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TECHNICS
SL-1500C
¥100,000+税
<トーンアーム部>●型式:スタティックバランス型●適合カートリッジ重量:5.6~12.0g、14.3~20.7g(補助ウェイト未使用時、ヘッドシェル含む)<ターンテーブル部>●駆動方式:ダイレクトドライブ●回転数:33 1/3、45、78rpm●寸法/質量:W453×H169×D372mm/9.9kg●付属品:ターンテーブルシート、ダストカバー 他

〝コアレス〟DDモーター搭載のADプレーヤー

 満場一致、フルマーク……。半年ほど前の結果とはいえ、2019年HiVi7月号「夏のベストバイ」での、テクニクス ダイレクトドライブターンテーブルシステム、SL-1500Cの実績である。もちろん僕の一票も含まれている。(注:2019年HiVi12月号「冬のベストバイ」でも1位を獲得)

 さらに「選考を終えて」では、“ベスト・オブ・ベストバイ”として選者3名がSL-1500Cを挙げた。つまり写真付きコメントが最多の3ページという、大きな祝福に包まれてのデビューとなった。

 コメントはたとえば、土方久明さんは「ブランド最安価のモデルだがクラスを遥かに超えた素晴らしい音質を獲得している」と絶賛し、和田博巳さんも「フォノイコライザー内蔵、MMカートリッジ付属で、買ってつなげばすぐに音が出る。しかも基本性能は高級機並みで、トーンアームもSL-1200G/GRと同等だ。これで10万円はきわめて安いし……」と絶賛しつつ後々のグレードアップ、いわゆる発展性にも触れて祝福する。

 僕も同感で、「価格」対比の「完成度」が驚愕ものである。と言いつつ、実は僕は、高度な工業製品である本機を「完成度」などという上から目線的切り口で語れるほどの技術知識はない。しかし実際に使ってみて、皮膚感覚的に視覚的に聴感的に、そう思ったのである。

 新製品内覧会の日、かなりのコストダウンを断行したに違いないと本機を凝視したが、素人目にはそういうことがなかなかわからない。しかしプレゼンを聞いて、確かに知恵と工夫と英断によるそれが随所にあった。たとえばスピンドル(軸)部はSL-1200GRをベースにスリム化を図り、あるいはパーツ外観一部の研磨工程を割愛したりして……。でもそれが性能や音にどれほど影響するのかとも思った。インシュレーターはシンプルなスプリング+ラバーの構造に変えたが、得意の機械共振や振動の解析技術を駆使しての最適化が図られている。

 いっぽう目に見えてのコストダウンはピッチコントロールのスライダーの廃止。その関連として、それまでのアイコンといってもいいストロボ機能が消えた。DJユーザーには不満だろうが聴くだけ派にはピッチコンは不要ゆえに、もちろん“いいね”であろう。むしろターンテーブル外周縁のイボイボ模様も消えて、スッキリした高級感を想う。

 さらに生産は、SL-1200GRは日本だが、本機はマレーシアである……とコストダウンに懸命だ。しかし心臓部と言うべきモーターとトーンアームの性能維持には強いこだわりが感じ取れる。

 モーターは新生テクニクスを謳うキーワードと言ってもいい“コアレス”のDDモーターである。資料を要約するとモーター駆動用コイルの鉄心=コア(効率アップ用)を廃した方式で、コギングという回転のムラに着目しいっそうなめらかな回転性能を得ている。もちろん精密制御技術は新次元だ。と簡単にまとめたが、高トルクを得ながらの達成はまさに素人には想像もできない難度だろう。

 トーンアームはヘッドシェル交換も容易な、いわゆるユニバーサルなS字・スタティックバランス型でSL-1200GR同等品を搭載。これで10万円と聞いても驚くが、さらにフォノイコライザーを内蔵しMMカートリッジも装備する。その音は、10万円というイメージを突き抜けた力感と繊細さで、何よりもS/N感が見事だ。

←新生テクニクスADプレーヤーの顔が「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」。固定子の電磁石(上から3/4層目)にコア(鉄芯)があると、永久磁石との位置関係によって回転ムラ=コギングが発生してしまう。これを根本的に抑制すべく、コアレスとしたことがテクニクス製品の特徴となっている

←コストダウンを果たしたとはいえ、主要部分はSL-1200GR(¥148,000+税)を踏襲したもの。プラッターはアルミダイカストにラバーを貼った2層構造。剛性を上げるためのリブを入れるなどの工夫が施されている

価格から想像するイメージを突き抜けた驚きのポテンシャル

 試聴は我が家。オーディオ仲間4人が集まっての定例会。テーマはLP。そのハードウェア面での主役をSL-1500Cが務める。ソフトは友人が持参したLPだが、ソニー・ロリンズの『コンテンポラリー・リーダーズ』やマイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』など垂涎のオリジナル盤だ。音楽としては全員が所有し何度も聴いているが、盤質の威力もあって、まあ勢いのいいこと、ヌケのいいこと。そして異口同音に「このプレーヤーは本当に10万円か?」と盛り上がる。そのほかに……と待てば名高いダイレクトカッティング盤『フラメンコ・フィーバー』が登場。衣服も震えるステップ描写など、いやはや、ため息が出るような、生以上に生々しい音である。ドナルド・フェイゲン『ナイトフライ』等々の米国盤も次々に、感激メーターは上がりっぱなしであった。

 思えば、モーターとトーンアームの優れたS/Nと高感度に加え、カートリッジと100倍近く増幅するフォノイコライザーの超近接配置も加えての、総合的S/N改善が凄い。同社は入門用という位置付けかもしれないが、従来の慣習にとらわれないコンセプトはLP再生の新たな地平に誘うようで感動的だ。SL-1500Cは問題作かも……。


←フォノイコライザーを内蔵し、ラインアウトとフォノアウト双方の端子を装備。まずはラインアウトとアンプを接続するシステムを構築し、ゆくゆくはフォノイコライザーを購入してフォノアウトを利用する……といったことが考えられる

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