途方もなく広がる音場空間。このシームレスさは圧倒的

 HiVi視聴室のリファレンス・スピーカーは、モニターオーディオ(英国)のプラチナム・シリーズⅡ(以下PLシリーズⅡ)。センタースピーカーを含めて同シリーズでサラウンド・システムが組める態勢だが、この春、同社からプラチナムに次ぐ高級ライン「ゴールド」シリーズが第5世代(5G)となって我が国に上陸した。

まず2Ch再生で基本音質を確認。現代的な音調で映画対応力も高そう

 ここでは、このゴールドGシリーズでフロア7.1Chシステムを組み、7.1.6構成で『アベンジャーズ/エンドゲーム』をドルビーアトモス再生してみたい。モニターオーディオには埋め込み型などのスピーカーもラインナップされているが、今回はオーバーヘッドスピーカーに視聴室リファレンスのイクリプスを使っている。AVセンターはデノンAVC-X8500Hである。

UHDブルーレイ『アベンジャーズ/エンドゲーム 4K UHD MovieNEX』)
¥8,000円+税  発売中)
4枚組 (4K UHD、3Dブルーレイ、ブルーレイ、 「エンドゲーム」初回限定ブルーレイ ボーナス・ディスク))
(ウォルト・ディズニーVWAS6906)

(C) 2019 MARVEL
marvel.disney.co.jp

 ゴールド5Gシリーズは、2016年に第2世代となったプラチナム・シリーズの技術とノウハウが数多く採用されている。前作でリボン・タイプが使われていたトゥイーターは、PLシリーズⅡ同様に同社独自開発のMPD(Micro Pleated Diaphragm)に刷新された。これはハイルドライバーの一種で、超軽量素材のカプトンを折り畳み、蛇腹のように伸縮させて音波を放射する方式。採用例の多いドーム型に比べて振動板面積が広いため耐入力特性に優れ、リボンよりも強度が高いので、高域再生限界の拡張も容易だ。

 ゴールド300-5Gと200-5Gに採用されたミッドレンジドライバーは、新開発の64mm C-CAM(セラミック硬化処理したアルミ・マグネシウム合金)振動板タイプで、トゥイーターともどもダイキャスト製チャンバーモジュールに搭載、近接配置させている。

 

シリーズトップモデル、Gold300-5Gの断面図。キャビネット最上段に搭載されている高域ユニットはシリーズ共通している。前世代のリボン型から、MPD(Micro Pleated Diaphragm)というハイルドライバー系に刷新し、大きく進化している部分だ。低域ユニットは複合素材ノーメックスをコアにして、C-CAM(アルミニウム/マグネシウム合金)とカーボンファイバーでサンドしたRDTⅡ(Rigid Diaphragm Technology 2nd Generation)を使用している。筐体内部の入念な振動対策も上位機種ゆずりの美点といえよう

 

 ゴールド300-5Gの20 Cm、200-5G、100-5Gの16.5CmウーファーもPLシリーズⅡで新規開発された第2世代のRDT(Rigid Diaphragm Technology)Ⅱが採用されている。これは超軽量で剛性の高いハニカム(蜂の巣)構造のノーメックス複合素材を、C-CAMを用いた振動板表面とカーボンファイバーの裏面でサンドウィッチしたもの。このダイアフラムは、通常のC-CAM振動板に比べて300Hz以上で歪みを8dB以上も低減させているというから凄い。

 エンクロージャーには一般的なMDF材が使われているが、レーザー振動解析を用いたブレーシング(支柱)構造が採られており、エンクロージャー内部で発生する定在波を抑制している。

 愛聴ハイレゾファイルを用いて2チャンネル再生でゴールド100-5G、200-5G、300-5Gを順に聴いていく。3モデルともにPLシリーズⅡ同様ワイド&フラット・レスポンス、トランスペアレンシーを印象づける現代的な音調。その持ち味は共通していて、ハイレベルな実力を誇る。とくに表情豊かなヴォーカルの再現が好ましく、3モデルともに映画対応力は高そうだ。

 値段がもっとも高いのだから当たり前でしょ、と言われそうだが、個人的には20㎝ウーファーを2基積んだスケール感豊かなゴールド300-5Gがいちばんのお気に入り。200-5Gとは再生品位が断然違う。低域の伸び、音の厚み、ヴォーカルの生々しさなどヒトケタ上の表現力なのである。ピンフォーカスで音像が立体定位し、帯域バランスが絶妙なコンパクトスピーカーの100-5Gの出来もきわめてよい印象だ。

