先般、こちらの記事( https://online.stereosound.co.jp/_ct/17296853 )でHUAWEI P30 liteを音楽プレーヤーとして使ったインプレッションをご紹介したところ、予想以上に多くの方から反響をいただいた。みんなやっぱりスマホやイヤホンの音質には興味があるということだろうか。

 ということで、今回は同じくHUAWEIから8月末に発売されたBluetoothスピーカー「HUAWEI Mini Speaker」を採り上げ、その音質や使い勝手を試してみたい。

Bluetoothスピーカー「HUAWEI Mini Speaker」。直径5cm、高さ5.63cmというコンパクトなスピーカーだ

 Mini Speakerは、同社初のBluetoothスピーカーで、市場想定価格は¥3,280(税別)。本体サイズは直径50mm、高さ約56.3mmの円柱形で、直径40mmのフルレンジユニット1基と、パッシブラジエーターを搭載している。フルレンジは本体上向き、パッシブラジエーターは下向きにマウントされる。

 音楽信号の伝送はBluetoothで、コーデックはSBC。再生周波数帯域は210Hz〜20kHzとのこと。充電はマイクロUSBで行ない、フル充電で4時間以上の再生ができる。またIP54の防塵・耐水性能(粉塵が内部に侵入しない防塵性能とあらゆる方向からの水の飛沫を保護)を備えているので、屋外での使用も問題ない。重さも約101gと軽量だ。

 このスペックを見ると、リビングに置いて使うというよりは、屋外に持ち出して、キャンプなどのアウトドアシーンでの活用を想定しているようにも思える。実際、製品にはストラップも付属している。

 で、まずはベーシックな使い方で音質をチェック。音楽プレーヤーとして「P30 lite」を組み合わせ、Bluetoothでペアリングする。

 Mini Speakerの操作ボタンは本体正面下側にひとつだけ。これを約2秒押すと電源が入る。初回時は自動的にペアリングモードになるので、P30 liteでMini Speaker(デバイス名はMC510と表示される)を選べばいい。二回目以降は本体ボタンを3回押すとペアリングモードに入る。

 Mini Speakerを木製テレビラックに乗せ、約1.5mの位置で音楽を聴いてみた。CDからリッピングしたマイケル・ジャクソンの『Bad』やカーペンターズ『SINGLES 1969-1981』、ベルリン・フィルのハイレゾ音源『ラトル指揮 シューマン交響曲全集』から「交響曲第1番 変ロ長調 作品38
『春』」(96kHz/24ビット/FLAC)などを再生した。

充電用のマイクロUSBコネクターは背面に搭載。その左横に通話用のマイク穴が設けられている(写真左)。底面に装備したパッシブラジエーターで低音を補強する(写真右)

 全体としての印象は、以前取材したBluetoothイヤホン「Free Lace」と似ている。マイケルやカレンのヴォーカルがすっと耳に飛び込んできて、聴きやすい。再生帯域を欲張らずに、人の声を中心に心地いいバランスにまとめているのだろう。

 ただ、さすがに低音は控えめで、「Bad」や「Smooth Criminal」などでもう少し音圧感が欲しい。さらに『春』では冒頭、序奏のトランペットとホルンのファンファーレがきちんと聴き取れなかった。

 そこでボリュウムを上げて音圧感が出てくるかを試してみた。ここまではP30 liteのアプリのボリュウムは、画面に表示されるタスクバーの70%くらいの位置で聴いたのだが、それを90%付近までアップする。が、これはいまいち。全体の音が大きくなったぶん高域も耳に付きやすくなり、うるさく感じてしまう。

 続いてMini Speakerを、ラックからコールマンのキャンプ用テーブルに載せ替えてみた。こちらは天板が簀の子状の、厚さ10mm弱というものだ。Mini Speakerは下向きにパッシブラジエーターを備えているから、天板が共振して低音感が出てくるかも、と考えたわけ。

 その結果わずかに低域感は増えたが、期待したほどの変化ではなかった。置き方による低域への影響は案外少ないのだろうか? とはいえ、パッシブラジエーターはかなり振動しているので、Mini Speakerは平坦な場所にきちんと置くにこしたことはないだろう。底面には樹脂製の脚が付いており、3点で支持するようになっている。

