様々なヒーローがひとつの世界に集まり、チームを組んでバトルを繰り広げる……。そんな“クロスオーバー”のストーリー、世界観はこれまでにも多くの作品で採り上げられてきた。

 もともと違うお話だった『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』が『帰ってきたウルトラマン』から同じ世界に融合されたし、松本零士氏の漫画でも『銀河鉄道999』や『キャプテン・ハーロック』などの各作品の主人公がひとつの宇宙に共存していた。海外ではラリー・ニーヴンのSF小説「ノウンスペース」シリーズも、あちこちの惑星に主人公が点在しているあたり、同様の発想だろう。

 だがその中でも一番のスケールとエンタメ性を持っているのは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズに間違いない。昨日フェイズ3の最終エピソードとなる『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が公開されて一段落した観もあるが、何しろキャラクターの数と作品を生み出す力については桁違いのマーベルのこと、きっとフェイズ4以降も快作が登場するものと期待している。

 で、そんなMCUフェイズ3までで一番盛り上がった『アベンジャーズ/エンドゲーム』のUHDブルーレイが9月4日に発売された。諸般の事情で遅くなってしまったけれど、本ディスクをチェックする時間が取れたので、インプレッションを紹介したい。

9月4日発売された『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、MovieNEX(¥4,200、税別)と4K UHD MovieNEX(¥8,000、税別)、4K UHD MovieNEXプレミアムBOX(¥10,000、税別、数量限定)の3種類が準備されている。写真は今回視聴した4K UHD MovieNEX

 といっても、ストーリーについては説明不要、というかこのスペースでは説明不可能。何しろ22本の作品の集大成としての位置づけだし、主要な登場人物だけでも数十人に及ぶ。そもそも作品冒頭からして、主人公たちが宇宙を漂流しているのだから、初見の人は「?」だろう。

 しかし万が一そんな場合でも、そこで再生をやめてはいけない。ここが不思議なところなんだけど、ストーリーが進んでいくうちに漠然とながら全体の流れが分かってくるのだ(『インフィニティ・ウォー』から見始めた家人がそうだった)。

 もちろん22作を網羅していれば、人間関係や伏線がどんどんつながっていっそう面白いのだけど、そうでなくても楽しめるところがMCUシリーズの凄さ。説明しないふりをしながら(だと思う)、必要なことはきちんと分からせるなんて、やっぱ脚本の妙なんだろうなぁ。

 内容的には、『スター・ウォーズ』同様に様々な異形のエイリアンが出てきて、それがみんな普通に会話しているという異様な世界ではあるけれど、そんなことを気にしては駄目。“宇宙の生き物はすべて平等”という広い心で臨みましょう。小賢しい気持ちを忘れれば、MUCはもっと楽しくなります!

 さてその『エンドゲーム』のUHDブルーレイの映像と音質はいかに? これまでMCUシリーズのUHDブルーレイ、ブルーレイはすべて観てきたけれど、どれも完成度が高い。そもそもCGが多用されており、それらは4Kで処理されているはずで、デジタル映像との親和性も高いのだ。

 先述した冒頭のチャプター(以下Ch)1でも、燃料が切れた薄暗い宇宙船内でのトニー・スタークとネビュラの表情やシルエットがきちんと階調を持って再現できているし、そこに現れるキャプテン・マーベルの輝きはまばゆく、神々しく見える。わが家のプロジェクターはSDR仕様のソニーVPL-VW1100ESだけど、それでも黄色やオレンジの色数が多く感じられた。

 そんな本作で、数少ない屋外で撮影した(と思われる)シーンを観てみる。Ch7のハルクとロケットが新アスガルドにソーを訪ねるシークエンスや、Ch13でトニー・スタークとキャプテン・アメリカがリーハイ基地に潜入する場面だ。

 どちらもパキッとした映像で、新アスガルドの遠景でも建物の屋根や天井のディテイルまで見通せる。空気がきわめて澄んでいるので、遠くまで見晴らしがいいといった印象になる。リーハイ基地のスタン・リーのカメオ出演シーンなどもアメリカの広大な風景がさまになっている。

 今回の4K UHD MovieNexにはUHDブルーレイや2Kブルーレイの他にブルーレイ3Dも入っている。そこで3Dでも視聴してみた。ちなみに『キャプテン・マーベル』の4K UHD MovieNexに入っていたブルーレイ3Dは2Dの本編とはアスペクト比が違う16:9で収録されていた。しかし『〜エンドゲーム』はシネスコのまま、2Dと同じ画角だった。