 

SPEAKER SYSTEM

MONITOR AUDIO
Gold300-5G
¥780,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ4スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:MPDトランスデューサー、64mmコーン型ミッドレンジ、200mmコーン型ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:650Hz、3kHz ●出力音圧レベル:90dB/W/m ●インピータンス:4Ω ●寸法/質量:W328×H1047×D418mm/30.6kg ●カラリング(シリーズ共通):ピアノ・エボニー、ピアノグロス・ブラック、サテン・ホワイト、ダーク・ウォールナット

Gold200-5G
¥600,000(ペア)+税
●型式:3ウェイ4スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:MPDトランスデューサー、64mmコーン型ミッドレンジ、165mmコーン型ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:650Hz、3.5kHz ●出力音圧レベル:88dB/W/m ●インピータンス:4Ω ●寸法/質量:W283×H997×D388mm/22kg

Gold100-5G
¥300,000(ペア)+税
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:MPDトランスデューサー、165mmコーン型ウーファー ●クロスオーバー周波数:2.5kHz ●出力音圧レベル:86dB/W/m ●インピータンス:4Ω ●寸法/質量:W195×H360×D330.6mm/9.2kg ●オプション:専用スタンド ¥60,000(ペア)+税

Gold C250-5G
¥240,000+税
●型式:3ウェイ4スピーカー・密閉型 ●使用ユニット:MPDトランスデューサー、64mmコーン型ミッドレンジ、165mmコーン型ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:1.2kHz、4kHz●出力音圧レベル:88dB/W/m ●インピータンス:4Ω ●寸法/質量:W537×H205×D330.6mm/14.5kg

SUBWOOFER

Gold W12-5G
¥400,000+税
●型式:アンプ内蔵サブウーファー・パッシブラジエーター型 ●使用ユニット:300mmコーン型ウーファー、200mmパッシブラジエーター×2 ●アンプ出力600W ●カットオフ周波数:35~135Hz ●接続端子:LFE入力2系統(RCA、XLR)、ステレオ入力1系統(RCA)、LFE出力2系統(RCA、XLR)、ステレオ出力1系統(RCA) ●寸法/質量:W410×H445×D433.5mm/27kg

Profile
モニターオーディオは1972年創業の英国スピーカーメーカーで、スピーカーユニットからネットワーク回路まですべてを自社内で一貫製造する数少ないブランドとして知られている。Gold 5Gは、同社のロングセラー、Goldシリーズの第5世代の製品群。2016年に登場した同社フラッグシップとなるプラチムシリーズⅡ開発で得られた成果がふんだんに投入されている。トールボーイ型2機種、ブックシェルフ1機種、センター1機種、サブウーファー1機種のほか、サラウンド専用スピーカー(Gold FX-5G、¥320,000ペア+税)もラインナップし、ホームシアターシステム構築にも最適だ
●問合せ先:㈱ナスペック☎︎058(215)7510

その他の使用機器
●プロジェクター:JVC DLA-V9R ●スクリーン:スチュワートStudeoTek130G3(123インチ/シネスコ) ●UHDブルーレイプレーヤー:パナソニックDP-UB9000(Japan Limited) ●AVセンター:デノンAVC-X8500H ●オーバーヘッドスピーカー:イクリプスTD508MK3×6

 

再生環境や好みに合わせて多彩な構成で立体音場が楽しめる

 では、フロントにゴールド300-5G、センターにC250-5G、サラウンドに200-5G、サラウンドバックに100-5G、サブウーファーにW12-5Gを充ててUHDブルーレイ『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観てみよう。すべてベースマネージメントを行なわない「ラージ」設定での再生だ(センターとサラウンドスピーカーの設置法は下記参照)。

 『エンドゲーム』をアトモス再生してまず感心させられるのは、フロアチャンネルすべてを同じマテリアルの振動板で構成したシステムならではの、ナチュラルでスムーズな音のつながり。空間が途方もなく広く再現されるのである。サラウンド・システムを同一シリーズで揃えるメリットを改めて実感した次第。

 しかし、じっくり聴いていくと気になる点が。20cmダブルウーファーのL/Rスピーカー、ゴールド300-5Gにたいして、16.5cmダブルウーファーのセンタースピーカーC250-5Gが非力に感じられるのだ。そこで試しにセンターのみ「スモール」設定にし、90 Hz以下の信号をサブウーファーに振り分けてみた。するとダイアローグの厚みが増し、ぐっと聴き応えが増す印象に。なるほどセンターとL/R間でベースマネージメントを適宜活用するのもサラウンド必勝法のひとつだろう。

