「第2回 4K・8K映像技術展」には、SoCの設計・開発、販売を手がけるソシオネクストもブースを展示、最先端の4K8K関連技術を多数展示していた。

8K映像のライブストリーミングのデモ。8Kカメラで撮影した映像をリアルタイムでHEVC圧縮・解凍してディスプレイに映し出していた

 その第一は、先般リリース発表されたストリーミングエンコーダー「e8」と、メディアプレーヤー「s8」を組み合わせた、8K配信のデモだ。

 e8はカメラなどで撮影した8K/60p映像をリアルタイムにHEVCで圧縮してLAN経由で配信するエンコーダーで、入力端子は12G-SDIが4本という仕様になっている。転送レートは60Mbpsから200Mbpsまで可能という。

 対となるs8は8K HEVCのリアルタムデコーダーで、LAN端子またはUSB端子から入力された信号を解凍し、HDMI2.0×4本の映像として出力する。

 e8とs8を組み合わせるとネット回線を使った8K配信ができるわけで、イベントでのパブリックビューイングやライブストリーミングも比較的簡単に可能になるだろう。ブースでは、会場内を撮影した8K映像をe8を使って80Mbpsの転送レートで圧縮・伝送、s8でデコードした画像を再生していたが、極端な遅れもなく、展示物のディテイルや人物の髪の毛の様子なども鮮明に再現されていた。

8Kエンコーダーの「e8」は、今年9月に発売される予定

 また同社ではHEVCの次の圧縮技術として注目を集める「AV1」(AOMedia Video 1)のエンコーダーにもいち早く取り組んでいる。

 AV1はインターネット上での動画配信を目的としたAlliance for Open Mediaが開発した動画圧縮コーデックで、ファウンディングメンバーにはアマゾンやアップル、Google、Intelなどが顔を揃えている。ソシオネクストは日本メーカーとして唯一プロモーターメンバーに参加しており、それもあってエンコーダーへの早期の取り組みが可能になっているようだ。

クラウドサービスを使ったAV1圧縮サービスという提案も

 今回の展示は、クラウドを経由したAV1エンコードサービスというもので、ユーザーが同社のX500Eなどを使って圧縮したい素材をクラウドにアップする。そのデータをクラウド上に準備したAV1エンコーダーで圧縮して、ユーザーに戻すという流れだ。クラウド上のエンコーダーは、FPGA(書き込み可能な集積回路)にプログラムをインストールしており、ハードウェア処理なので作業時間も短くて済む。またその内容は順次アップグレードしていくようだ。

 同社では今後AV1のエンコードが必要になる機会は増えていくはずだが、エンコーダーの処理が複雑なため、そうそう機材は出てこないと見ている模様だ。そこでまずはクラウドサービスでその要望に応えていこうという狙いだろう。

 会場では2K映像を使ったデモも行われていたが、MPEG4 AVC・4Mbpsの映像とAV1の1.2Mbpsの映像を並べてみても極端な差は感じられず、AV1のパフォーマンスの高さがうかがえる内容になっていた。

AV1では、ビットレートをMPEG4 AVCの3分の1に抑えても、極端な劣化のない映像が再現されていた

 またソシオネクストの新しい取り組みとして注目なのが、8K関連機器の評価用/デモ用映像制作サービス「8Kクリエイティブ・ソリューション」だろう。撮影から編集、パッケージングまで同社のスタッフが担当することで、最高品位の超高精細8K映像を提供するとしている。

 具体的には、撮影にシャープ/アストロデザインの「8C-B60A」を使い、撮影段階からノイズの少ない映像を収録できるように配慮した。さらにフォーカス合わせでも、画面内の複数箇所をドット・バイ・ドットに拡大・確認することで、精細感のある映像を実現したそうだ。

 また担当者のこだわりとして、画面内手前と奥に被写体を配置して8Kらしい自然な奥行を再現するように配慮しているという。

 既に「横浜中華街」「真珠の里」など4種類のコンテンツを揃えており、DPXファイルやHEVC圧縮したUSBなどの形で納品される。またソシオネクストでは、クライアントの要望に応じた新規コンテンツの作成も受け付けているそうなので、オリジナルの8K映像を探している方は問い合わせてみてはいかがだろう。

オリジナルの8K映像制作を請け負ってくれる「8Kクリエイティブ・ソリューション」も提案されている