映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第32回をお送りします。今回取り上げるのは、アクションファンにはたまらない、撃ちまくり、暴れまくりのシリーズ第3弾『ジョン・ウィック:パラベラム』。まだまだ続きそうな勢いの注目作。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『ジョン・ウィック:パラベラム』
10月4日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

 伝説のヒットマンの復讐劇を、シャープかつ殺しまくりのドシャメシャ・アクションで描いて大ヒット! キアヌ・リーヴス主演の第3作。

 裏社会の掟を破ったお前を待つのは血の粛清だ。雨のニューヨークで、名無しのピットブル犬を連れて逃げ出す前作のラストシーンから、映画は一気にアクセルを踏み込んでゆく。

 図書館での大男とのタイマン、骨董品店での棚の武器を取り合っての格闘。賞金首となったジョン・ウィックを中国系、イタリア系などの多国籍ギャングが追うので、もはや周囲は全員が敵だ。道端のホームレスも隙あらばわらわらと襲いかかってくる。

 監督のチャド・スタエルスキは、『ハートブルー』と『マトリックス』シリーズでキアヌのスタント・ダブル(代役)を務めた元スタントマン。少年時代に観た千葉真一主演のカラテ映画が大好きで、唯一の監督、助演作品が香港との合作クンフー映画である『ファイティング・タイガー』(2013年)というキアヌも、柔術+ガン・アクションで暴れまくれるジョン・ウィックは理想の配役だったにちがいない。

 ハイスピードのアクションは健在だ。馬とバイクの公道猛チェイス! ヘイ、お待ちの寿司屋暗殺者集団! んな馬鹿な。でも面白い。奇想ますます沸騰して、もはやヴァイオレンス・ファンタジーの境地に達しているのだ。ファイト・コレオグラファー(格闘振り付け)のジョナサン・エウセビオ(『ウルヴァリン:SAMURAI』)、撮影のダン・ローストセン(『シェイプ・オブ・ウォーター』)、音楽のタイラー・ベイツ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)など、常連スタッフの努力と工夫の賜物だろう。

 悪人には厳しいけれど、ワン公にはやさしいジョン・ウィック。今回もいろいろ見せ場あり。加えて『チョコレート』『007/ダイ・アナザー・デイ』のハル・ベリーが過酷なワークアウトを経て、キアヌに負けぬ無双を披露する。CGIでごまかさないのがアクション専門店の誇り。それに応える役者もすごい。

 “パラベラム”とは、銃器の弾薬筒のこと。商品名として有名で、本来は戦闘準備の意味がある。ニューヨーク地下世界の情報王バワリー・キング(『マトリックス』でも共演したローレンス・フィッシュバーン)だけがウィックの味方なのか。全身ボロボロのジョンは怒っているよ。次作が最後の大戦争になるかもしれない。

『ジョン・ウィック:パラベラム』

10月4日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
監督:チャド・スタエルスキ
原題:JOHN WICK:CHAPTER3 PARABELLUM
配給:ポニーキャニオン
2019年/アメリカ映画/2時間11分/シネマスコープ
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