映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第27回をお送りします。今回取り上げるのは、ホラーとタイムループを組み合わせた秀作『ハッピー・デス・デイ』。ヒロインの人物像に「いいキャラ作ったなあ」と久保田さんも絶賛の本作。とくとご賞味ください。（Stereo Sound ONLINE 編集部）
【PICK UP MOVIE】
『ハッピー・デス・デイ』
6月28日（金）より、TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
文化祭前日のドタバタがくり返される『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』、死ぬまでの8分間を反復しながら爆破テロ事件の真相を追う『ミッション：8ミニッツ』、死ぬたびに戦闘スキルが上がってゆくトム・クルーズ主演のSF『オール・ユー・ニード・イズ・キル』など、同じ時間がくり返されるタイムループ映画には快作が多い。どれも伏線の収束を考えた筋立てに工夫があるからだろう。傲慢男の恋の成就を描くビル・マーレイ主演のコメディ『恋はデジャ・ブ』も拾い物だった。
その切り裂きホラー版がコレ。男の部屋で目を覚まし、またやっちまったと自分に呆れるビッチなヒロインが、ナゾの犯人に刺殺される。悲鳴をあげて目覚めると同じ日の朝。そしたらまた来たよ、マスコット・マスクかぶったあいつが！
なぜ私を殺すの、とパニックになりながら、顔を見せろコノヤロ状態になった彼女の反撃が始まる。
ヒロインのツリーを演じるのは、『ラ・ラ・ランド』でエマ・ストーンのルームメイト（緑のドレスを着ていた子）に扮していたジェシカ・ロース。『イット・フォローズ』のマイカ・モンローなどホラー映画はケバ目女優の登竜門だが、この新人もイイ！ 何度も殺されるうちに少しずつ知恵をつけ、他人にも感謝の日々。パパとも仲直りしようかな。でもビッチ道は譲らない！ いいキャラ作ったなあ、この映画。
製作は『パージ』連作や『ゲット・アウト』など、低予算ホラーの人気作を連発して注目されるジェイソン・ブラム。米国では公開週に『ブレードランナー2049』に代わって興収第1位を記録するスマッシュ・ヒットを飛ばした。
同じスタッフ＆ジェシカ・ロース主演の続篇『ハッピー・デス・デイ2U』も、7月12日から日本公開。こちらはイケイケの本作に比べるとヒネリ過ぎたぶんチョイ落ちるけれど、ホラー映画ファンなら覗く価値あるだろう。ホラー好きはホラ、ぼくも含めて少々つまらなくても面白がる習性の持ち主だから。
往年のものだと、学園ホラー『スクリーム』（1996年）のポップ・テイストと似た楽しさがある。スリルと笑いをブレンドしたジェットコースター映画。オカネの代わりに頭を使えばこんな快作ができる！
『ハッピー・デス・デイ』
6月28日（金）より、TOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショー
監督：クリストファー・ランドン
原題：HAPPY DEATH DAY
配給：東宝東和
2017年／アメリカ映画／1時間36分／シネマスコープ
（C）Universal Pictures