 3Dメガネ越しの映像は輝度と輪郭がシャキッとした立体画像になる。プロジェクターで2K→4K変換していることも一因かもしれないが、いわゆるキレのいい映像だ。3時間1分の本編を通して観るのはさすがにちょっと疲れたが、両眼視差を活用した立体視による演出も完成度はしっかり上がっている。

左は『マイティ・ソー 4K UHD』¥6,000(税別)で、右は『マイティ・ソー/ダーク・ワールド 4K UHD』¥6,000(税別)

 サウンド面では低域の力強さとインパクトが印象に残った。Ch15、ハルクの指パッチンとその後の静寂、そしていきなりの急展開という一連のつながりが、見事に緩急を持って再現される。特に後半の爆撃の低音感は、サブウーファーの調整にも注意が必要かも。

 その後のCh16からラストまでの展開は、あまりの情報量に目も耳も飽和寸前だ。めまぐるしく入れ替わるヒーロー達の活躍、溢れる爆音などまさに息もつかせぬ展開が続く。

 『〜エンドゲーム』の音声はドルビーアトモス収録で、広がり感も見事に出てくる。でも、天上方向からの効果は若干抑え気味かもしれない(いわゆるスタティックオブジェクトでの制作かも)。そこでAVセンター、ヤマハCX-A5100のシネマDSPモードを掛け合わせてみた。

 「エンハンス」「サイファイ」「ドラマ」と色々なプログラムを切り替えてみたところ、「スペクタクル」がぴったりだった。音に派手さが加わって、頭上の情報もアップ、気分が盛り上がるのだ。Ch18の最後の指パッチンからの終演に向けての展開もよりドラマチックに感じられる。

 ちなみにラストシーンのキャプテン・アメリカとサムの会話は「ドラマ」の方がおちついた印象となる。こうなってくるとヤマハ最新機に搭載されている「サラウンドAI」が欲しくなってしまうから、困ったもの。

『アイアンマン2 4K UHD』¥6,000(税別)と『アイアンマン3 4K UHD』¥6,000(税別)

 なお今回、同時発売された『アイアンマン2』(2010)や『マイティ・ソー』(2011)のUHDブルーレイも観てみたけれど、MCU作品のUHDブルーレイは、どれも間違いなくクォリティが高い。もちろん制作年代によるCGの完成度の違いがはっきり出てくるが、それは作品の持つ味と捉えるべきだろう。

 『〜エンドゲーム』を始めとするMCU作品群は、先に書いたとおり“ありえない世界”のお話であり、デジタル制作の今だから実現した映画だ。そしてこのUHDブルーレイは、デジタル制作された作品の極北と呼んでもいい、ホームシアターで観賞しながらそんな確信を得た次第だ。

 『アベンジャーズ/エンドゲーム』については明日発売の月刊HiViでも詳しく特集している。久保田明さんを始めとする筆者陣の、熱のこもった原稿満載なので、ぜひ楽しんでいただきたい。(取材・文:泉 哲也)

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『〜エンドゲーム』の特典ディスクには、爆笑必至のシーンも収録

 9月4日発売された『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、MovieNEX(¥4,200、税別)と4K UHD MovieNEX(¥8,000、税別)、4K UHD MovieNEXプレミアムBOX(¥10,000、税別、数量限定)の3種類が準備されている。

 そしてそれらのすべてに収録されるボーナス・コンテンツの中には、あのシリアスな本編からは想像できない、爆笑必至の貴重なNGシーン集が収録された。

 例えばワンダ・マキシモフ役のエリザベス・オルセンが転んでしまう様子や、ソーの母親を演じたレネ・ルッソやアイアンマン役のロバート・ダウニーJr.が奇声を発するという、本編では決して見ることができないキャスト達の意外な一面を見ることができる。

 宙づりで飛行シーンを撮影するキャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンは「クールに見える?それなら我慢する」とジョークを飛ばす。本編では、サノスの艦隊を貫く大活躍を見せるのだが、とてもそんなスーパーパワーがあるとは思えない姿に、思わず笑ってしまうこと間違いなし!

 他にも、ロバート・ダウニーJr.は車のトランクからキャプテン・アメリカの盾を取り出すシーンで大苦戦。さらに、ガモーラ役のゾーイ・サルダナをはじめ、キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンス、ブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソン、さらにエンシェント・ワン役のティルダ・スウィントンまで、豪華キャスト陣がノリノリでダンスする様子も収められている。

 撮影現場の雰囲気の良さはもちろん、キャスト同士の強い信頼関係があるからこそ、複雑なアクションシーンやシリアスな演技を可能になった、そんなこともうかがえる特典映像は必見だ。

『アベンジャーズ/エンドゲーム MovieNEX』(¥4,200、税別)