NHK放送技術研究所(通称技研)は、最新の研究成果を発表する毎年恒例の展示会「技研公開2019」を5月30日(木)より、砧のNHK放送技術研究所で一般公開する。それに先立つ5月28日にはプレス向けの内覧会が開かれ、今年のテーマや、展示内容、みどころ紹介が行なわれた。

 冒頭、NHK研究所所長の三谷公三氏より、今年度のテーマとなる「ワクからはみ出せ、未来のメディア」が紹介され、展示内容として24項目の研究成果一覧が発表された。曰く、8Kスーパーハイビジョンは昨年末より本放送が開始されており、それを受け、2030年代には自然な立体映像が楽しめる「空間像再生型3Dテレビ」を、それより先の2030~40年代へ向けては、さまざまなデバイスと、8K、VR、AR、MRといった各種テクノロジーを融合させ「映像を体感、共有できるシステム/メディアへと進化させる“ダイバースビジョン”を実現させたい」と今後の抱負を語った。

将来は映像が飛び出してきたり、立体に見えたり、触覚も楽しめるようにあるだろう、というイメージ紹介

NHK放送技術研究所 三谷所長

 今年はその実現へ向け、大きく3本の柱「リアリティーイメージング」「コネクテッドメディア」「スマートプロダクション」を軸に、先述したとおり24の項目でさまざまな技術展示を行なっている。ちなみに、氏のおススメはブース8、9、10だそう。

E2 高精細VR映像

▲将来のダイバースビジョンを実現する各種映像表示機器のイメージ

 技研の掲げるダイバースビジョンの形態として、大昔の美容院のパーマ器のようなドーム型の映像装置、あるいはヘッドマウントディスプレーといった視聴イメージが展示されていた。

▲視野角いっぱいの180度に広がる円筒スクリーン

▲8台の4Kプロジェクターを使って180度の円筒スクリーンに映像を投写していた。スクリーンサイズは計算すると670インチ相当か

 また、ブースの奥には幅17mの180度円筒スクリーンも設置。これは、3台の8Kカメラを使って撮影した映像を一つにまとめ(横長)、それを8台の4Kプロジェクターを使って投写する、というもの。映像が視野角いっぱいに広がるので、没入感も相当に高い

T1 ARを活用したテレビ試聴体験

テレビの周囲にARマーカーが設置されており、デモでは、対応アプリをインストールしたタブレットを向けると、画面の中から橋本マナミが飛び出してきた

 1Fの奥にはテレビとARを組み合わせた体験ブースも設置。テレビに表示される映像と、ARコンテンツ(映像)を同期させることで、たとえばテレビに出ていた人が、タブレット画面上に出現するといった、まるで貞子のような表現を映像として楽しむことができる

1 インテグラル3DCG映像のリアルタイム生成技術

▲ボルダリング(ロッククライミング)している選手を撮影し、リアルタイムに3DCG化する(写真左の画面)、というのが今年の展示のキモ

▲インテグラルシール(?)を貼ったスマホで、裸眼で3D映像が見られる、というデモ。指でスワイプすると、映像の角度(見え方)を動かすことができる

きれいなお姉さんが説明してくれる

 技研ではかねてより、裸眼で3D立体視が可能なインテグラル式の3D映像表示技術を各種研究・展示してきたが、今年は撮影(キャプチャ)した映像をリアルタイムに3DCG化し、インテグラルシールを添付した(裸眼で立体視できる)スマホに映像を表示する、という内容に。映像を見ながらスワイプすることで、表示される映像を動かし、いろいろな角度から見ることができる

6 フルスペック8Kライブ制作伝送実験

▲31.5型の8K液晶モニター。8K/120pのHDR映像の表示が可能

 地下1Fに下りたブース6では、フルスペック8K映像の伝送実験の機材が、広い面積を使って展示されていたが、そこで伝送されてくる映像を表示していたモニターに注目。シャープと技研が共同開発した31.5型の8K液晶モニターで、技研のいうフルスペック8K(=8K/120p)のHDR映像を表示できるのが特徴。明るさは、全白で1000カンデラを実現しており、ローカルディミングにも対応する。入力端子はU-SDIだ

試作機ながらかなり薄型にまとめられている。接続ケーブルはU-SDI1本