上白石萌音と山崎紘菜をW主演に迎え、日本初となるスタートアップ(起業)をテーマに製作された映画、その名も「スタートアップ・ガールズ」が、9月6日(金)より全国公開される。

 上白石と山崎が演じるのは、まさに対照的な性格の小松 光(上白石)と南堀希(山崎)であり、スタートアップに向けて二人が描き出すコントラストを、素敵な音楽で包み込んだ楽しい1作でもある。その二人にインタビューした。

――『スタートアップ・ガールズ』は、日本で初めて“スタートアップ”をテーマにした映画です。最初に企画を聞いた時の感想を教えていただけますか?

上白石萌音 “スタートアップ”という言葉は、このお話をいただくまで私もまったく知りませんでした。スタートというぐらいだから何かを始めるんだろうなという認識しかなかったんですが、この機会にいろいろなことを知りたいと思って情報を集めてたくさんの方にお話をうかがいました。スタートアップを知っている方はまだ少ない現状だと思いますが、映画というエンタメで何か新しい風を吹かせることができたらと高揚したのを覚えています。この映画のストーリーも若い方を刺激するだろうなと思いました。

山崎紘菜 私もスタートアップについては知りませんでした。スタートアップに関わっている人がいること、学生でもできるということを知らなかったので、お話をいただいたときは新しい世界の扉の前に立っているような気持でした。その責任というか作品のテーマが大きすぎて、扉を開けるのが怖いような一方で、ドキドキワクワクするような気持ちにもなりました。

――上白石さんと山崎さんは2011年の第7回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞なさっています。同志というか……

山崎 そうですね。

――強く結びついているお二人が、ここではあえて対照的なキャラクターを演じて、大喧嘩をしたりする。友人だからという妥協もなく、ガチでやりあっているのが痛快でした。

山崎 相手が萌音ちゃんだからこそできたと思っています。これまで培ってきた関係性があるからこそ、本気でぶつかれた。

上白石 私が演じる光って、本当に他人に失礼極まりない態度をとるんです。だけど紘菜ちゃんだと、遠慮せずに、本当に光になりきることができる。ふたりで積み重ねてきた時間がなければ、もっと遠慮して演技してしまっただろうなと思います。紘菜ちゃんなら何をやっても受け止めてくれるという確信があったので、伸び伸びとドンパチできました(笑)。現実では完全に支えあって、お互いに相談しあう関係なんですが、劇中ではとにかくハチャメチャにやろうと。実はなかなか二人とも省エネタイプで……。

山崎 私たち、エコなんですよ。地球にやさしいタイプ。

上白石 疲れることはしたくない、みたいな感じなんです。そんな私たちがいきり立って言い合うシーンが自分でもすごく新鮮で。作品でもなければこんなことないだろうなと思いますよ。そういう意味ではまた思い出の1ページが……(笑)。紘菜ちゃんとじゃなきゃ、できなかったなというのは本当にありますね。

――高橋泉さん(『ソラニン』『坂道のアポロン』等)の脚本も、スタートアップとは何かをとてもわかりやすく伝えてくれます。

山崎 扱っているテーマは仕事とか起業とかすごく難しいものなのに、なんでこんなに青春感があるんだろう、さわやかで疾走感ある映画になるんだろうってすごく驚きました。それは脚本の力だなあと改めて思います。

上白石 力のある言葉が多いなと感じました。決して大げさだったりドラマティックな言い回しではないのに、なんか響く。言葉がすごくサラッと書かれていて、粋だなと思いました。サラっとした中に、深いところがあって、演じる側としても勉強になりました。この作品の根底に流れている社会問題はむちゃくちゃリアルなんです。遠隔医療とか保育園の問題とか、そういうところを決して前面に押し出すことなく、でも(脚本を)読み終わったあとにふと考えさせられるところがある。光のような現実離れしたハチャメチャなキャラが登場しても、ガチッと地に足が着いた内容になっているんです。

――クセの強い天才肌の光と、堅実で常識人の希。役柄を演じる際に特に心がけた点は?

