磁気フロート機構搭載で、重量級プラッターを採用した
9インチS字型アーム搭載ベルトドライブ機「プロジェクト Xtension9 S-Shape」

 オーストリアのプロジェクト・オーディオシステムズから発売されたエクステンション9・Sシェイプは、9インチ長のアルミニウム製S字タイプ・トーンアームを搭載するアナログプレーヤーである。ブランド名と型番の筐体表面への記載はないが、ベルト駆動で全体がコンパクトにまとめられた本格仕様である。プレーヤーの総重量は16㎏だという。

トーンアームは9インチ長のスタティックバランスS字型。ユニバーサル型であるためヘッドシェルを付け替えてのカートリッジ交換も容易。

ベルトドライブ式で、回転数の切り替えはフロント左のスイッチで行なう。

 5・4kgのプラッターは、アルミニウムを主体にサーモ・プラスチック・エラストマーを組み合わせることで制振性を高めている。軸受け部分はセラミック製ボールとの接点を上部に置いた逆スピンドル構造を採用。加えて、マグネットフローティング機構(磁気反発)を備えて接点に対する荷重負荷を減らしている。黒色の硬いマットはリサイクルしたアナログディスクということで、プラッターにしっかりと接着されている。盤面のスリップを防ぐ目的からか、800gの真鍮製スタビライザーが付属。断面が円形状の丸ベルトが使われているのがユニークだ。ベース部分は金属顆粒を含有した高比重のMDF製。3点の脚部は磁気反発を利用したフローティング構造で、外来振動を効果的に遮断する。

プラッターは熱可塑性エラストマーで制振したアルミニウムと接着されたビニールのサンドイッチ構造。

スピンドルの軸受け部にはセラミックボールが使われ、マグネットフローティングの逆スピンドル構造とすることで軸受けの負荷を減少させる。

 メッキ仕上げのトーンアームはユニバーサルヘッドシェル対応である。カウンターウェイトは2種類を装備。出力ケーブルは交換可能な標準5ピン端子を採用している。
 本機はフェーズメーションPP1000(MC型フォノカートリッジ)を装着して試聴に臨んでいる。昇圧トランスフォーマーはエアータイト製ATH3でプリアンプも同社ATC5、パワーアンプも同社ATM3(モノブロック)。スピーカーシステムはB&W 800D3を使っている。

試聴に使用したカートリッジ/フェーズメーション PP1000
●問合せ先:協同電子エンジニアリング(株)

個々の音の存在感と広々とした空間描写が得られた。

 ホリー・コール「ベッドで煙草を吸わないで」からの「アイ・キャン・シー・クリアリー・ナウ」は、発声のクリアさとアコースティックベースの弾む低音が心地よく、個々の音の存在感と広々とした空間描写が得られた。アンセルメ指揮「三角帽子」では硬めのマット素材が効いているのか、ピッコロの音ヌケが鋭角的に感じられ、総じて一音一音が明確に聴き取れる鮮明さが味わえた。再生中にラックを指で叩いてみても打音がスピーカーからほとんど聴こえないのは、脚部の遮断性能が優れていることを示している。S字型のトーンアームも操作性が良く、感度もなかなか高いようである。アームレストに磁石を仕込むというのは国産機にはない発想といえる。

 独ストックフィッシュのオムニバス盤で聴くクリス・ジョーンズ「ノー・サンクチュアリ・ヒア」は、厚手の低域を従えた男性ヴォーカル曲である。自宅で普段に聴いている音と比べると、リズムが僅かにゆったりと刻まれるようなイメージだったのが印象的。ベルトドライブ機らしい音の感触であり、全体的なまとまりも良好である。試聴ではダストカバーを外して聴いている。
 輸入品ということを考えてもコストパフォーマンスが高い、注目すべき製品である。

プロジェクト Xtension9 S-Shape/ ¥300,000(税別)
トーンアーム部
 型式:スタティックバランスS字型
 ●全長:230mm ●オーバーハング:18mm ●適合カートリッジ重量:4.0〜14g
プレーヤー部
 駆動方式:ベルトドライブ
 ●回転数:33・1/3、45rpm●ターンテーブル:30cmアルミニウム製5.4kg
 ●寸法/重量:W465×H185×D350mm/16kg
※備考:ダストカバー付属、写真のカートリッジは別売

問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター☎0570(666)112