映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第37回をお送りします。今回取り上げるのは、とにかくめちゃくちゃに盛り上がるボリウッド大作『プレーム兄貴、王になる』。原点回帰!? の歌って踊っての一大エンターテイメント。スッキリとしたい方におススメの1作。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『プレーム兄貴、王になる』
2月21日(金)全国順次ロードショー

 踊る阿呆に見る阿呆(褒め言葉ですよ、最上級の)。1998年本邦公開の『ムトゥ 踊るマハラジャ』以来、日本でもポピュラーな存在になったインド映画。

 その後、難関大学で3バカ・トリオがくり広げる珍騒動を描いた青春映画『きっと、うまくいく』や、伝説の戦士の運命を追うスペクタクル大作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』。続編も公開されたおじさんSFヒーロー・アクションの『ロボット』、階級制度や宗教のしがらみから抜け出そうとする青年を主人公にしたラッパー映画『ガリーボーイ』など多彩な作品が公開され、インド映画の裾野は大きく広がった。

 愛する妻を救いたいと、安価で清潔な生理用ナプキンの開発に奔走する男の実話『パッドマン 5億人の女性を救った男』(笑いと感動がダブルで来ます!)や、弁当が偶然つないだ主婦と中年男の交感を描く『めぐり逢わせのお弁当』のような、しんみり繊細なドラマもあったし。

 そしてここでもう一度原点回帰! きれいで華やかで、とにかく楽しい。歌とダンスが山盛りで、観る者全員を桃源郷に誘い込む。この『プレーム兄貴、王になる』、インド映画初体験のひとこそ沼にはまる1本になるんじゃないかなぁ。会社でイヤなことがあった日に出かけましょう(笑)。

 主演はボリウッド(インドのハリウッド)映画界で一、二を争う人気スターのサルマン・カーン。お相手は『パッドマン』にも出演していた美人女優のソーナム・カプール。貧乏役者の青年が自分と瓜二つだった王子の跡目争いに巻き込まれてさあ大変という一席だ。

 町でお菓子ひとつ買う場面が大群舞に発展したり、人形劇が生身の人間のダンスにすり替わったり。『ムトゥ 踊るマハラジャ』のころと比べると振り付けやリズムはモダンになっており、同時に少し田舎くさくてハッピーな愛嬌も残されている。美女やイケメンだけじゃない。ヒゲのおじさんも踊りだしてしまう。それが上手い! これぞインド映画! 兼ね合いが絶妙なのだ。

 シネスコ画面に100人くらいが入って歌い踊っているんじゃないかなぁ。それぞれが鮮やかな衣装をまとっているので、色数もとんでもない。音響はドルビーアトモス。ボリウッドは米国のVFXスタジオで学んだスタッフが多く帰ってきているので、デジタルの特撮映像もクォリティが高い。ほんと、ゴージャスな大作なのだ。

 鑑賞後、本場のカレーが食べたくなるので食べログあたりで目星をつけてから出かけましょう。こってりとした北インド・カレーでも、薬膳風味の南インドのカレーでもお好きなほうをどうぞ!

『プレーム兄貴、王になる』

2月21日(金)より、新宿ピカデリーほかにてロードショー
監督:スーラジ・バルジャーティヤ
原題:Prem Ratan Dhan Payo
配給:SPACEBOX
2015年/インド/2時間44分/シネマスコープ
(C)Rajshri Productions (C)Fox Star Studios

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