マッキントッシュは得意とするアンプ群のみならず、デジタルオーディオ機器の開発にも注力している。ここで紹介するMCT500は、SACD/CD再生に対応しUSB入力を備えたハイレゾ対応デジタルトランスポート。本機の試聴にはデジタルプリアンプと呼ばれる同社D/AコンバーターのD150を組み合わせて聴くことにした。信号伝送には、専用のミニDIN端子ケーブルを使用している。

マッキントッシュ MCT500 ¥650,000(税別)
●対応ディスク: SACD、CD、CD-R&CD-RW(MP3、WMA)
●デジタル出力:RCA同軸、TOS光、XLR(SPDIF/PCM)、Digital MCT(SPDIF/PCM、DSD/SACD)
●寸法/重量:W445×H152×D416mm/11.8kg ●備考:リモコン付属

SACD/CDトランスポートである本機は、通常のSPDIF出力(CDレベル)のデジタル出力としてRCA同軸、TOS光、AES/EBU(XLR)の3出力を持つ。SACD(DSD)信号のデジタル伝送は独自のMCTデジタル出力を装備する。また、他のマッキントッシュ製品との電源オン/オフの連動が可能なパワーコントロール入出力端子も備える。

10キーを備えた付属リモコン。

 SACD対応のディスクドライブはD&M製である。かつて傘下企業だったこともあり、マッキントッシュは早くからD&M製ドライブを使いこなしてきた。金属製トレイを備える本機のドライブメカは、ディスクの回転に高トルクのブラシレスDCモーターを採用したことが特徴。信号デコード(復調)基板に使われているLSIは、メディアテック製だ。

シャーシ中央部にディスクドライブを配した本機の内部。左後部に電源部を置き、電源トランスにはフラックスの少ないRコア型を採用する。

 前面にあるUSB(A)端子に音源を格納したメモリーを挿すことで、MCT500はデジタルファイル再生も可能にしている。これは最近の同社製プレーヤーにも採用され始めた、なかなか便利な新機軸。ファイル名や曲名が半角英数字や記号の場合はディスプレイに文字情報が表示されるが、日本語などの2バイト文字は表示できないので注意しておきたい。出力可能なデジタルファイルは、192kHz/24ビットまでのPCMとMP3、そして5.6MHzまで対応のDSD(DSD128)である。
 MCT500とD150の組合せは、本誌試聴室で聴いている。プリアンプとパワーアンプはエアータイトで、それぞれATC5とATM3(モノブロック)。スピーカーシステムはB&W 800D3である。

D/AコンバーターD150との組合せは、鮮度の高い躍動的な演奏を堪能できた

 最初はCDから聴いた。山中敬三氏が選曲した『ステレオサウンド・リファレンスレコードVol.2』のショスタコーヴィチ交響曲第5番(第2楽章)は、細部まで鮮明な現代的というべき音を奏でることに感心。これはD150が搭載するESS製DAC素子(ES9016S)の音質傾向なのだけれども、続いて聴いたバーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)のミサ曲では、音場空間の深みと拡がりが得られた立体的な表現に惹かれた。トランスポートとして高い能力を有していることが伺える一面である。SACDはグレイト・ジャズ・トリオ『ブルー・マイナー』(廃盤)を聴いたが、切れ込み鋭いシンバルレガートや鳴りの豊かなドラムヘッドの質感、そして打音が明確なピアノの響きなど、DSD録音らしい鮮度の高い躍動的な演奏が堪能できた。

デジタルプリアンプ マッキントッシュ D150 ¥400,000(税別)
●デジタル入力:RCA同軸、TOS光、USB、MCTデジタル
●デジタル入力サンプリングレート:192kHz/24bit(RCA同軸、TOS光)、SACD(MCTデジタル)、384kHz/32bit、 DSD128、DXD384(USB)
●寸法/重量:W445×H98×D357mm/6.1kg

 持参したUSBメモリーからのハイレゾ音源も、やはり秀逸な音。ネルソンス指揮のショスタコーヴィチは重厚さを際立たせた音調が自分が記憶するイメージにきわめて近く、ワイドレンジで丁寧な音の構築が好ましい。
 トランスポートとDACという役割分担は、一体型機を超える高品位な音の獲得に有利。DAC内蔵の同社製アンプとも組み合わせたい、魅力的なハイレゾ対応トランスポートだ。  

ディスクの他、USBメモリーに収めたハイレゾ音源の音質を確認する三浦氏。

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