ROKSAN
INTEGRATED AMPLIFIER
BLAK INTEGRATED AMPLIFIER(写真:左)
¥550,000+税
●出力:150W×2(8Ω)、230W×2(4Ω)●接続端子:アナログ音声入力4系統(XLR、RCA×3)、フォノ入力1系統(MM)、デジタル音声入力1系統(USBタイプB)●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜192kHz/24ビット(PCM)、〜5.6MHz/1ビット(DSD)●備考:バランス入力HOT=2番ピン、Bluetooth対応(SBC、aptX)●寸法/質量:W440×H140×D309mm/14kg
CD PLYAER
BLAK CD PLAYER(写真:右)
¥500,000+税
●再生可能メディア:CD●接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、デジタル音声出力3系統(同軸、光、AES/EBU)●寸法/質量:W440×H140×D309mm/8.2kg

 

密度感が高く、力強い。ロクサンの集大成コンビ

 CDがデビューしてしばらくののち、ロクサンはザクシーズというアナログプレーヤーで登場している。世の中がデジタルオーディオまっしぐらという時に、彼らはアナログオーディオに心を砕いた製品をリリースして世のオーディオファンをあっと言わせたのである。その後アンプの分野にも進出し、素晴らしい製品を作り上げた。ぼくもかつてはユーザーだったのでその実力は充分に認識している。

 同社のオーナーだったトゥーファン・ハシミ氏の勇退に伴ない、彼は同じ英国内で事業を引き継いでくれる企業を探していたそうだが、その意を受けたのがモニターオーディオだったのである。そして誕生したのが、「ブラック」とネーミングされたCDプレーヤーとプリメインアンプである。

 CDプレーヤーの「ブラック」はロクサンの集大成とプレスリリースに記されている通り、これまでに彼らが培ってきたノウハウを結集したモノづくりがなされている。ドライブメカには信頼性の高い日本製のCD専用メカを採用し、これに万全の振動対策を施した。DACにはTI社製のPCM1798を用いてダイナミズム溢れるサウンドの再現を目指している。加えて、パーツには吟味したハイクォリティなコンデンサーや抵抗類を取り入れていることも特徴だ。また前面のパネルには8㎜厚のアルミ板を装着し高級機らしい風格を醸し出す。

 プリメインアンプの「ブラック」はL/Rchを左右対称にレイアウトした基板を使い、S/Nとセパレーションを確保している。プリアンプ部とパワーアンプ部にそれぞれ独立したトロイダル型の電源トランスを配して、相互の干渉を防ぐとともにローレベルの再現力の向上を図っていることも特徴だ。出力段にはMOS-FETのパワーデバイスを用いて直線性を高め、左右独立した大型のヒートシンクにマウントすることで安定した動作を実現した。

 またこのモデルには、単体機に匹敵する能力を持つUSB DACが搭載されていることも嬉しい。ハイレゾ再生については192k㎐/24ビットのリニアPCM、5.6M㎐までのDSDに対応する。フロントパネルはCDプレーヤー同様に8㎜厚のアルミ材を採用している。

↑プリメインアンプにはUSB DACを含むデジタルセクションを搭載。もちろん、ハイレゾ再生が可能だ

↑CDプレーヤーはコンベンショナルな構成と言っていい。デジタル音声出力にはXLR(AES/EBU)端子も備える

S/Nの高さに作りこみのよさが表れている

 試聴は、パイオニアのUHDブルーレイプレーヤーUDP-LX800、モニターオーディオのスピーカーSTUDIOと、プリメインアンプの「ブラック」を組み合わせて行なった。まずはCDを聴いていこう。カレン・ソウサの『夜空のベルベット』をかけた瞬間、いい音だなぁという感触を得た。ヴォーカルがスピーカーの間に浮かび、ややハスキーな彼女の声を明るく描き出す。もう少し潤いがほしいとも感じたが、音の集中度というか密度感が高くバックコーラスとの階層感も巧みに再現してみせた。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルが演奏するブラームスの「交響曲第1番」では強靭な音を描き出しながらも弦楽器の音色のスムースさに感心させられた。高域にかけてのあばれが少なく、空間描写もなかなかリアルだ。S/N感の高さはこのモデルがしっかりと作り込まれたことの証といってもいい。

 ジェフ・ゴールドブラムのデビューアルバム『ザ・キャピトル・スタジオ・セッションズ』を再生してみても印象は変わらず、ゴージャスなサウンドを耳元へと運ぶ。スタジオセッションらしいライヴネスがあるし、打楽器類の音色にもニュアンスが宿っている。バランスの取れた表現ながらグルーヴ感をよく引き出すので、小川理子の『バルーション』では明晰にして豊かなタッチのピアノの音色を味わうことができた。

また、ハイレゾ音源を使ったUSB DACのサウンドにも力強さとスムースさが共存していた。

 さらにUHDブルーレイ『アリー/スター誕生』を2chシステムで視聴してみたが、音に力が宿っているので、映像にぴったりと寄り添う。ダイアローグはややドライな印象だが、シネマサウンドらしさを失うことはない。これならサラウンド再生をしなくても、充分に映画の世界に入り込める。またこのアンプのボリュウムコントロールは往年の上級アンプの感覚に似ていて、回す時の感触がいい。しかしながらディスプレイに表示される数値は2ステップ刻み。せめて1ステップの表示にしてほしかったとは思う。

 最後にCDプレーヤーを「ブラック」に入れ換えてそのパフォーマンスを確認してみた。するとどうだろう、試聴に使っていたスピーカーがまるで別物のように歌い出すではないか。これには正直驚いた。音の表情がさらに豊かになり低域にかけてエネルギーが充実する。躍動感が高まり、クラシックの楽曲ではオーケストラ編成がよくわかるほどにスケール感がアップしたのだ。

 もっともこれは使いこなしにも関わることだが、このプリメインアンプは若干寝起きが悪い。1時間程度のウォーミングアップで本格始動するので、この点はぜひとも気を付けてほしい。そうすれば歪み感の少ないクリアネスに富んだサウンドが味わえるはずだ。プリメインアンプ、CDプレーヤーともにやや懐かしい感じもする外観だが、音はともに密度感が高く、力強さを湛えている。「ブラック」はロクサンの志をモニターオーディオが形にした新しい製品なのだと思った。

↑左右対称を志向したプリメインアンプ内部。左右端に配されたヒートシンクに出力素子が載せられている。また、写真では見えないが100V専用としたトロイダルコアトランスは底面に備える

この記事が読める月刊「HiVi」2019年3月号のご購入はコチラ!