昨年9月18日に、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本で一斉にスタートした音楽ストリーミングサービスの「Amazon Music HD」。CDクォリティの「HD」で6,500万曲以上、192kHz/24ビットや96kHz/24ビットの「ULTRA HD」で数百万曲という音源を揃えている点も話題を集めた。

 そんなAmazon Music HDを手軽に試聴するためのアイテムとして登場したのが、今回紹介する「Echo Studio」だ。アマゾンが販売しているスマートスピーカー「Echo」シリーズのトップモデルで、25mmトゥイーター×1を正面中央、51mmミッドレンジ×3を正面左右と天面に、さらに133mmウーファーを下向きに搭載している。

 再生フォーマットとしては、FLAC、MP3、AAC、Dolby Digital、Dolby Digital Plus、Dolby Atmos、360 Reality Audioなどに対応済み。このことからもわかるように、Echo Studioはイマーシブフォーマットも再生できる。つまり、内蔵された3ウェイ5スピーカーを使った豊かな3Dオーディオ体験が可能となるわけだ。

「Echo Studio」 ¥24,980(税込)

●型式:3ウェイ5スピーカー、アクティブ型
●使用ユニット:25mmトゥイーター、51mmミッドレンジスピーカー×3、133 mmウーファー
●内蔵アンプ:最大出力330W
●接続端子:3.5mmミニジャック
●Wi-Fi機能:デュアルバンド、802.11a/b/g/n/ac (2.4/5GHz)、Bluetooth接続
●対応オーディオフォーマット:FLAC、MP3、AAC、Opus、Vorbis、Dolby Digital、Dolby Digital Plus、Dolby Atmos、Sony 360 Reality Audio/MPEG-H
●対応音楽ストリーミングサービス:Amazon Music(スタンダード、HD)、Apple Music、Spotify、TuneIn、dヒッツ、うたパス
●特長:自動音響調整(Automatic room adaptation)、Alexaアプリ搭載、Fire TV Cube(第2世代)・Fire TV Stick 4K・Fire TV(第3世代)のオーディオ出力として無線接続
●寸法/質量:W175×H206×D175mm /3.5kg

 では実際のサウンドはどうか? さっそくAmazon Music HDを契約してハイレゾや3Dサウンドを聴いてみた。

 Echo Studio本体には再生している曲の内容等を表示する機能はついていないので、アレクサによる音声操作だけでは音源がハイレゾかどうかは確認できない。そこで今回はAmazon Musicアプリを使って楽曲を選ぶことにした。

 なおアプリの表示を見ている限りでは、3D>ULTRA HD>HDの順番で楽曲を優先しているようだ。つまり、3DオーディオとULTRA HDの両方が配信されている楽曲をEcho Studioで聴こうとすると、自動的に3Dが選ばれるので、2chのULTRA HDは再生されないというわけだ。

 さて、Amazon Music HDと契約したIDを入れると、アプリ画面には「ULTRA HD JAZZ」「ULTRA HD POP」といった具合にプレイリストが表示される。ここから楽曲をから選んで再生スタート。

 ULTRA HD JAZZからノラ・ジョーンズの「ザ・ニアネス・オブ・ユー」、ULTRA HDで聴けるアルバムのオフコースから「愛を止めないで」「ワインの匂い」、そして松任谷由実「恋人がサンタクロース」、マイケル・ジャクソン「スリラー」などを選んでみた。

 どの曲でも、定位感のあるステレオ再生と言うよりは、音がふわりと広がる印象。Echo Studioは直径175×高さ200mmの円柱形のデザインだが、これを中心にドーム型の音場が出現するようなイメージだ。先述のように51mmミッドレンジユニットが正面と左右に向けて搭載されているが、それらがうまくつながって音場を演出しているのだろう。

