今や大人気の完全ワイヤレスイヤホン。クリエイティブ・メディアからも、完全ワイヤレスタイプの上級モデル「OUTLIER GOLD」が7月から発売中だ。音切れを低減するTWS+のサポートや長寿命バッテリー搭載と、機能性をさらに高めたほか、頭内定位を解消し、ユーザーに最適化された自然なステレオ音響を実現する注目の新技術「Super X-Fi」にも対応となするなど、魅力を大幅に高めている。そんな注目のモデルを、実際に使ったインプレッションをレポートする。

完全ワイヤレスイヤホン
「OUTLIER GOLD」
オープン価格(販売は直販サイト・クリエイティブストア限定。オンライン直販価格¥12,800+税)

完全ワイヤレス型の弱点を克服した「TWS+」

 完全ワイヤレス型とは左右のイヤホンが独立し、ケーブルが一切ないタイプ。使い勝手の点でひじょうに優れ、現在もっとも人気の高いイヤホンだ。しかし、スマホとBluetoothで接続するだけでなく、左右のイヤホンもBluetooth接続するため、混雑した場所などでの電波障害を受けやすく、突然音が途切れてしまったり、片側のイヤホンだけ音が出なくなるといった、通信の安定性に欠けることが問題となっていた。

 OUTLIER GOLDでは、システムLSIにBluetooth5.0対応の「クァルコムQCC3020」を採用。左右のイヤホンがそれぞれスマホと無線接続できるTWS+(True Wireless Stereo Plus)」をサポートした。この技術は、通信途絶による音切れを大幅に解消し、安定した通信が行なえる機能だ。「TWS+」を機能させるには、サポートするスマホを組み合わせる必要があるが、本モデルでは「TWS+」を使わない状態でも通信の安定性が大きく向上しており、筆者所有のiPhone(TWS+非対応)との組み合わせでも、かなり安定した接続が行なえた。

イヤホンだけで14時間、トータル再生時間39時間の長寿命

 そして、カナル型のコンパクトなボディにバッテリーを内蔵するため、連続再生時間が短いという不満もあった。本体バッテリーに加え、充電ケースを併用することで10時間前後の再生ができるモデルが一般的だが、オーバーヘッド型やネックバンド型イヤホンに比べるとバッテリー寿命はまだまだ短い。そこでOUTLIER GOLDでは、イヤホン単体で14時間、充電ケースを併用すればトータルの再生時間が39時間となる大容量バッテリーを備えた。バッテリー寿命の問題もこれでほぼ不満のないレベルになったと言えるだろう。

イヤホンは収納ケースに磁石で固定される仕様

 このほか、IPX5の防滴仕様で、突然の雨や汗に濡れたときでも安心して使えるなど、完全ワイヤレス型イヤホンとして、充実した機能を備える。もちろん、音質についてもこだわっている。ドライバーユニットには、軽量で高い強度を備えた高性能グラフェン振動板を採用した5.6mmドライバーを搭載。Bluetooth伝送のコーデックも、SBCのほか、AAC、aptXもサポートし、より高音質での伝送が可能だ。

ユーザーに最適化した自然なステレオ再生が実現できる「ソフトウェアSuperX-Fi」に対応

 一番の特徴が「ソフトウェアSuper X-Fi」への対応だ。これは、OUTLIER GOLDと専用アプリの「SXFI App」の組み合わせで使えるもので、ユーザーに最適化した頭部形状プロファイルを作成し、スマホの音楽再生などでスピーカーでの再生に近い自然な音響を再現するもの。頭部形状プロファイルの作成も実に簡単で、「SXFI App」のプロファイル作成機能で、ユーザーの両耳、正面からの顔の写真を撮影するだけでプロファイル作成ができてしまう。画像認識技術とクラウド上に蓄積したデータベースから、瞬時に最適化されたユーザープロファイルが作成できるのだ。

SXFI Appについてはコチラ

 上記記事で紹介した、「Super X-Fi」専用DSPを搭載した「SXFI AMP」(ヘッドホンアンプ)、「SXFI AIR」(Bluetoothヘッドホン)などと異なるのは、「SXFI App」の音楽プレーヤー機能でないと、「Super X-Fi」の効果が得られないこと。パソコンや音楽再生プレーヤーとのBluetooth接続した場合も同様だ。また、「SXFI App」の音楽プレーヤー機能では、ハイレゾ音源の再生に非対応で、Spotifyなどの音楽配信サービスを利用する場合も「Super X-Fi」は使えなくなる。

 このように、専用DSPを備えたSXFIシリーズと比べるとやや制限はあるが、ヘッドホンにありがちな頭内定位を解消し、自然な音響を楽しめる「Super X-Fi」を手軽に体験できるのはありがたい。使い勝手に優れた完全ワイヤレスイヤホンの魅力を大きく高めるものと言っていい。

