ワーナー・ブラザース テレビジョン & ホームエンターテイメントは、海外TVシリーズ「倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道」を9月11日(水)よりブルーレイ&DVD発売、DVDレンタル、デジタル配信を開始する。

 「倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道」は、『マーシャル・ロー』の脚本を担当したローレンス・ライトによる、ピュリッツァー賞受賞のノンフィクション小説を初映像化、アメリカ同時多発テロ「9.11」を題材に、テロに至るまでの経緯と、FBIとCIAとの間にある確執を重層的に描きだした社会派作品となっている。

 「倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道」には実在の人物と、実在の人物をモデルとした架空のキャラクターが登場する。FBIニューヨーク支局 対テロ部門「I・49」部門長として活躍し、悲劇的な運命をたどるジョン・オニール(演:ジェフ・ダニエルズ)、アレック・ボールドウィンやピーター・サースガードスターらスターが演じる重要人物は、一般的にもよく知られている。だが現実でもドラマにおいても、非常に重要な役割を果たしているにもかかわらず、よく知られていない人物。それが『ある過去の行方』や『ダゲレオタイプの女』など国際的に活躍するフランス人俳優のタハール・ラヒムが演じるアリ・スーファンだ。

 スーファンは、ドラマの冒頭の1998年当時、イスラム教徒でレバノン系アメリカ人の新任FBI局員として、オニールの部下となる。アラビア語に堪能で、大学院で専門分野として研究したテロの知識を生かすべく、スーファン本人もテロチームを熱望していたという。劇中でも言及されているが、FBI職員1万人以上の中でアラビア語を話せるのは8人だけだった。当時25歳の若さで特別捜査官になるのは異例のことだったが、オニールはスーファンの能力を頼りに捜査を進めた過程がドラマでも描かれる。

 FBIを離れた現在のスーファンは、オニールについて「国家の安全を守る責任者という風格でカリスマ性に圧倒された」と語っている。オニールの仕事ぶりを間近に見続け、その期待と信頼に応える働きをしながら、最前線でアルカイダを追ったスーファン。実は近年テロ関連のニュースなどでその名前を目にする機会が増えている。IS(イスラム国)の弱体化の一方で、対立軸にあるアルカイダは近年ブランド力を強く打ち出し、勢力を盛り返しているからだ。誰よりもアルカイダに詳しいスーファンの実績は、今また過去と同じようなことが繰り返されようとしている現代にこそ注目すべき研究材料でもあるのだろう。

 一方で、9.11後のスーファンは正義の名の下には“何でもあり”の対テロ戦争に突入したアメリカのやり方に異を唱える存在でもあった。特にアブ・グレイブ収容所での拷問が内部からの写真で露見した際には世界的な非難を浴び、これらの拷問によって新たなテロリストを生み出してしまった事実からも目をそらすことはできないだろう。「違法な拷問はやめるべき」だと上司に訴えたスーファンは結局FBIを去ることとなった。ドラマでも描かれている2000年の駆逐艦「コール」事件の首謀者ジャマル・アル・バダウィから、拷問を使わずに巧みな話術によって自白を引き出したことからも、スーファンがいかに正しく優れた人材であるかがよくわかる。だからこそ、徹底してアメリカ側の暗部にフォーカスした作りの本作の中でも、終盤でテロリストたちを糾弾する人物がスーファンであることには大きな意味があるだろう。

 本作のクリエイターの一人であるダン・ファターマンはスーファンのことを「レバノン系のアメリカン・ヒーローで、イスラム教徒のアメリカン・ヒーロー」であり「真の愛国者」である形容する。スーファン自身はFBI時代を振り返り、自分のルーツに誇りを持ちつつ「自分の宗教や文化の枠には囚われなかった。人間としての僕だけだ」と語っている。9.11事件の後、見た目がアラブ系である、あるいはイスラム教徒であるというだけでテロリストを疑うという偏見を、映像作品が助長してきた面は多くのアラブ系俳優を筆頭に業界内外から指摘されている問題でもある。本作の作り手たちがスーファンの存在に今一度スポットを当てた意図からは、そうした問題に対する強い主張が込められているようにも受け取れるのだ。

執筆:ライター・編集者 今 祥枝

「倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道」
9月11日(水) ブルーレイ&DVD発売/DVDレンタル開始、デジタル配信開始
ブルーレイ コンプリート・ボックス(2枚組)¥11,818+税
DVD コンプリート・ボックス(2枚組)¥10,000+税
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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