今年5月に発表されたものの、なかなか発売されなかったHUAWEI製スマートフォン「P30 lite」が、8月に入ってソフトバンクや楽天モバイルなどから次々リリースされている。

HUAWEIのスマートフォン「P30 lite」を、音楽プレーヤーとしてのみ使ってみた

 約6.15インチの大型ディスプレイを搭載し、アンドロイド9をベースにしたOS(EMUI9.0)を採用。64Gバイトのメモリーも内蔵するなど、3万円台前半で販売されているとは思えないほどのスペックだ。

 さらに興味深いのが、P30 liteはハイレゾ音源の再生にも対応しているという点だ。ただし同社のサイトなどを調べてみても、ハイレゾ再生にはHUAWEI音楽プレーヤーと別売のハイレゾ対応ヘッドホンが必要と書かれているだけで、対応するフォーマットや周波数等の記載はない。

 またP30 liteにはUSB Type-C以外に3.5mmのヘッドホンジャックが装備されており、ハイレゾを聴くならこれを使うことになるはずだ。しかしネットで調べてみてもどんなDACチップを使っているかなどの詳細が出てこない……。

 なんてことをもやもや悩んでいても仕方ないので、今回はこのP30 liteを借用し、ハイレゾ対応オーディオプレーヤーとしてどれくらい使えるのかを検証してみた。

P30 liteにはUSB Type-Cコネクターと3.5mmのヘッドホンジャックが装備されている(左)。拡張メモリーとしてマイクロSDカードも取り付け可能(右)

 とその前に、P30 liteには有線イヤホンが付属しているけれど、先述したようにこれはハイレゾ対応ではない。ということで、今回は組み合わせるイヤホンを探さなくては……と考えていたら、P30 liteで音楽を聴くなら、これも試して欲しいということか、同じくHUAWEIのBluetoothイヤホン「Free Lace」もセットで貸し出されてきた。

 Free Laceは9.2mmダイナミック型(超薄型TPU+チタンメッキのハイブリッド振動板)ドライバーを内蔵した首掛けタイプ。ケーブル右側のスイッチ部にUSB Type-Cコネクターが内蔵されていて、これを同社製のスマホに挿すと、それだけでペアリングが完了するというもの。もちろんここから充電もできる(フル充電で18時間の連続再生が可能)。

 ただし、Free LaceのBluetooth対応コーデックはSBCとAACで、ハイレゾ伝送をそのまま伝送はできない。ここはちょっと勿体ないかな? とはいえせっかくなので、まずはP30 lite+Free Laceの組み合わせで使ってみることに。

HUAWEIのBluetoothイヤホン「Free Lace」も試した

 その前にP30 liteに音源をインストールする。今回はマイクロSDカードに音楽データを保存したが、P30 liteはダブルカードスロットを備えており、最大2枚のSIMカード、または1枚のSIMカードとマイクロSDカードが装着できる。そこに32GバイトのマイクロSDカードを取り付けている。

 マイクロSDカードを装着したP30 liteをiMacにつなぐと、オリジナルアプリの「HiSuite」をインストールするように表示される。このHiSuite経由でP30 liteとデータのやりとりを行なうようだ。

 HiSuiteからSDカードにアクセスし、「Music」フォルダーを作って音源をドラッグ&ドロップすると、すぐにコピーがスタート。なんともあっけなくハイレゾやMP3のファイルが保存できた。操作は直感的で簡単!

 ここから楽曲再生。Free Laceとペアリングできていることを確認して、P30 liteの「音楽」アプリを開き、楽曲を選ぶと再生が始まった。その際P30 liteの内蔵メモリーとSDカードの区別はなく、すべての楽曲データが画面上に同列に表示されるので、使い勝手もいい。ジャケットアートもきちんと表示されている。

 さてFree Laceの音質はいかに? その第一印象は“気持ちいい音”というもの。ロックやクラシック、国内外の女性ヴォーカルなど懐かしめの楽曲を中心に聴いてみたが、どれもすっと耳に入ってくるし、英語、日本語を問わず歌詞が聴き取りやすい。

ケーブル右側にUSB-Type-Cコネクターが内蔵されており、充電はここから行なう仕組。このコネクターをP30 liteに差し込んでもいいし、USB Type-Aとの変換アダプターも付属している

 またFree Laceは、首掛け部分がやや太めになっており、左右のコネクターから手前はフラットケーブルという構成になっている。しかも首掛け部分の長さにゆとりがあって、装着時の安定性が高いので、タッチノイズもまったく気にならない。個人的にタッチノイズが嫌なので、歩きながらイヤホンを使わないことが多いのだが、Free Laceではそんなこともなかった。

