本年度1月のCES 2019で発表されていた「360 Reality Audio」が展示されていたので試してみた。オブジェクトベースで制作された360度全天球型音場という新提案で、既存のサラウンドに、下部にも音源が配置される。
13ものマルチチャンネル音声から展開され、スピーカーを配置すれば再生も可能だが、全天球とするには足下にも配置しなくてはならない。今回はソニーのヘッドホン・イヤホンを使って視聴をしてみた。
ヘッドホンを使った仮想音場を実現させるためには、各ユーザーの耳の形状に合わせた補正が必要となる。なので最初に、専用アプリで自分の耳の画像を撮影する。そして使っているヘッドホンの情報と共にクラウドへ送ると、パーソナライズされたパラメーターが音源を再生するスマートホンに戻ってくる。ぼくの耳の形状に合わせた音の反射、聴覚特性がシミュレートされ、ヴァーチャルな「全天球」再生が可能となるのだ。
そしてこれは、既存のサラウンドヘッドホンとはまったく異なる音場だ。何よりも音のクォリティが高いため、音場が濃密なのである。「全天球」という言葉そのままに、宇宙の中に頭を突っ込んだような感覚(!)である。ハイレゾとはまた異なる上質な音楽体験だと言える。
この「360 Reality Audio」は既存の2ch音源ではなく、新たに「全天球」版ミックスを用意しなくてはならず、アーティストの賛同、音楽配信インフラなど、多くの協力を乞うていきたいという。
突飛な発想の仮想音場かもしれないが、ヘッドホンと再生アプリがあれば(さらに詳しく言えば、エンコードはMPEG-H 3D Audioなので、デコードに対応する機器があれば)、容易に再生が可能である。プラットホームが共有できるのなら、これはもしかたら「あり」かもしれない。それほど今回のデモ視聴の完成度は高いものであった。