山崎 “普通の人ってなんなんだろう”っていうことをすごく考えさせられた役柄でした。希は安定志向で、ハチャメチャな光という天才に振り回される役というか。私は、普通の人というのはこの世に存在しないと思っているんです。みんな普通じゃないし、みんな個性がある。選ぶ洋服だったりとか食べるものもひとりひとり違うわけで、その中で“普通でいる”ということを考えて役に臨みました。

上白石 私は今回ロジカルに攻めました。スタートアップとは何ぞやというところから勉強を始めて、先ほどお話ししたように本を読んだり若手起業家の方にお話をうかがったり。IT、医療、保育の現実もなかなか知らなかったのでそのリサーチもすごくしました。光は役柄上、プレゼンをするシーンが多いんです。彼女がプレゼンで発する言葉のひとつひとつに実感と理解と説得力を持たせたい。それは強く意識しましたね。そして遊びのあるシーンではウワーッと遊んで。その振れ幅の大きさを面白く感じてもらえたら嬉しいですね。「光ってこんな奴だけど、意外とちゃんと考えているんだな」って、そこが彼女(光)の魅力になればいいなと思います。

――映画のラストでは光が、何かから解放されたかのようなおたけびをあげます。いろんな想像をさせてくれるシーンですが、その後の光がどうなっていくのか、上白石さんはどう思いますか。

上白石 ひとつの仕事が軌道に乗ってしまった。それは大抵の人にとってはゴールであり達成なんですけど、光にとってはつまらないことなんです。もう次の新しいアイデアを思いついている。これからも新しい事業を立ち上げていくんだろうな、そしてひとに渡していくんだろうなと思います。私は「光って、たくましいな」と思いながら雄たけびをあげていました。

――今後、光の髪型は普通になっていく?

上白石 もっとすごくなるんじゃないですか(笑)

――希はラストシーンのあと、どうなると思いますか?

山崎 多分、希の中での堅実なところは変わらないと思うんです。だけど、これからは希の中にちっちゃい光が常にいる感じになるんじゃないかなと思ってて。光という存在が希に新しい概念をくれたんですよ、私の想像ですけど。希が仕事をしているときに、“こんなとき、光だったらどうするんだろう”という考えが彼女の中でできるようになっていくと思うんです。もしかしたら次のプロジェクトは光と一緒にしないかもしれないけれど、光からもらったものは彼女の中で残り続けるんじゃないでしょうか。

上白石 忘れた頃に新事業を持ってくるかもしれないですよね、光は。「また持ってくるよ」って言ったまま、ぜんぜん連絡がなくて、何年かたって「久しぶりー」って会いに来る。

山崎 そのときは希以上に、めちゃくちゃ保守派になってたりして(笑)

――上白石さんと山崎さんの共演作をもっと見たいという気持ちになりました。

上白石 今度は、私は紘菜ちゃんに逆にこき使われたいんですよ。

山崎 私もひっくり返した役をしてみたい。

上白石 あこがれてついていく子分みたいな。

――シリーズ化してほしいです。「トムとジェリー」のように。

山崎 それはかわいいですね。

上白石 でも、ぺちゃんこにならなきゃいけない。(※トムもジェリーもよく変形する。上からアイロンが落ちてきたらアイロンの形になったり)

山崎 そこは体を張って。

上白石 前からアクションをやりたいと思ってたんですけど、それも盛り込めますね。

――では最後に改めて、『スタートアップ・ガールズ』の見どころをお願いします。

上白石 スタートアップをすごく身近に感じられる映画だと思います。“すごく身近なところにヒントやフックがある、あとはそれを拾うか拾わないかだよ”というメッセージもあるように感じます。音楽も素敵なので、ぜひそこも楽しんでいただけたら嬉しいですね。柔らかい気持ちで見に来ていただけたらと思います。

山崎 いろんな人にスタートアップという新しい世界を知っていただけると嬉しいです。あとは主人公ふたりの対照的な個性ですね。光の強烈な個性と、それに振り回される希の疾走感。アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)さんやXAIちゃんの音楽のパワー。いろんなものがまざりあってすごくいい化学反応が起きているので、それを感じてもらいたいなと思います。

テキスト:原田和典

映画「スタートアップ・ガールズ」

9月6日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

<キャスト>
上白石萌音 山崎紘菜
大西礼芳 長田侑子 沖田裕樹 三河悠冴 / 山本耕史

<スタッフ>
監督:池田千尋
脚本:高橋泉
配給:プレシディオ
企画・製作:KM-WWORKS
(C)2018 KM-WWORKS Ltd.,All rights reserved.

http://startup-girls.jp/
https://kamishiraishimone.com/
https://www.toho-ent.co.jp/actor/1097

<上白石萌音>
スタイリスト:嶋岡隆(OfiiceShimarl)
ヘアメイク:冨永朋子(アルール)

<山崎紘菜>
スタイリスト 三浦真紀子
ヘアメイク:鎌田順子(JUNO)