ULTRASONE SAPHIRE
オープン価格(実勢価格40万円前後)
●型式:ハイブリッド・密閉型 ●使用ユニット:BAドライバー×4(低域×2、中域、高域)、静電型ドライバー×2(超高域)●再生周波数帯域:10Hz~50kHz ●インピーダンス:25Ω ●出力音圧レベル:106dB ●質量:15g
●ケーブル:1.2m (3.5mmステレオミニプラグ)、1.2m (2.5mm 4極)

“穏やかな高解像度”と言いたい表現力
イヤホン界の至宝が誕生した

 数々の高級オーバーヘッド型ヘッドホンでその名を知られるウルトラゾーンが発売したカナル型イヤホンのハイエンドモデルが、このSAPHIRE(サファイア)だ。ブルーで仕上げられたハウジングのミニマルな美しさが印象的だが、特筆すべきは、静電型ドライバーを使ったハイブリッド構成の4ウェイ6ドライバーという意欲的なシステムだ。

 ドライバーの構成は低域がBA型×2、中域がBA型×1、高域がBA型×1、そして超高域が静電型ドライバー×2となる。静電型ドライバーは6μgという超軽量で、ゴールドコーティングを施した振動板を採用。16μmのワイヤー、1万5000巻きのコイルを使った内蔵トランスでオーディオ出力から得た電力を増幅、バイアス電圧として供給する手法により、駆動用の電源は不要だ。使い勝手としては一般的なイヤホンと何も変わらず、静電型ならではの優れた高域特性と圧倒的な低歪みを獲得している。インピーダンスも25Ωと標準的な値で、特に鳴らしにくい部類ではない。

 しかし、その驚異的な再現性は、再生機器の音質を丸裸にしてしまう。サファイアの音を存分に味わうには、確かな実力を持つプレーヤー/アンプを組み合わせる必要はあるだろう。

音質のよさと聴き心地のよさを高い次元で両立

 プレーヤーをアステル&ケルンのSP1000として、テオドール・クルレンツィス指揮ムジカ・エテルナによる『チャイコフスキー/交響曲第6番』(96kHz/24ビット、FLAC)を聴いた。音色はナチュラルでニュアンスに富んだ鳴り方が印象的だ。弦楽器の繊細な音色の変化を豊かに描き、管楽器の出音の鋭さも素早くスムーズ。高解像度だが硬さやとげとげしさはなく、穏やかと表現したくなるほどにきめの細かい描写は他にはない魅力といえる。音場の立体的な広がりも見事で、頭の中にホールが視覚的に映し出されるかのようだ。

 アナログシンセサイザーの独特の音色が今では新鮮なYMOの『デイトリッパー』(96kHz/24ビット、FLAC)では、多彩な音色はもちろんのこと、ドラムスの重みのある響きまでしっかりと鳴らす。低音も、感触はややソフトだが勢いが鈍るようなことはなく、量感の豊かさと芯の通った力強さが両立している。上品ではあるが、熱気やエネルギー感もきちんと伝えてくる。ヴォーカルの生々しさとニュアンスの豊かさは絶品だ。

 コンパクトなハウジングのフィット感は良好で、長時間のリスニングも快適。音質のよさと聴き心地のよさを高い次元で両立した、イヤホンの至宝だ。

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