 L/C/Rのウーファー口径を揃えたら印象はどう変わるか。そこで、C250-5Gと同口径の16.5cmウーファーを積んだ200-5GをフロントL/Rに充ててその音を聴いてみた。全体に細身の音にはなるが、フロントチャンネルの音の溶け合いは明らかに向上する。『エンドゲーム』最大の聴きどころはアラン・シルヴェストリのダイナミックで雄弁な劇伴音楽だと思うが、そのオーケストラ・サウンドが見事にシームレスに広がっていくイメージとなる。やはりL/Rスピーカーとセンタースピーカーのウーファー口径を揃えるのは、サラウンド再生の基本と思う。

 次にL/Rスピーカーを300-5Gに戻し、センターのC250-5Gをはずしたファントムセンターの6.1.6再生を試してみた。7.1.6再生時はL/Rスピーカーをリスニングポイントからみて大きく開いたセッティング(90度近辺)だったが、ファントムセンター音像のリアリティ強化を図って開き角が約60度となるように300-5Gをスクリーン両サイドぎりぎりまで寄せてみた。

 お一人様視聴を前提にすると、C250-5Gをセンタースピーカーに充てた7.1.6再生よりもこのセンターレス・システムのほうが断然好ましかった。センター成分をL/Rに振り分けるダウンミックスに伴なう音質劣化を指摘する声があり、それはたしかに否定できないが、それ以上に300-5Gという実力が抜きんでたスピーカーにファントムセンター再生を任せたほうが再生品位は断然上がることがわかった。横置き前提のC250-5Gと300-5Gとの放射パターンの違いによるフロントチャンネルの音の溶け合いにも個人的には違和感を抱いてしまうし……。まあこのへんは個人の感覚に依る部分なのだが、絶対センタースピーカーが必要という思い込みだけは持たないほうがいいだろう。

 ところで、ゴールド5Gシリーズにはオン・ウォール・タイプのFX-5Gがラインナップされている。本機は左右斜め方向に2組の2ウェイドライバー(MPDトゥイーターとC-CAM振動板ウーファー)が装填されたサラウンド専用スピーカーで、双方向へ音波を放射するため隣接チャンネルとのスムーズな音のつながりが期待できる。このスピーカーをサラウンド/サラウンドバック用に起用するのもグッドアイデアだと思う。

 

Setting1:HiVi視聴室では、リファレンススピーカーとして同じモニターオーディオの上位製品群、プラチナムシリーズⅡの7.1Chを使っていることもあり、その基準位置に準じてGold 5Gシリーズの7.1Chシステムをそのままセットした。写真のセンタースピーカー用スタンドは、PLC350Ⅱ/PLC150Ⅱ向け別売り品(PL CENTRE STAND Ⅱ。¥80,000+税)で、Gold C250-5Gでもそのまま使用可能だ

Setting2:画面はスチュワートのシネスコスクリーンを使用しているが、画面とセンターチャンネルとの音の乖離が激しいので、センタースピーカーをスタンドごと30cm上げた。視聴室常備のパイオニア製ウッドブロック(CP-200、生産完了)を左右3個ずつ重ねた

Setting3:センターレスの6.1.6の状態でのサウンドパフォーマンスも確認した。ややファントムセンターの定位感が薄まったので、フロントL/RのGold 300-5Gをそれぞれ25cmずつ中央寄りに移動、合計50cm間隔を狭めている

Setting4:16.5cmダブルウーファーのセンター機Gold C250-5Gは、20cmダブルウーファーのGold 300-5Gとはウーファーサイズが異なっている。そこで、Gold C250-5Gとほぼ同じ構成のGold 200-5GをフロントL/Rにセットした状態で、L/C/Rスピーカーの音のつながりを確認した(このときはサラウンドにGold 300-5Gを使った)

 

AFTER HOURS

音色が揃ったサラウンドサウンドは見事

音色が揃ったGold-5Gシリーズのサラウンドサウンドの見事さに感心させられた視聴体験だった。とくにGold300-5Gの実力は抜きんでていた。本文では触れられなかったが、30cmドライバーがビルトインされたアクティブサブウーファーのGold W12-5Gも好製品、ハイレベルなベースマネージメント対応力を発揮してくれた印象だ。Gold100-5Gを4本とGold W12-5Gを組み合わせた4.1.4システムで『エンドゲーム』を観るのも一興かと思います。