2台の「Mini Speaker」を使ってステレオ再生も試した。再生機は「P30 lite」を使用

 さて、Mini Speakerはモノーラルスピーカーなので、ここまではP30 liteからのステレオ信号をモノーラルに変換して再生していたことになる。それもあり、音の広がりや音場感がこぢんまりしていたのも事実だ。

 そこで、Mini Speakerを2台使ったステレオ再生も試してみる。Mini Speakerはステレオペアリングにも対応しており、設定も簡単だ。まずメイン(左ch)となる1台を決め、本体ボタンを2回押す。次にもうひとつのMini Speakerの本体ボタンを3回押してペアリングモードにすると、両モデルがつながって、ステレオ再生が楽しめるようになる。

 この要領で2台をペアリングすると、ステレオ音声が再生された。が、そのままではボリュウムが大きい! スピーカーが2台になったのだから音量が上がるのは当然だが、その差が予想以上だったのだ。P30 liteのボリュウムを60%弱まで下げると、先程と同じくらいの音量感になった。

 改めて先程と同じ音源を聴いてみると、モノーラルとの違いがとても大きい。聴感上のボリュウムが上がり、音量感もアップ。低域不満もちょっとだけ解消された感じだ。

 そして何より音場感再現が改善されている。今回はL/Rスピーカーを60cmほど離して置いているが、その中間にふわりとヴォーカルが定位し、奥行方向の再現性も自然に広がってくる。

 マイケル・ジャクソンの雄叫び(?)もノリがよくなり、カレンものびのび歌っている印象に変化した。『春』冒頭のトランペットとホルンもきちんと聴き取れるし、その後の旋律もしっかりピラミッドイメージを構成している。

 さらに間隔を80cmくらいに広げて、『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラやシュガー・ベイブ『SONGS』などを鳴らしてみた。わが家のリビングは12畳強のサイズだが、音量的にも不満のないサウンドが再現された。さすがにハイファイスピーカー同等とはいかないが、普段使いのBGMならこれで充分と思う人は多いかも。

 価格的には2倍になるが、音を聴く楽しさは5倍以上にアップしている。個人的にはMini Speakerはペア販売を標準にして、モノーラルでも使えますと説明した方がいいのでは、と思ったくらいだ。

「MateBook13」とペアリングしてYouTubeを試してみたが……

 さてせっかくなら、Mini Speakerで映像付きの作品も見てみようということで、HUAWEIの「MateBook13」と組み合わせた。MateBook13は13インチの2Kディスプレイを搭載したノートPCで、ドルビーアトモスのバーチャル再生ができるスピーカーシステムを内蔵している。

 MateBoo13とMini Speaker(ステレオモード)をペアリングし、YouTubeで先日公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の特別映像を見る。歴代作品の名シーンをうまくあしらいつつ、最新作への期待を高めてくれる、ファン必見のトレーラーだ。

 内蔵スピーカーもそれなりに頑張っているが、音場感はMini Speakerの方が上。1分10秒以降で音楽のボリュウムが上がっていくと、内蔵スピーカーは音が飽和して、いっぱいいっぱいの印象になってしまう。その後の雷鳴やライトセーバーのうなり、ダース・ベイダーの呼吸音などもMini Speakerで鳴らした方がリアルだった。

 次に絶賛公開中の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告編チェック。タランティーノがシャロン・テートの事件をキーに、映画への愛を描いた作品で、劇中の音楽がとてもいい。こちらもMini Speakerをプラスすると作品への興味がより高まると思う。

 が、『ワンス・アポン〜』を見ていてどことなく違和感が……。よくよく確認すると、リップシンクがずれている。『スター・ウォーズ〜』の特別映像はセリフがなかったので気がつかなかったが、こちらではレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットのセリフが若干遅れている。

 そこでYouTubeの音楽作品を選んでみたが、歌手の口元と声のずれがはっきりわかってしまう。コンテンツ次第ではあるけれど、ドラマや音楽ライブでは気になるだろう。ここはちょっと残念。上位モデルでかまわないので、低遅延のaptX LLに対応するなどのラインナップ展開を期待したい。(取材・文:泉 哲也)