マランツから、高さ105mmのスリムデザインAVセンター「NR1710」が発表された。価格は¥90,000(税別)で、6月中旬の発売を予定している。
NR1710は、マランツが以前からラインナップしている、薄型AVセンターシリーズの最新モデルとなる。同社によるとスリムデザインのAVセンターは市場でも人気を集めており、一昨年のNR1608比で出荷数は2.4倍に増えているそうだ。
またこのシリーズはオーディオ用としても使われることが多く、昨年モデルのNR1609では25%のユーザーがリビングなどで2ch用として使っているという調査結果も出ているそうだ。
マランツではこれを踏まえ、NR1710には3つのテーマを設定している。その3つとは、「スリムデザイン」「リビング機器のコントロール」「マランツサウンド」だ。
まずスリムデザインは、これまでのシリーズ同様に高さ105mmの筐体に納めることで実現した。これによりリビングでの設置も容易になっている。
リビング機器のコントロールとは、映像・音楽ソースの多様化が進んでいる今日、それらを一括して操作できる機器が求められていることに対する回答だ。放送やパッケージといったこれまでのコンテンツだけでなく、ネット配信などに対しても、難しい操作なしに楽しんでもらいたいということだ。
そのために、NR1710では新たに「Dolby Atmos Height Virtualizer」「eARC(Enhanced ARC)」「Bluetooth送信機能」といった新機軸を搭載している(Dolby Atmos Height VirtualizerとBluetooth送信機能は秋頃のファームウェア・アップデートで対応予定)。
「Dolby Atmos Height Virtualizer」はハイトやサラウンドスピーカーを使っていない環境でも、サラウンドの臨場感を体験できる機能だ。
そもそもNR1710は7chパワーアンプも搭載しているので、Dolby AtmosやDTS:Xなどのイマーシブサラウンドを最大5.1.2環境で再現できる。しかし先述した通り、実際には2chや3chで使われていることも多い。そういった人にもサラウンドを楽しんで欲しいという狙いからこの機能が搭載されたのだろう。
Dolby Atmos用のデコード機能を内蔵しているので、2chや3ch環境でDolby Atmos収録作品を楽しむ場合には、圧縮信号を解凍した後、バーチャライザー処理を加えて再生するという流れになる。つまりそれだけ情報のロスも少ないわけだ。なお、Dolby Atmos以外の5.1chソースでも、このバーチャル機能は有効だ。
使いやすさについては、8入力、1出力のHDMI端子を装備した。しかもすべて4K/HDCP2.3対応という最新仕様で、HDR10/Dolby Vision/HLG(Hybrid Log-Gamma)のパススルー、eARC、ALLM(Auto Low Latency Mode)にも対応済みという。特にeARCは、Netflixなどの受信機能がテレビに内蔵され始めていることを考えると、今後必須になっていくのは間違いない。
HDMIマルチインプットアサイン機能の追加も面白い。これは、ひとつのHDMI入力に対し、2種類の音声をアサインできるものとなる。
たとえばHDMI1入力にBS4Kチューナーをつないで、通常は4K放送の絵と音を楽しんでいるとする。しかしたまには、映像は4K放送で音にCDを組み合わせてBGV的に再生したい場合もあるかもしれない。そんなときに映像はHDMI1のままで、音声はアナログにワンタッチで切り替えられるというのだ。リビングでパーティなどを楽しむ場合にも便利な使い方だろう。
ストリーミングコンテンツについては、独自の「HEOS」テクノロジーによるネットワーク機能により、Amazon Music、AWA、Spotifyなどの音楽配信やインターネットラジオ、ハイレゾファイルの再生が可能だ。さらにそれらの楽曲をBluetoothヘッドホンに送信もできる。
このBluetooth配信機能は、スピーカーとBluetoothの両方から同じ音を再生もできるし、Bluetoothだけを選ぶこともできる(Bluetoothのボリュウムはイヤホン側で調整する)。
深夜の映画鑑賞にお気に入りのBluetoothイヤホンを使ったり、家族と一緒にリビングで過ごしている時にも周りを気にせず好きな音楽を聴いたりといった色々な使い方ができそうだ。マランツでも、Bluetoothを活用して、リビングの過ごし方、共有のスタイルを探して欲しいと話していた。
なおBluetoothのコーデックはSBCのみで、遅延が発生する可能性はある。発売に向けて可能な限り音の遅れがないよう追い込んでいるというから、製品の仕上がりを期待したい。
最後のマランツサウンドは、このサイズであってもマランツ製品として満足できるクォリティを追求しようというコンセプトだ。実際NRシリーズでは、毎年のモデルチェンジで音に関する細かな改善を積み重ねてきている。特に昨年のNR1609では、主要回路のブラッシュアップや主要音質パーツのグレードアップが実現されている。今回はそれをベースに、全回路のパターン見直しと周辺回路まで含めた音質関連パートのブラッシュアップを行なっている。
NR1710の音質調整を手がけたサウンドマネージャーの尾形氏によると、特にDAC回路とパワーアンプ用電源部については、構造・パーツのグレードアップ両面で見直したそうだ。
DACには上位モデルにも採用されている旭化成エレクトロニクス製の32ビット・8chチップ「AK4458VN」を継承する。これまでのNR1710の音質調整シリーズでは、DACチップはデジタル/ネットワーク基板上に置かれていたが、今回はそれを分離し、独立基板にすることでデジタルノイズの干渉を抑制して、見通しのいいサウンドを実現した。
パワーアンプ用電源回路では、汎用電解コンデンサーのメーカーを変更(総数約200点)している。このパーツを変えることでベースとなるサウンドテイストも新しくできたとかで、S/Nの改善、空間の見通しや透明感が向上したそうだ。
接続するスピーカーのインピーダンスは4〜16Ωに対応しており、サラウンドパックやトップスピーカーを使わない場合は、フロントスピーカーをバイアンプで駆動できる。
実際に発表会でB&Wの800シリーズをNR1710でドライブしていたが、ヴォーカルや楽器のニュアンスをきちんと再現しつつ、クリアーで抜けのいい2chサウンドを聴かせてくれた。さらにバイアンプ駆動にすると、低域の階調再現ががぜん豊かになり、安定したピラミッド型の音場を楽しませてくれた。これなら2ch用として使いたいという人がいるのも理解できる。
その後、同じくB&Wの600シリーズで映画作品の『グレイテスト・ショーマン』(4.0.2)や『ダンケルク』(4.1.0)、『ボヘミアン・ラプソディ』(4.1.2)を再生してもらったが、こちらも音場全体のS/Nがよく、立ち上がりがいい。映画の量感を求めるならサブウーファーはあった方がいいが、サブウーファーなしでも求められる情報を素直に楽しませてくれる完成度だと感じた。
ハイレゾ再生については、DSD 5.6MHzと192kHz/24ビット・リニアPCMに対応済みで、さらにDSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生も可能という。
「NR1710」の主なスペック
●定格出力(8Ω、20Hz-20kHz、THD0.08%):50W×7
●接続端子:HDMI端子入力8系統、HDMI出力1系統、色差コンポーネント入力2系統、色差コンポーネント出力1系統、コンポジット映像入力3系統、コンポジット映像出力1系統、デジタル音声入力2系統(同軸、光)、アナログ音声入力3系統、フォノ入力1系統(MM)、LAN入力1系統、USB入力1系統、他
●寸法/質量:W440×H105×D378mm(アンテナを寝かせた場合)/8.4kg