9月30日、東京カルチャーカルチャーにて「Z塾Presents CoCo30周年を祝う会」が開催された。CoCoは1989年、フジテレビの番組「パラダイスGoGo!!」内の乙女塾から誕生したグループ。乙女塾1期メンバーの宮前真樹、羽田惠理香、大野幹代、2期メンバーの三浦理恵子、瀬能あづさからなる5人組として発足し、1992年5月17日に瀬能が脱退。その後は4人組として活動し、94年9月30日に解散した。つまりこの日は、CoCo解散からちょうど25周年というメモリアル・デイでもあったのだ。

 主催の“Z塾”は、1980年代後半から90年代半ばにかけての、いわゆる“アイドル冬の時代”の名曲に光を当てる団体。彼らにとっても、この企画は会心のものだったと思われ、TOMONOa.k.aVDJ CRANK、かーりん、bignose、変珍らのDJも気合の入りまくったものであった。

 プログラムはJIRoを司会進行役にしたトーク・セッションでスタートした。出席者は及川眠子(作詞家)、都志見隆(作曲家)、そして当時レコード会社のポニーキャニオンでCoCoを担当していた佐多美保。「はんぶん不思議」で三浦理恵子が“あなたいじわる”のパートをソロで歌うようになったいきさつ、「Live Version」のサビ前で低く転調することになった理由など、“えっ、そうだったの!”的話題が、くつろいだ雰囲気の中で次々と飛び出した。湾岸戦争やベルリンの壁崩壊を意識したフレーズを歌詞に取り入れた「NEWSな未来」が、「アイドルの歌う歌詞じゃない」と批判されたというエピソードも個人的には興味深かった。

 休憩のあとは、ここに写真家の齋藤清貴も参加。CoCoの全オリジナル・アルバム、シングルのジャケット撮影を担当した巨匠だ。CoCoの活躍期は、アナログ盤が風前の灯でCDの生産がぐんぐん伸びていた時代。17センチのシングル・レコードは8センチCD(縦長ジャケット。いまは絶滅してしまった判型といっていい)にとってかわった。「アイドルのジャケット写真を、大きなブロマイドと捉えて楽しんでいた世代」にとっては、このジャケットの縮小化にはなんとも残念な気持ちが巻き起こったし、いわゆる“アイドル冬の時代”が来たのも、個人的には「見る楽しみがちっちゃくなった」という理由が少なからず関わっているような気がするのだが、そんな時代にCoCoの面々をクオリティの高い写真、粋なライティングで届けてくれたのが齋藤清貴だった。

 「全員をフラットに撮る(等しくかわいく撮る)ことが大切」という言葉の、なんという深さ。当時はフィルムカメラの時代であり、合成や修正などほぼないに等しかった(「Live Version」のジャケのみ、それぞれジャンプしたメンバーを合成)。とある撮影の時、メンバーにものもらいができていて、ライティングやメイクの工夫でそれをとにかく目立たないようにしようと苦心したという佐多のエピソードも、フォトショップやsnowなど夢のまた夢だったアナログ時代の証言として後世に伝えられるべきだ。

 さあ、次はライヴ・パートだ。登場するのは現代を代表するアイドル、ハコイリ・ムスメ。結成当初からCoCoの曲をカヴァーしてきたことは、この場にいらっしゃった誰もがご存じだったに違いない。前日に開催されたAKIBAカルチャーズ劇場公演を最後に、オリジナル・メンバーで元リーダーだった我妻桃実が卒業し、この日は吉田万葉をリーダーとした新体制での初ステージとなった。

 登場したのは吉田、サブリーダーの井上姫月、塩野虹、山本花奈、依田彩花。初期CoCoと同じ5人編成で、まずは「はんぶん不思議」を歌唱。アメリカのヒット・ポップス「ジョニー・エンジェル」(1962年にShelley Fabaresが歌唱)に似たチャーミングなメロディが印象に残る。さらに「乙女のリハーサル」(デビュー曲「EQUALロマンス」のカップリング)、宮前真樹のソロ曲「シャボンのため息」、三浦理恵子のソロ曲「水平線でつかまえて」、最後に自らの初オリジナル曲「微笑みと春のワンピース」をパフォーマンスして場内を釘付けにした。

 ライヴのあと、飛び切りのサプライズが待っていた。CoCoの元メンバーで、現在は料理研究家として活動する宮前真樹の登壇だ。及川、都志見、佐多、齋藤とトークを繰り広げ、芸能界から退いて久しい大野幹代からのメッセージを代読した。

 今回のイベントでCoCoの取り組んできたことのグレードの高さ、スタッフの研ぎ澄まされたコンセプトに感心させられることしきりだった。ポニーキャニオンのディレクターであった渡辺有三氏(故人)は本当に確かな視点を持っていたんだなと再認もさせられた。家に帰り、CoCoの持っていない作品を買おうと通販サイトをのぞいたら、すさまじいプレミアがついていた。ぜひ筆者のような“新規”にも求めやすい形での復刻をお願いしたい。と同時に、Z塾が今後、どんな光を往年のアイドルにあててくれるのかにも限りない期待が高まる。

テキスト:原田和典

ハコイリ・ムスメ https://hakoiri-musume.com/