映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第28回をお送りします。今回取り上げるのは、大人気キャラクターの最新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』。あの戦いを経て彼がどのように成長していくのか!? 風光明媚なロケ地の映像も含め、大注目の1作。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

【PICK UP MOVIE】
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
6月28日(金) 世界最速公開!

 アメリカよりも4日早い! 日本では6月28日から世界最速公開となる人気シリーズの最新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、期待を裏切らぬ面白さだ。大快調!

 サム・ライミ監督+トビー・マグワイアの旧3部作、ガールフレンド、グウェン役のエマ・ストーンがキュートで青春テイストが増量された『アメイジング・スパイダーマン』2本。それぞれにファンがいるだろうけど、主演がトム・ホランドに代わった新シリーズは、さまざまな楽しみ方ができる現在進行形のスタイルに整えられている。これが成功の要因だろう。

 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)でMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)入りして、『スパイダーマン:ホームカミング』で憧れのトニー・スターク=アイアンマンと共闘。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』を経て、『ファー・フロム・ホーム』という流れになる。そう、今回は“指パッチン”とそれから回復したあとの世界が舞台なのだ。

 ピーター(トム・ホランド)が恋心を寄せるMJ(ゼンデイア)、親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)、メイおばさん(マリサ・トメイ)らは今回も続投。題名の“ファー・フロム・ホーム”通りに、ピーターは地元ニューヨークから遠く離れてヨーロッパに修学旅行に出る。そこで事件に巻き込まれるのだ。

 居残り組の友情と冒険を描く『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。異次元から落ちこぼれヒーローが集まり、ハイタッチして別れてゆく『スパイダーマン:スパイダーバース』。そして誕生日を迎えたのに世界に居場所のない女の子のお話である『バンブルビー』と、このところ作り手から大好きだ光線を浴びまくり。80年代青春映画の巨匠、ジョン・ヒューズ監督由来の軽快なタッチがポップソングの挿入と相まって、スパイダーマンの世界を飾る。いいなあ、このリズムと日差し! 仲間との旅行日記である今回の新機軸だ。

 そこに「スタークの見込み違いだったのか。答えは自分で出せ」とニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)がプレッシャーをかけ、アイアンマンの良き理解者だったハッピー・ホーガン(ジョン・ファブロー)が助け船を出し、初登場の超人ミステリオ(ジェイク・ギレンホール)は「ヒーローもツライよな。いつも正しい選択を求められるし」と愚痴の聞き役に回ったりする。 

 あなたの親愛なる隣人(Your Friendly Neighborhood Spider-Man)の新冒険! そうだよな、パッチン後の世界はこうなっているよな、スパイダースーツ4種類も出てくるのかよ、ヴェネツィア、プラハと美しい現地ロケは観光映画! と楽しみ方はイロイロで、ここからホランド版スパイダーマンを見始めてもいいくらい。

 人は信じたいものを信じるのさという、フェイクニュースの時代を警告するメッセージもちょろりと入っている。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
6月28日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
監督:ジョン・ワッツ
原題:SPIDER-MAN:FAR FROM HOME
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2019年/アメリカ映画/2時間15分/シネマスコープ

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