第32回を迎える東京国際映画祭が、TOHOシネマズ 六本木ヒルズや東京ミッドタウン日比谷で開催されている。今回も招待作品やコンペティションなど多くの作品が上映され、映画愛好家があつまっている。
そんな中、ジャパニーズ・アニメーション部門に関連したイベントとして、「ウルトラ怪獣の誕生『ウルトラQ』から『ウルトラマン』へ」が11月4日に六本木ヒルズアリーナで行われた。東京国際映画祭では『ウルトラQ』の4K/SDR版も上映されており、今回のイベントもそれに関連したものだったのだろう。
イベントには、怪獣ブームを巻き起こした『ウルトラマン』でハヤタ隊員を演じた黒部 進さんと、『ウルトラQ』『ウルトラマン』の両作に出演した桜井浩子さんが登壇し、当時の思い出を語った。
黒部さんは「53年前の作品のイベントにこれほどの人が集まってくれてたいへんな喜びです。僕も10日ほど前に80歳になってしまいました」と話して会場の笑いを誘った。
そして「『ウルトラマン』で一番印象に残っているのは、(ベータカプセルと間違えて)スプーンを上げるシーン。あれは秀作でした」と話すと、すかさず桜井さんが「あのときは一回スプーンを置いているのに、外に出るとまた持っているのはおかしいでしょう」と突っ込みをいれた。これに対して黒部さんが「そこがアンバランスゾーンなんです。実相寺(昭雄)さんが悪い!」と、まるで漫才のようなやりとりを披露した。
その後ウルトラマンの魅力を聞かれた黒部さんは、「ウルトラマンは成田(亨)、さんのデザイン力で生まれたようなものです。世界に通じる造形だと思います。成田さんには感謝ですね」と話し、桜井さんも「スーツアクターの古谷 敏さんは足が長くて、フォルムがとても素敵でした。海外でも私と黒部さん、古谷さんで講演をすることがありますが、みんな喜んでくれます」と『ウルトラマン』の人気の高さを語ってくれた。
また当時の撮影についても「怪獣はすべて合成だから、どんな形でどこに出てくるかを想像して演技をしていました。テレビ放送もなかなか見られなかったので、自分でオンエア版を見たのはかなり後になってからでした」と黒部さん。一方桜井さんは「ある時、科学特捜隊のみんなで怪獣が出てきて驚くシーンを撮影したら、監督がNGを出したんです。何が悪かったのか聞いたら、怪獣がピグモンだからもっと視線を低くしてくれって言われて……」と面白エピソードを語ってくれた。
ちなみに黒部さんのお気に入りの怪獣はバルタン星人だそうだ。これについて桜井さんは「飯島(敏宏)監督はバルタン星人を愛しておられました。以前、バルタン星人のイラストが内側に描かれた靴を履いていって飯島監督に見せたら、『バルタン星人が踏まれている』って悲しそうにつぶやいて、以後気をつけようと思ったくらい」と、またもや面白エピソードを聞かせてくれた。
ここで会場にバルタン星人とゼットンが乱入、ハヤタ隊員が変身したウルトラマンも登場し、ステージ上でショーが開催された。客席には小さな子供たちも多く見に来ており、このサービスには大喜びの様子だった。
ショーの後改めて登場した黒部さんと桜井さんは、集まったファンにお礼の言葉を述べた。
桜井さんも「53年も経って、今でも黒部さんや私、怪獣たちが皆さんの前でお話できるのはひじょうに嬉しいんですけど、ヒロインとしては困るんです。相当無理していますから(笑)。これからも円谷コンベンションなどもありますので、よろしくお願いいたします」と、にこやかに挨拶をしてくれた。
黒部さんは「80歳になりましたが、『ウルトラマン』の名前が残っていて、ファンの方がいる限り、90歳になってもイベントに出てきます。『ウルトラマン』はそれだけ深い魅力のある作品です。その頃は杖か車椅子がいるかもしれないし、ベッドに寝たまま話をするかもしれない。そんなのも面白くないですか?」と力強く話した。