テクニクスからアナログプレーヤーのSL1200MK7とSL1500Cが登場。この2機種は性格の異なる兄弟機である。SL1200MK7はDJ用途を想定。SL1500Cのほうはオールインワンの入門機として企画されており、オルトフォン製2MレッドのMM型フォノカートリッジが付属するだけでなく、ON/OFFがそれぞれ設定可能なMM対応フォノイコライザー回路とオートリフター機能も内蔵する親切設計が嬉しい。
SL1200MK7 ¥90,000(税別)
トーンアーム部 ●型式:スタティックバランス型●適合カートリッジ重量:5.5~12g
プレーヤー部 ●駆動方式:ダイレクトドライブ●モーター:コアレス・ダイレクトドライブモーター●回転数:33・1/3、45、78rpm●ターンテーブル:アルミダイキャスト、2層構造、自重1.8kg(スリップシート含む)●寸法/重量:W453×H169×D353mm/約9.6kg
SL1500C ¥100,000(税別)
カートリッジ部(オルトフォン2M Red)●型式:MM型●出力電圧:5.5mV●適正針圧:1.8g
トーンアーム部 ●型式:スタティックバランス型●有効長:230mm●適合カートリッジ重量:14.3~25.1g(ヘッドシェル含む)
プレーヤー部 ●駆動方式:ダイレクトドライブ●モーター:コアレス・ダイレクトドライブモーター●回転数:33・1/3、45、78rpm●ターンテーブル:アルミダイキャスト、2層構造●出力端子:Phono端子×1、LINE端子×1●寸法/重量:W453×H169×D372mm/約9.9kg●備考:MM型対応フォノイコライザー、アームリフター内蔵
両機とも、新規開発による全周FG検出のクォーツロック制御コアレスDD方式モーターを搭載。トルク配分は用途を考えて最適化されているという。プラッターは裏面に剛性を高めるリブがあり、アルミニウムのダイキャストに制振用ラバーを貼り合わせている。
筐体は上部がアルミニウムのダイキャスト製で、下部がABS+ガラス繊維の2層構造。インシュレーターも専用設計だ。SL1200MK7にはフェルト製、SL1500Cは上級機と共通のゴム製マットが付属する。
2機種の音は本誌試聴室で聴いた。フォノカートリッジはオーディオテクニカのVM760SLC(VM型)を使用。アンプはエアータイト製でATC5とATM3である。スピーカーシステムはB&W800D3。
まず最初はSL1200MK7から。井筒香奈江「サクセス」(オーディオ協会45回転盤)は、スピード感のある切れの良い演奏。リファレンスのSL1000Rとは音の緻密さで格が違うが、価格を考えたら優秀である。ソニー・ロリンズ「俺は老カウボーイ」もリズミカルで、ストレスを感じさせない音抜けの良さが好ましい。アンセルメ指揮「三角帽子」も帯域の広さと豊かな臨場感が楽しめた。
続いて聴いたSL1500Cも音の傾向は特に変わらないが、マット素材の違いによりSL1500Cのほうがわずかに音楽の重心が下がった印象。内蔵フォノイコライザーを経由した音は、管球式フォノアンプとは趣の異なる、半導体回路らしい陽性の華やかさが感じられる。付属するカートリッジの2Mレッドは中域を大切にした柔らかい音質だ。調整でわかったのは、オートリフター機能がある関係でトーンアームの高さ調整のロック機構がレバーだけということ。SL1200MK7とは異なるところだ。
トーンアーム設計とフォノEQレスの構成から、本誌読者にはSL1200MK7を推奨
アナログディスク再生から遠ざかっていたか、あるいは未経験というオーディオファイルには、私は文句なくSL1500Cを推薦する。いっぽう、知識と経験がある本誌『管球王国』の読者諸兄にたいしては、SL1200MK7をお薦めしたい。その大きな理由は78回転を含めたピッチ調整が可能なこと。加えてトーンアームの高さが微調整できる伝統的なダイアル操作の感触も好ましく、SL1500Cが内蔵するフォノイコライザー回路(MC型に非対応)の必要性は低いと思うのだ。ただし、音質対策が施されたマットを用意するという前提である。補助ウェイトも入手しておいたほうが良いだろう。