Amazon Japan(アマゾン・ジャパン)は12月4日午後に、同社Echoシリーズの新型スピーカー「Echo Studio」の製品説明会を開催した。

 Echo StudioはEchoシリーズのトップモデルで、先日来話題になっているハイレゾストリーミングサービス「Amazon Music HD」の再生に対応している点も注目される。今回はAmazon Music HDの音源を使った体験会も同時に行なわれている。

Echo Studioシリーズは、Amazon Music HDのハイレゾだけでなく、ドルビーアトモスや360 Reality Audioの再生も可能

 冒頭、アマゾンジャパン合同会社Alexaエクスペリエンス&デバイス事業部リージョナルディレクター Alexa アジア パシフィックの大木 聡氏が登壇し、日本でのEchoシリーズの使われ方について紹介した。

 日本でEchoシリーズが発売されて2年が経つが、ユーザーの87%が音楽再生機能を使っており、Alexaに話しかけて主体的に音楽を聴く時間も1週間で平均5時間はあるそうだ。

 さらにAmazon MusicのストリーミングサービスとAlexaによる音楽との出会いも好評のようで、年代やジャンルなどでの楽曲検索だけでなく、再生中の曲に似た楽曲を探してくる「ディスカバリー」機能もよく使われているという。

 大木氏は、「Echo StudioとAmazon Music HDの組み合わせでは、初めて没入感のあるハイレゾサウンドを体験いただけます。この組み合わせは、きっと皆さんの期待に応えられるはずです」と語っていた。

アマゾンジャパン合同会社Alexaエクスペリエンス&デバイス事業部リージョナルディレクター Alexa アジア パシフィックの大木 聡氏

 そのAmazon Music HDについては、Amazon.com,Inc. Amazon Music担当 バイス・プレジデントのスティーヴ・ブーム氏が紹介してくれた。

 アマゾンジャパンでは2000年からCDの販売をスタートし、その後2010年からダウンロード、2015年からはストリーミングのPRIME MUSICと、サービスを順次拡大してきた。

 ただし、日本での音楽試聴はCDなどの物理メディアの方が70%近くと根強く、ストリーミングによる再生は15%前後と伸び悩んでいるそうだ。その理由として、これまでのストリーミングサービスは音質がよくなかったのが原因だと考えているそうだ。実際、世界を対象にした調査でも高音質は重要なフィーチャーで、特に日本ではその要望が高いという。

 それを受けて、Amazon Music HDではFLACによるロスレス配信を採用し、CDクォリティから最大192kHz/24ビットのハイレゾ音源(同社ではULTRA HDと呼称)まで様々な品質でのストリーミングを可能にしている。ハイレゾで聴くと音楽がまったく違って聴こえるので、できるだけULTRA HDで楽曲を提供したいという考えのようだ。

 さらにスティーヴ氏は、「最近では携帯やPC用のストレージの価格も下がり、通信機能も速くなったことで、Amazon Music HDの土壌はできています」と、同社がハイレゾストリーミングサービスに参入した背景を語っていた。

Amazon.com,Inc. Amazon Music担当 バイス・プレジデントのスティーヴ・ブーム氏

 続いてAmazon.com,Inc. Audio Technologyディレクターのフィル・ヒルメス氏がEcho Studioの仕様を解説してくれた。

 Echoシリーズは世代を重ねるごとに利便性を改善してきたが、今回のEcho Studioは単にハイレゾに対応したというだけではない。新たにドルビーアトモスやソニーが提唱する360 Reality Audioの再生機能も搭載、echoシリーズとして始めて音楽に没入できる製品を目指した。

 それらの音源もAmazon Music HDで提供する(ドルビーアトモスについては既に配信をスタートしている)とのことで、音楽によるイマーシブ体験も簡単に楽しめるはずだ。

 またEcho Studioはルームチューニング機能も備えており、部屋に置いて電源を入れておくだけで自動的に再生音をモニターし、最適な補正を加えてくれる。つまり、音楽を聴くほど音がよくなっていくというわけだ。ユーザーが何もしなくても音質改善をしてくれる、こういった機能の搭載は素晴らしいことだ。

 会場ではハイレゾ音源やドルビーアトモスで収録された音楽作品の再生、さらにはFire TV Stickと組み合わせたホームシアターのデモも行なわれたが、特にイマーシブ再生は前方にふわりとステージが広がる印象で、小さなスピーカーシステムひとつで鳴らしているとは思えないサウンドが再現されていた。

Amazon.com,Inc. Audio Technologyディレクターのフィル・ヒルメス氏

試聴会場にはEcho Studioや従来のEchoシリーズが展示され、パフォーマンスを体験できるようになっていた

 体験会の後には、松任谷正隆氏をゲストに招いてトークショウも開催されている。松任谷氏も自宅でEchoスピーカーを使っているそうで、「最近は“朝の薄いジャズをかけて”とAlexaに頼んだりしています。そうすると新しい曲と出会えたりして楽しいよね」とAmazon Musicに親しんでいることを話してくれた。

 さらに360Reality Audioやドルビーアトモスの再生について聞かれると、「今はそういう時代になっていますよ。音楽を作る時は、“オネスト”つまりイメージ通りの音を正直に作ることを重視しますが、音を楽しむ時は意味が違って、出来上がったものは楽しまなくてはいけない。だからイマーシブオーディオは楽しむには最適だと思う」と、オーディオの楽しみ方についても理解を示していた。

 Amazon Music HDの可能性をどう考えるか聞かれると、「マスタリングしてCDにするというのは、僕らにとっては作った料理をレトルトにされるようなもので、僕はマスタリングという作業が一番嫌いでした。だからハイレゾになるのは当然でしょ、と考えています」との返事だった。

ハイレゾやイマーシブによる音楽再生にも理解を見せた松任谷正隆さん

 特にEcho Studioは一台でハイレゾもサラウンドも楽しめることを評価しているそうで、「リモコンを複数使うのは面倒だし、一台でできるのがいい。しかも価格も2万5000円くらいというからいいですね」と音楽を楽しむアイテムとしてEcho Studioに注目していることも明かしてくれた。

 なおStereoSound ONLINEでは、Echo StudioとAmazon Music HDについては、さらに詳しい取材を進めているので、追って紹介したい。どうぞお楽しみに。