シェイクスピアの古典的戯曲と、歌舞伎の驚くべき融合。登場人物が“謡(うたい)”をやったり、見栄を切るのだ。

 10月22日、東京・天空博劇場(北千住 東京芸術センター21F)にて音楽劇「ハムレット」の初日が上演された。「ハムレット」は1600年ごろに作られてから現在まで400年以上の間、世界中のあらゆる役者たちに演じられてきたといっても過言ではない定番中の定番だが、今回は演出の藤間勘十郎が歌舞伎のテイストを加え、まったく新しい“音楽劇”として生まれ変わらせた。

 ハムレット役には韓国の人気タレント、キム・ヨンソク(CROSS GENE)が扮する。日本語で歌い、しゃべり、激しいアクションもこなす。その母親役には、元宝塚歌劇団トップスターの北翔海莉が抜擢された。初の母親役ということでも話題を集めることだろう。そしてオフィーリア役は栗原沙也加だ。ミュージカル「アニー」で主役を務め、一躍評判になった美しい歌声は今回も映えている。さらにルー大柴は二役を演じ、見事なエンターテイナーぶりを披露。ほか大橋典之、野島直人、根本正勝ら実力者が揃い、本作のために作られた橋本賢悟による楽曲を歌いつつ物語を表現する。通路やバルコニーも使ったパフォーマンス、いわゆる“鳴り物”と、ベヒシュタイン社のアコースティック・ピアノが放つ格調高い響きの調和にも耳を傾けたい。

 ゲネプロ(通し稽古)後には藤間勘十郎も交えて会見が行なわれ、各人が意気込みを語った。その一部をご紹介しよう。

キム・ヨンソク 本当に新鮮でチャレンジすることが多い作品です。見どころは1幕から5幕までの全部です。体当たりとか変身するところ、バルコニーで歌うところもぜひ見てください。

栗原沙也加 藤間さんや共演者の皆さんからいろいろアドバイスをいただいて、皆さんのおかげで、今日私は立てているという感謝の思いでいっぱいです。私にとっての見どころはオフィーリアの入水シーンです。死ぬ瞬間を洋舞で表現するのはなかなかないと思います。大切に踊らせていただいておりますのでぜひご注目ください。

ルー大柴 43年ぶりにシェイクスピア作品を演じました。その時はまだペーペーで貴族の役だったと思います。もう私も93歳になりますけど(一同笑)、若い役者さん、本当に主役のハムレットさんが素晴らしくて、逆に力をいただいたような感じです。私は二役なんです。みんなとトゥギャザーできて楽しかったです。

 舞台は10月25日まで開催。“和魂洋才”か“洋魂和才”か、2時間超の力作を見届けたい。

音楽劇「ハムレット」
10月25日まで、東京・天空博劇場で上演中
https://artistjapan.co.jp/performance/hamlet/

テキスト:原田和典