 ただし聴きやすい音な反面、情報量的には少し物足りない点もある。どのジャンルでも全体的にまろやかな音づくりで、高域もさほど伸ばしている印象はない。ドラムスの低音はあっさりになるし、ピアノや女性ヴォーカルの高音もすっと消える印象で、伸びや押し出しがもう少し欲しい気がする。

 とはいえそれがFree Laceの狙いであって、高域や微細な情報の再現はそこまで欲張っていないということだろう。ヴォーカルを中心としたバランスで、ぱっと聴いたときに耳馴染みのいい音が楽しめる、そんな音を志向しているのは間違いない。通勤・通学で心地よく音楽を聴きたいという方にはFree Laceは好適なチョイスになりそうだ。

 なおBluetoothの接続がちょっと不安定なのか、音が途切れることがままあった。P30 liteとの相性かも知れないが、ここは改善して欲しい。

ファイナルのハイレゾ対応イヤホン「B1」(左)と、B&OのBluetoothイヤホン「E6 Motion」(右)。それぞれで持ち味の異なるサウンドを聴かせてくれた

 では、イヤホンを変えたらP30 liteでどんなサウンドが楽しめるのだろう? まずはひとつ上のワイヤレスということで、aptXに対応したB&Oの「Beoplay E6 Motion」とつないでみる。設定メニューで確認すると、画面上にペアリングされたデバイスとして「E6 Motion」と「aptX」という文字が表示された。

 その音は、素直に音場が広がって、ほどよくワイドレンジ化されたといったところ。もちろんイヤホンとしての音の狙いも違うし、Free Laceは市場想定価格¥9,000前後、E6 Motionは直販価格¥29,800(税込)と3倍近い価格差もあるので、単純に比べても仕方ないのだけど、音楽的なニュアンスはE6 Motionの方が豊かに感じられる。女声ヴォーカルの余韻感もあり、音の消え際まで自然だ。

 ワイヤレスによる音の違いがあることも確認できたので、いよいよハイレゾ音源を聴いてみる。ハイレゾ対応を謳うファイナルの有線イヤホン「B1」をP30 liteにつないで、試聴をスタート。

 48kHz/24ビットの日本ポップスや、96kHz/24ビット&192kHz/24ビットのクラシック(すべてFLAC)を聴いてみると、やはり音の数、微細な表現に違いが出ている。音楽が鳴っている空間がひとまわり広いし、情報量も増えて、当然ながら音場が緻密だ。

 ただ正直なところ、96kHz/24ビットと192kHz/24ビット音源の違いをしっかり聴き分けることはできなかった。どちらも先述した印象の通りで、低域感などにも不満はない。ハイレゾとして“いい音”だと感じた次第だ。

P30 liteにFree Laceをつなぐと、自動的にBluetoothの認証が行なわれる(左)。右はペアリングの確認画面。E6 MoitonはちゃんとaptXで接続されていた

 ちなみにFLAC以外の音源としてWAVやDSD(dsf)も試してみたところ、WAVでは192kHz/24ビットや384kHz/32ビット音源も再生できた。ただ音質差は微妙で、どこまでがネイティブ再生なのかは正直わからない。DSDに関しては、アプリ画面上にファイルが表示されず、再生できなかった。

 そこでこれらの経緯をHUAWEIサイドに説明し、P30 liteの詳細を確認してもらった。その結果、P30 liteのハイレゾ再生は96kHz/24ビットまでの対応で、DACは同社が開発した独自のチップを使っているそうだ。つまり192kHz/24ビットや384kHz/32ビットのデータは内部で96kHz/24ビット信号に変換していたということ。どうやら試聴時の印象が正しかったようで、個人的にもひと安心です。

 ちなみにこのことを踏まえたP30 liteの使いこなしポイントは、本機にハイレゾ音源を保存する場合には96kHz/24ビットソースを選ぶ方がいいということ。限られたメモリー容量を活かしつつ、いい音を楽しむ際の参考にしてください。

 というわけで、今回ワイヤレス2種類と有線タイプのイヤホンで色々な音源を聴いてみて、P30 liteが音楽プレーヤーとしてもなかなか使えることが確認できた。イヤホンそれぞれの音の違いもきちんと再現したことから、プレーヤーとしても素直な音を出力しているのではないだろうか。ハイレゾのパフォーマンスもきちんと楽しめたし。

 また内蔵バッテリーの持ちがよかったことも、プレーヤーとして使う場合に見逃せないポイントだろう。今回は1日2〜3時間プレーヤーとして使っているが、1週間に1回充電しただけでまったく問題はなかった。(取材・文:泉哲也)

専用アプリの「HiSuite」をiMacにインストールしてみた。画面を開いてフォルダーにドラッグ&ドロップするだけで音源のコピーが完了するので、とても簡単