三重県立鳥羽高等学校の生徒が制作した「海女VR映像」の完成披露会見が1月17日、日本橋にある三重県のアンテナショップ・三重テラスにて行なわれた(鳥羽市立 海の博物館でも同時開催。現地と日本橋は映像回線で接続されていた)。

実際に制作を担当したメンバー(4人)のうち、2名が東京に来てプレゼンを披露した。残りの2名(内1名は残念ながら病欠)は海の博物館で

海女VR映像のデモ

 これは、三重県鳥羽市と三重県教育委員会、ICT企業の日本エイサー/アルファコード、そして鳥羽高校の生徒という、産官学の三者が参加したプロジェクト。鳥羽高校ではもともと、地域の課題を現地に赴いて発見、考察、解決へと導く校外学習の「鳥羽学」を実施しており、それが教育委員会の推進する「地域課題解決型キャリア教育モデル」と合致したことから、実践パイロット校に選ばれ、およそ一年の制作期間を経て、本日、公開となった。

鳥羽市長 中村欣一郎氏

三重県教育委員会教育長 廣田恵子氏

今回の取り組みについて説明する鳥羽市企画財政課の重見氏

キャリア教育モデル事業について説明する三重県教育委員会 上村和弘氏

 なぜ“海女”をテーマに選んだのかについては、全国にはおよそ1500~2000人が従事しているという海女の中で、その約4分の1にあたる約400人が鳥羽で働いていること(鳥羽市は、日本一海女の多い町だそう)、その海女のなり手が減り、後継者不足にあること、素朴なところでは、なぜアワビは高いのか? といった疑問が沸き起こったことで、これをテーマに選んだのだという。

今回の鳥羽学では4つのテーマがあり、産官学プロジェクトに選ばれたのはVR映像制作班の活動だった

 一方、教育委員会においても、変化が大きく将来を見通すことが難しい現代を「VUCAの時代」と捉えており(変動/不確実/複雑/曖昧の英語の頭文字を取った表現)、答えがない、(目指すべき)モデルがない、という現在を生き抜くためには、挑戦と失敗と経験が必要と判断。学生(高校生)が、実際に地域の課題(職や産業、住民などなど)に取り組み、自ら問題を発見し、解決策を考え、それを発信するという先進的な教育モデルの構築に取り組んでおり、今回の海女VR映像は、三重県における産官学連携の初プロジェクトになるという。

 ちなみに三重県では、三重各地の高校生が集まって、テーマに沿ってディスカッションを行なう「高校生地域創造サミット」を平成29年(2017)から毎年開催しているそうで、学生たちの中に地域の課題に向きあうという精神は、充分に醸成されているようだ。

 さて、海女VR映像に話を戻すと、今回VR映像の制作に携わったのは、同校の文理進学系列科の2年生の4人。海女さんの魅力を発信するためにチームAMA(A=新たな M=(海女さんの)魅力を A=海女さんの働きぶりを映像で発信する)を結成して、制作に挑んだそう。

会見場に用意された、VR映像再生用のノートパソコンとVRヘッドセット

360度映像の撮影に使ったカメラ

 その際に留意したのは、海女の歴史、(海女の仕事の)やりがい、(仕事の)たいへんさ、実は海女は丘の上(陸上)にも関連がある=海と陸の架け橋である、という4つの視点を取り込み、発信すること。

 撮影・取材を通して、担当した生徒らは、「海女さんが命をかけて獲ってきてくれる“アワビ”への見方が変わった」そう。そして、今回制作した海女VR映像を通して、海女の文化を、海底の美しい映像を、感じてほしいと訴えていた。

鳥羽市立 海の博物館でも、オンラインで相互の会場の模様が中継されていた

 なお、日本エイサーは、映像編集用のパソコンとVRヘッドセットを、アルファコードはVR撮影方法(のレクチャー)とVRプラットフォームを、それぞれ提供している。

日本エイサー プロダクトマーケティングマネージメント部の谷氏

アルファコード CEO 水野氏

 今回制作された映像は今後、鳥羽市立 海の博物館で一般公開される予定。

海女の取材をコーディネートしたのは、自身も海女として働く鳥羽市地域おこし協力隊の上田茉莉子氏。大学卒業後は数年間広告代理店に勤務したそうだが、海好きが高じて鳥羽に移り住み海女になったという。スキューバダイビングの免許や自分の船も、海女になる前から所有していたという。ちなみに、アワビ漁は4~9月に行なうそう