 ソースはULTRA HDなので96kHz/24ビットもしくは192kHz/24ビットのはずだが、正直そこまでの高域の伸びや緻密さは感じられなかった。もちろんEcho Dotで同じタイトルを再生した時よりも声の質感や低音感はしっかり出ていて、その差は確実にある。ただ、いわゆるハイレゾらしさを十二分に感じられるかというと、若干曖昧ともいえるだろう。

比較試聴で使った「Echo Link」の光デジタル出力をヤマハCX-A5100につないで信号の内容を確認してみた

 そこで、Echo Link+アクティブスピーカーの組み合わせでAmazon Music HDを再生してみた。Echo Linkは昨年4月に発売されたオーディオ再生用アンプだが、Amazon Music HDのハイレゾ再生に対応済みとアナウンスされている。つまり、アプリの出力先をEcho StudioからEcho Linkに変更することで、ハイレゾ再生ができるようになるのだ。

 こちらはL/Rスピーカーの間隔を50cmほどにセットしているが、それでもヴォーカルの定位感が出て、実体感のある再生となる。ただし音場自体はEcho Studioよりも狭めで、ゆったり音楽を鳴らしたい人はEcho Studioの方が心地よく感じられるかもしれない。

 ちなみにふと思いついて、Echo Linkのデジタル出力をAVセンターのCX-A5100につないでみた。すると96kHzや192kHzではなく、48kHzのデジタル信号が入力されていると表示されている。これはどういうことなのか?

 原因としては、(1)Echo Linkが対応しているハイレゾは48kHzまでである、(2)Echo Linkは96kHzや192kHz信号を再生しているが、デジタル出力からは48kHzまでに制限している、というあたりが考えられるが、詳細は不明。

 もちろん48kHzだから駄目ということはまったくなく、CX-A5100+リンKLIMAX TWIN+AKURATE2424SEで聴くAmazon Music HDはヴォーカルの定位もクリアーだし、声の伸びも綺麗。ギターの弦、ドラムの押し出しなども充分満足できる音が楽しめる。

 ただ個人的には、この状態で192kHzが再生されれば、自宅のハイレゾストリーミング環境はこれで完成だ! と小躍りしていただけにちょっと残念。もしファームウェアアップデートで対応できるのであれば、ぜひお願いします、アマゾンさん。

 なおDolby Atmosや360 Reality Audioといった3Dオーディオは、今のところEcho Studioでしか再生できない。そこで次はアプリのプレイリストから、Best of 3Dでエルトン・ジョン「ロケット・マン」、同じく3D CLASSICALでアンネ=ゾフィー・ムター「レイのテーマ」、3D ROCKのザ・ビートルズ「カム・トゥゲザー(2019 Mix)」を順次再生してみた。

 Echo Studioはもともと広めの音場を再現する音作りだが、3Dオーディオではそこに高さ方向の情報が加わったように思える。先述した通りドーム型の音場だが、2chソースの時よりも高さがあり、音に包み込まれる感じが強くなる。BGM的に楽しむ体感型音楽再生術としてこれはアリかもしれない。

 なお基本的な取材は自宅で行なったが、次号のHiViでもEcho Studioの記事を紹介したいとのことだったので、HiVi編集部に取材機を渡すついでに視聴室で音を確認してみた。

 自宅では壁寄りのラック上段にEcho Studioを載せていたため、両脇にはテレビやスタンドがあった。逆にHiVi視聴室は両方ともオープンな設置(少し離れた位置に小型スピーカーが置いてあった)。

 この状態でULTRA HDや3Dオーディオの楽曲を再生すると、それぞれの印象こそ自宅と同じだったが、ULTRA HDでのヴォーカルの力強さや音の広がりは視聴室の方が上。3Dオーディオも、もっと高さの情報がでてきて音場が大きくなっていた。

 Echo Studioは自動調整機能も内蔵しており、その部屋の音響特性を解析して最適なサウンドを再生してくれるというが、それでも置き場所には注意して、できるだけオープンな環境で鳴らした方がいいかもしれない。(取材・文:泉 哲也)