映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第31回をお送りします。今回取り上げるのは、人気沸騰、呪いの人形にフィーチャーした『アナベル 死霊博物館』。シリーズ最高傑作と久保田さん絶賛の本作を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『アナベル 死霊博物館』
9月20日(金)全国ロードショー

 夫のエドは、非聖職者としてカトリック教会が初めて認めたという悪魔祓い師。妻のロレインは強力な霊能者。いい夫婦だなあ。いま、映画界でいちばん好きなカップルかもしれない。実在の心霊研究家ウォーレン夫妻をモデルにヒットを飛ばしたオカルト・ホラー『死霊館』(2013年)から始まった“死霊館ユニバース”の第7作。

 大傑作の『死霊館 エンフィールド事件』もあり、少し脱力するスピンオフ『死霊館のシスター』もあった。このシリーズの分室になっているのがアナベルちゃんユニバース。史上最悪の呪われた人形として、『死霊館』冒頭にニヤニヤ顔でゲスト出演をして人気爆発。単独作として『アナベル 死霊館の人形』と『アナベル 死霊人形の誕生』が作られた。本作はエド&ロレイン夫妻も顔を見せる第3作だ。

 アナベルちゃんは『チャイルド・プレイ』のチャッキーのようにナイフを振りかざして襲ってきたりはしない。行儀がいいのだ。たまに別の椅子へ瞬間移動するくらいで。

 その代わり冥界から死者や悪魔、気味の悪いものを次々呼び寄せる。映画は自然と超常現象、ポルターガイストのジャンルに傾き、これがアナベルちゃん映画最大の魅力。今回も空中浮遊する花嫁とか、目に硬貨を乗せたおっさんとかイロイロ出るよ!

 ウォーレン夫妻の留守中に、娘のジュディ(『gifted/ギフテッド』で天才少女を演じたマッケナ・グレイス)とベビーシッターのメアリー、その友人であるダニエラの3人が、オシッコちびるお留守番をするという一席。自宅の地下には、夫妻が心霊探査で預かった呪いの品々を収めた陳列室があり、ちょいビッチなダニエラはお約束通りアナベルのガラスケースを開けてしまう。

 7歳で死んだ少女アナベルの霊(実は悪霊)が憑依していたといわれ、ウォーレン夫妻が実際に封印、保管をしていたアナベル人形。実物は、赤毛にエプロンをしているラガディ・アンという米国で人気の抱き人形。

 悪霊もなんでこんなのに取り憑いたのかな。多くの家庭にあるものだから、嫌がらせ効果を狙ったのかもしれないけれど。アナベル人形はたまにヘンなところに顔を出す。製作者のジェームズ・ワンが監督した大作『アクアマン』では、アクアマンが科学者バルコ(ウィレム・デフォー)に会う場面で海底に転がっていた。

 今回の『~死霊博物館』、アナベルちゃんユニバースでいちばんの出来かも。怖さもユーモアもあるし、ひさびさにウォーレン夫妻が顔を見せるし。見終わったら、死んだ人間の数をチェックしてみよう。ホラー映画としてたいへん珍しいことをやっている。

『アナベル 死霊博物館』

9月20日(金)より全国ロードショー
監督・脚本:ゲイリー・ドーベルマン
原題:ANNABELLE COMES HOME
配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年/アメリカ映画/1時間46分/シネマスコープ
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