サン・オーディオ
SV-2A3
30th Anniversary version
¥300,000
●定格出力:3.5W+3.5W(8Ω、16Ω)●入力端子:LINE1系統(RCAアンバランス、可変)●入力感度/インピーダンス:150mV/100kΩ●スピーカー出力端子:8Ω、16Ω●使用真空管:5U4G×1、6SN7GT(TUNG-SOL)×2、2A3(SOVTEK)×2●寸法/重量:W360×H215×D270mm/17.5kg●備考:30台のみの受注販売、キット仕様(¥208,500)あり

SV-2A3の30周年記念モデル

 サン・オーディオは1980年の創業。管球アンプの発売は9年後の1989年からで、ここで紹介するのは同社製品の原点であるSVシリーズの2A3シングル・ステレオ機、SV-2A3の30周年記念モデル。30台の限定受注販売という特別な製品である。

 通常品との違いは少なくない。完成品が30万円でキット価格が20万8千5百円に設定されたSV-2A3のアニバーサリー仕様は、音質重視の観点からロシア製5U4G整流管のヴィンテージ球(希少な黒色プレート)を採用。スピーカー出力は8Ωと16Ωの両方に対応すべく端子が増設され、高級感が漂うアルミニウム製フロントパネルとアルプス製の2連VR(入力アッテネーターと左右バランスの2基)も目を引く。コンデンサーも厳選した高音質タイプが使われており、トータルで3万5千円相当のアップグレードパーツが投入されたという、お買い得な内容である。

 出力トランスと電源トランス、そしてチョークコイルは、音質と性能ともに定評あるタムラ製作所のもの。増幅回路は双3極管の6SN7GTの2段増幅から、0.22μFのAudioCap製フィルムコンデンサーを経由して2A3(交流点火)に導かれるシンプルな構成。試聴機はSOVTEC製の2A3を搭載していた。オーバーオールな無帰還回路でプリント基板を使わない配線も特徴だ。

↑30thアニバーサリー特別仕様では、専用のアルミ製フロントパネルを採用し、真鍮製のネームプレートを装着する。さらに、ボリュウムとバランスのノブも金属製となっている。

↑スピーカー出力は8Ωと16Ωの2端子を備える。通常モデルではいずれかを組み立て時に選択(完成品は通常8Ωで出荷)する。シャーシ塗装はワインレッドとダークグレーの2色からの選択できる。

質の高さを実感させる魅惑的な管球式アンプ

 さっそく試聴してみる。送り出し機はSACD/CD再生システムであるアキュフェーズのDP-950+DC-950。B&W800D3をモニタースピーカーに、エアータイトのATC-5プリアンプを組み合わせている。

 クラシックはステレオサウンドのCD「ドイツ・グラモフォン・ベスト・レコーディング」から。ギル・シャハムが弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、胴鳴りの響きが豊かで旋律の美しさが好ましい。ヴィブラートのこまやかさなど複雑な表現も得意としており、背景のオーケストラも臨場感に不足はない。ロッシーニのオペラは男女とも声色が艶やかで音離れが良く、ステージの情景が立体的かつ丁寧に描かれている。2A3のシングル増幅とは思えない迫力を感じさせたのはブーレーズ指揮の「火の鳥」だった。出力値を考え音量を手控えながら聴いているのだが、大型の出力トランス(電源トランスも)が余裕のある充実した音を醸し出しているようだ。

 その印象はイーグルスのライヴCD「ヘル・フリーゼス・オーバー」も同様。冒頭のギターの音色がカラフルで観客の拍手や口笛の音数も多く、直熱3極管らしい音色の煌びやかさに力感が宿っているという雰囲気なのである。今井美樹のSACD「ダイアローグ」を聴きながら5U4G整流管の比較をしたところ、通常品よりも本機のヴィンテージ球のほうが音場空間が深く、ヴォーカルの存在感が際立ってくることに驚いた。整流管が管球アンプの音に深く関わることを認識した次第。

 SV-2A3の30周年記念作は、質の高さを実感させる魅惑的な管球式アンプである。 

内部を見る。プリント基板を使わないリード線による手配線を採用。

今回の限定モデルで使われる整流管は、1960年代に旧ソビエトで製造された黒色プレートの5U4G(ロシア品番:5U3C)

試聴する三浦氏。

この記事が読める月刊「HiVi」2019年3月号のご購入はコチラ!