1000  ¥1,600,000
●入力端子: LINE5系統(RCAアンバランス×4、XLRバランス×1)●出力端子:PRE2系統(RCAアンバランス/XLRバランス切替え)●入力感度/インピーダンス:180mV/50kΩ●使用真空管:E88CC(JJエレクトロニック)×6●寸法/重量:W460×H166×D454mm/24.4kg

 かねてから開発中と囁かれていた、ラックスマンのフラッグシップ真空管プリアンプが遂に完成した。CL1000と命名された堂々たる新製品が本誌試聴室に持ち込まれた。同社90周年を飾るステレオパワーアンプMQ300と純正コンビネーションを組む、待望のプリアンプである。フォノイコライザー回路はなく、ラインレベル入出力に徹している。

組み合わせて試聴したパワーアンプ
ラックスマン
MQ300 ¥1,600,000
●定格出力:8W+8W●使用真空管:5AR4×2、6SN7GTB×4、TA300B(高槻電器工業)×2●寸法/重量:W460×H237×D340mm/29kg

 最大の特徴は、本機のために新開発されたファインメット・コア採用の大型トランスフォーマー式アッテネーターを搭載したこと。抵抗器による信号減衰ではなく、巻線比による低損失な音量調整の手法である。

 この大型トランスフォーマーは、34タップで左右独立。高信頼性のリレー素子を介した電子制御による音量調整は、LECUTAラックスマン・エレクトリック・コントロールド・アルティメット・トランスフォーマー・アッテネーター)と呼ばれる新機軸だ。手応えのあるボリュウムノブはリレー制御のため。リモートコントロールには非対応である。

本機の最大の特徴はLECUTAと名付けられた電子制御トランス式アッテネーターの搭載。34タップのファインメット・コア・トランス(写真手前)と対を成す34個のリレー(写真のトランスの奥)を位置情報検出用ボリュウムノブ(左、フロントパネルに設置)で切り替えるという設計で、ボリュウム自体には音楽信号が流れない方式。

 増幅回路には、ラックスマンとして初採用となるJJエレクトロニック製の高信頼管E88CCを合計6本採用。2段増幅プレート~カソード負帰還回路で、カップリングコンデンサーにはMQ300の開発過程で得られたオリジナルのオイルコンデンサーが使われた。入力信号(バランス入力は専用トランスフォーマーでシングルエンド信号に変換)は、最初にE88CC×2のアッテネーター駆動アンプで6dBのゲインが与えられてLECUTAに送られる。音量調整された信号出力は、同じくE88CC×2の回路で増幅。バイパスも可能な本格派のトーンコントロール回路もE88CC×2の構成になっている。

 ラインレベル出力は、入力側と同等のスーパーパーマロイ製コアを採用した左右独立のトランスフォーマーを経由している。同時出力はできず、バランス出力かシングルエンド出力かをフロントパネルで選ぶことになる。

 ハイレゾ音源も聴きたかったので、アキュフェーズのDC950(DAC)と持参のPCをUSB接続している。パワーアンプはエアータイトATM3で、スピーカーシステムはB&W800D3である。

 手嶌葵「月のぬくもり」は柔らかい肌触りの声質で、イメージ通りの深い音場感も得られた。カート・エリング「エンドレス・ローンズ」も、スッと通る声質に惹かれる。滑らかで音に浸透力があり、ネルソンス指揮のブルックナー「交響曲3番」は荘厳な雰囲気を醸し出す。浮き立つように立体的な音だ。

 MQ300との組合せでは、繊細な音色表現で相性の良さが感じられた。ジャニーヌ・ヤンセンが弾くバルトークの濃密なヴァイオリンは、特に印象に残った試聴曲。音調バランスが整っていることも特筆できる。

 音量を絞っても音が痩せないのが本機の特徴で、LECUTAの意義は大きい。消磁機能のアーティキュレーター回路も効果的だ。

フロントビュー。BASS/TREBLE独立、3段階周波数切替えのLUX式トーンコントロールや出力位相の切替えなど、プリアンプとして充分な機能を装備する。

リアビュー。向かって左にまとめられた入力端子は、RCAアンバランス4系統、XLRバランス1系統。右の出力端子はRCAアンバランス2系統、XLRバランス2系統。これはフロントパネルでRCAアンバランスかXLRバランスかを選択する切替式となる。

美しい木目のカバーを外して内部を見る。中央後部の4基のトランスは、L/R独立のバランス入力用とL/R独立の出力用、いずれも高透磁率のスーパーパーマロイ・コア・トランス。

純正ペアとなる300BシングルパワーアンプMQ300を使用して試聴する三浦氏。

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