次世代映像デバイス技術

同じ撮像デバイスを使い、電圧をかけた場合(左)と何もしない場合(右)で、受光した素子からどれくらいの信号を取り出せるかを比較していた。左は右に比べて10倍近い出力を得ている

 8Kという高精細な映像を撮影するカメラには、画素密度が細かく、かつ光の感度も高いという難しい要素を兼ね備えたデバイスが必要とされる。撮像パネルのサイズが同じ場合、解像度が増えると画素ひとつひとつは小さくなっていくわけで、それだけ感度は下がってしまう。技研公開では、そんなジレンマを解消する技術も展示された。

 まずは増倍膜積層型撮像デバイスで、もうひとつはより小型で高精細な単板カメラ用の有機膜積層型カラー撮像デバイスだ。

 倍増膜積層型撮像デバイスとは、結晶セレンを用いた光電変換膜(倍増膜)が、光を受けて生じた電荷を膜内で増やす“なだれ増倍“機能を持っていることを応用したものだ。倍増膜にかけた電荷によって増倍効果に違いがでてくるとかで、膜の構造や製造方法を検討して、現在では10倍の増感効果を実現しているという。

 有機膜積層型カラー撮像デバイスでは、RGBの光それぞれを電気信号に変換する有機膜と電荷を取り出すTFT回路を3層に重ねているのが特徴だ。これにより限られた面積でも効率よくRGBの光を取り出せるとしている。またTFT回路の微細化も進められ、画素ピッチは20ミクロンまで集積化が進んでいるそうだ。

超大容量ホログラムメモリー

ホログラムメモリーの原理。書き込みや読み出しといった光学系の仕組みはこれまでと変わっていない

 8Kのような情報量の多い番組をアーカイブしていくためには、これまで以上に大容量のストレージが求められる。そのひとつの手段として研究が進められているのがホログラムメモリーとなる。

 ホログラムメモリー自体はかなり古くから提案されており、技研公開でも何度となく展示されている。これまでのディスクメディアのように、盤に平面的に信号を記録するのではなく、ディスクの厚み方向にも複数の信号を記録し、参照光(書き込み時と読み出し時に使用)と組み合わせることで、一枚のディスクに2Tバイト(一層色ブルーレイの80枚分)もの容量を確保しようという技術となる。

 今回の展示では、ホログラムメモリーの構造や参照光を使った記録・読み出しといった光学系の構造はこれまでと同じだが、ディスクそのものに記録する信号を工夫している。

 具体的には、従来は白と黒のブロックで構成したQRコードのようなデータ(2値)を使っていたが、白・黒に加えて2種類のグレーを使った方式(4値)とすることで、ひとつのデータで記録できる容量が増えている。4値を使えば24×24ミクロンのデータの中に10ビット分の情報が収まるという。

 またこれだけ小さなエリアに信号を記録するため、読み出しエラーが発生する可能性もさけられない。そこでAIを使ったデータ復調も開発した。信号を読み出した後にニューラルネットワークを使ってその形状を解析、読み取りにくかったものであっても、かなりの確率で正しいデータを判別できるという。

 8K放送を家庭で録画・保存しようと思うと、現状ではHDDしかメディアはない。しかしHDDにず〜っと録画し続けるというのも、使い方としては悩ましい。StereoSound ONLINE読者のようなヘビーエアチェッカー(ですよね?)としては、ホログラムディスクの登場にも期待したいところではある。

記録するデータの構造を工夫することで大幅に記録容量をアップ。同時に読み出しエラーについても、AIを採用することでしっかり対策を行なっている