さっそく、iPhoneを使って音楽を聴いてみる

 では、いよいよOUTLIER GOLDの実力を確かめてみよう。まずはiPhoneとBluetooth接続してみた。iPhoneには、あらかじめ「SXFI App」をインストールしてあり、ユーザープロファイルも作成済み。自分の両耳と正面の顔の撮影はひとりで行なうのは少々難しいので、友人などに頼むといいだろう。

「SXFI App」のメニュー画面。一番上の「ミュージックを参照する」が音楽プレーヤー機能。「パーソナライズする」でユーザーのプロファイル作成が行なえる

ヘッドホン選択の項目もあるが、OUTLIER GOLDは対応モデルなので、接続すると自動的に設定が行なわれる

「パーソナライズする」の画面。画面の指示に従って、右耳、正面の顔、左耳の順で撮影する。作業自体はとても簡単だ

 あとは、メニューにある「ミュージックを参照する」を選択すると音楽プレーヤー機能が呼び出される。iTunesで作成したプレイリストやアルバム/アーティスト/ジャンルなどでの表示が可能で、使い勝手は一般的な音楽プレーヤーアプリと変わらない。

 試しに音楽を再生してみると、直販価格で12,800円(税別)の完全ワイヤレス型イヤホンとしては、なかなか優秀な音だとわかる。Bluetooth接続なので、音の細かな再現性などはやや物足りない部分もあるが、ロッシー圧縮による音質の劣化、高域が荒れたり、音の余韻が失われた痩せた感じの音は気にならず、厚みのあるしっかりとした音に仕上がっている。ボーカルも声の強弱のニュアンスがしっかりと出るし、中低域が充実しているので声の力強さも不足はない。

プレイリストを表示した状態。このあたりの操作感は一般的な音楽プレーヤーアプリとほぼ同じだ

 そして、プレーヤーの再生画面にある「Super X-Fi」のアイコンをタッチすると、「ソフトウェアSuper X-Fi」がオンになる。するとイヤホンから聴こえてくる音楽のステージ感がガラリと変わる。音場が頭の外にまで広がり、ステレオイメージがぐっと豊かになる。もちろん、いわゆるバーチャルサラウンドのように電気的にステレオ感を強調しているわけではないので、不自然な感じはなく、イヤホンを装着していることさえ気にしなければ目の前にあるスピーカーから音が出ているような感じに近い聴こえ方になる。

 また、ステレオイメージが広がってもぼんやりと音場が拡大するのではなく、むしろ個々の音の定位感や音色の明瞭度はさらに鮮明になる。音質的にも最適なバランスに補正されるようで、「ソフトウェアSuper X-Fi」オフでは中低域が充実したバランスだったが、オンにするとフラットなバランスで明瞭度の高い聴こえ方になる。このため、細かな音までよく鮮明に聴くことができる。「ソフトウェアSuper X-Fi」を使うと、ひじょうに自然で豊かなステレオ再生になるし、音の粒立ちや個々の音の再現性も向上するなど、よりHiFiな音になると感じた。この状態の音だと、音質的な実力は1クラス上のモデルに迫るくらいのものになる。

接続安定性もなかなか良好で、邪魔にならない適度なサイズも使い勝手がいい

 家の中でじっくりと聴くだけでなく、外出時にも使ってみた。安全のため音量は控えめにしているが、「ソフトウェアSuper X-Fi」が明瞭度の高い音になので、小音量でもあまり不満は感じない。音の聴こえ方が自然なので、1時間ほどの電車の移動の間ずっと聴いていても、聴き心地がよく聴き疲れもしない。

 肝心の接続の安定性は、駅のホームの中など、混雑した場所では音が途切れることもあった。しかしその頻度は昨年発売された完全ワイヤレスのモデルに比べると圧倒的に少なく、ほとんど気にならないレベルだ。クァルコムの「TWS+」をサポートしてないiPhoneで使っていても基本的な接続の安定性がかなり向上していることがよく分かった。

 基本的な音質もネックバンド型やオーバーヘッド型と比べて差を感じないレベルとなり、このレベルの実力ならば、自分も日常遣いできると思った。人気の高い完全ワイヤレス型だけに、日進月歩で音質や使い勝手が進歩していることが体感できた。

 大人気の完全ワイヤレス型イヤホンは、数多くのメーカーから登場してきているが、ハードウェアの改善も進み、いよいよ買い時になったと思う。音質や音切れ、バッテリー寿命などの難点で敬遠した人はぜひとも試してみてほしい。手頃な価格で「ソフトウェアSuper X-Fi」も体験できるOUTLIER GOLDは、有力な候補となるはずだ。