力感に溢れた緻密で鮮烈な音。聴く者すべてに歓びをもたらす

 1980年の創業以来、ハイエンドオーディオの理念を堅持し続けてきたクレル(米国)から、ひじょうに興味深いプリメインアンプK-300i Digitalが登場した。出力段に至るまで全段ピュアクラスA動作を実現、そのA級動作のバイアス値を瞬時に最適化する同社独自の〈iBias〉回路に、出力段のインピーダンスを大幅に低下させる新技術〈XD〉が加えられている。天板から見える電源トランスは、思わずたじろいでしまうほどの巨大サイズ(直径17cm/771VA)。この本格アナログリニア電源回路とピュアAクラスの採用こそクレル本来の流儀である。

INTEGRATED AMPLIFIER
KRELL
K-300i Digital

¥1,450,000 +税
●出力:150W×2(8Ω)、300W×2(4Ω)●接続端子:アナログ音声入力5系統(XLR×2、RCA×3)、デジタル音声入力4系統(光 、同軸、USBタイプA、USBタイプB)、HDMI入力2系統、HDMI出力1系統、LAN1系統 ●寸法/質量:W438×H105×D457mm/23.6kg ●カラリング:ブラック(写真)、シルバー ●備考:Bluetooth対応、アナログ入力専用モデルK-300iは¥1,250,000+税
●問合せ先:アッカTEL. 03(5785)0661

 本機はデジタル入力基板を搭載しており、5.6MHz/DSDと192kHz/24ビットPCM対応のUSB(タイプA/B)、同軸/光のほかピュアオーディオ用アンプには珍しくHDCP2.2対応のHDMI入力が2系統用意されている(出力は1系統)。またネットワークオーディオ用のLAN端子も装備、ストリーミングサービスのTIDALやSpotify等に対応、Roonレディ仕様でもある。加えてaptX対応ブルートゥースやハイレゾファイルのサイズを小さくする新コーディング技術MQAへのサポートも見逃せない。内部を見たら、DACチップはESSテクノロジー社のES9028Proが使われていた(20万円安でアナログ入力のみのモデルもある)。

 HiVi視聴室にぼくの愛用スピーカーでもあるJBL K2 S9900を配置、まずアキュフェーズのSACD/CDプレーヤーDP750を用いてアナログ入力の音を聴く(XLRバランス接続)。鮮明さを強く印象づける陽性の闊達なサウンド。当初はエネルギーバランスがハイ上がりに感じられたが、30分ほど鳴らし込み、天板に触って「アチチ」と声が漏れるようになるとその印象は薄れ、凄みのある低音、厚みのある中低音が聴けるようになった。チンチンに熱くなってこそ本領を発揮するアンプなのは間違いなく、ラック内の狭い空間に押し込めるような使い方は避けたい。故障の原因になるからだ。

 次にフィダータのミュージックサーバーHFAS1とUSB接続して愛聴ハイレゾファイルをいくつか聴いてみた。総じてアナログ入力の音よりも好印象。全帯域にわたってみっちりと肉の付いた力感あふれる緻密な音で、そのヌケのよい鮮烈なサウンドは、聴く者すべてにハイレゾ・リスニングの歓びをもたらす。“歌えるジャズ・ドラマー”ジェイムソン・ロスの「ドント・ゴー・トゥ・ザ・ストレンジャー」(96kHz/24ビット)では、彼のヴォーカルが胸板の厚さを実感させるふくよかさで描写され、ピアノは粒立ちのよさと精密を際立たせ、ベースは実在感を伴ないながら低く深く伸びるイメージとなる。ひじょうにマニッシュでインテンシティの高い音といえるが、ぼくにはこの音調こそJ・ロスの音楽に相応しいと思える。

 LAN接続で、サブスクリプション型ストリーミングサービスTIDALのMQA音源も聴いてみた。エスペランサ・スポルディングやノラ・ジョーンズの新作(ともに96kHz/24ビット)を再生してみたが、J・ロスのハイレゾファイルで強く印象づけられた剛直さは影をひそめ、両歌姫のキュートでコケティッシュな歌声がなめらかに滋味深く彫琢されていく。表情の豊かさ、懐の深さこそがこのアンプのかけがえのない美点なのだと思う。ちなみに携帯端末による選曲操作はクレル推奨の汎用アプリ「Mコネクト」を使用したがやや不安定な面があり(サポートを謳ったQobuzは再生できず)、「フィダータapp」を併用した。

HDMI入力も優秀。
近来稀に見る面白い存在だ

 最後にHDMI接続をチェックしよう。パイオニアUDP-LX800と本機をHDMI接続、リピーター機能を用いてJVCの4KプロジェクターDLA-V7にUHDブルーレイの映像を出力してみたが、何の問題もなくスムーズに出画した。『アリー/スター誕生』をLX800で再生する。そのコクのあるサウンドはとても聴き応えがあり、ガガちゃんのステージ・シーンに一瞬のうちに引き込まれる。彼女の声に秘められた熱情が生々しく伝わってくるのである。本機にはAVセンターのL/R出力を受ける「シアタースループットモード」も用意されているので、サラウンド再生時はこのモードを使えばよいだろう。ハイエンド仕様の「わかったヒト向け」プリメイン。近来稀にみる面白い存在だ。

写真はブラック仕上げのリアパネル。HDMI入出力はHDCP2.2に対応。UHDブルーレイからの4K映像をパススルーすることを確認できた。また、HDMI出力はARCにも対応する。アナログ入力回路は完全バランス構成を採る

電源回路は、電力容量771VAの大型トロイダルコアトランスと総容量80,000μFの電解コンデンサーで構成。トランス横の大型のヒートシンクは、一定温度を超えるとフロントパネル側に設けた小型ファンで冷却を行なう。電力増幅回路はAクラスのアンバランス回路構成だ

クレルが推奨する操作アプリ「Mコネクト」(iOS)のライブラリ画面。TIDALやSpotifyといったインターネット配信やクラウド上やローカルサーバーの音楽をシームレスに選曲可能だ

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