高品質な自社製真空管300B/274B搭載アンプ。
堅牢な筐体に新機軸の音質調整機能を装備して、
新鮮味が溢れる美音で聴き手に迫ってくる

 高品質な日本製の300B直熱3極管を造る高槻電器工業から、同社製の特別なTA300Bと整流管のTA274Bを搭載するステレオパワーアンプ タカツキTA-S01が登場した。堅牢な筐体はハンドルを装備しており、重量は約28㎏と重い。また、出力トランスフォーマーにタムラ製F2007Aを採用するほか、細部に至るまで贅沢な内容である。

Power Amplifier タカツキ TA-S01 ¥1,500,000(受注生産)

 なによりも特徴的なのは、微細な音質チューニングが可能な3系統のパラメーターの搭載。ユーザーに調整を解放することで、好みの音質を提供するという姿勢は新機軸といえよう。

 ここで使われているTA300BとTA274Bは、共にガラス管のデザインが市販品と異なり、より肩の張った形状になっている。しかも、TA300Bはグリッドに金線を採用した本機専用スペシャルメイドで、いまのところ市販は考えていないという。精巧なバイアス用メーターは視認性が高く、交流点火のハムバランサーも装備している。

TA-S01に搭載されるTA300B真空管は特別なゴールドグリッド仕様。ガラス形状も市販品とは肩の張りが異なっている。

 出力は8W+8Wと標準的だ。シングルエンド入力はダイレクトが標準で、コンデンサー経由で直流成分を除去するACカップリング接続も選択できる。入力アッテネーターがあるのでDACやCDプレーヤーなどを直接繋ぐことも可能だが、ツマミの感触は硬めである。

 USB接続DACとしてアキュフェーズDC950とスピーカーにB&W 800D3を使った試聴は、思いのほか楽しかった。とりわけ興味を抱いたのは、前述した音質の調整機構。具体的には、高調波成分を5段階に調整できるハーモニック・コンテントと、段間コンデンサー2種類とカソード抵抗のバイパス・コンデンサー2種類の組合せによる4種類のカップリング/バイパス・キャパシター、そして8段階に低音域の再現性を微調整できるバイパス・パワー・キャパシターである。

フロントビュー。パネル右側に設けられたパイロットランプはスタンバイ時は点滅、スタンバイ動作完了時に点灯する。

リアビュー。右側の入力端子は上部がダイレクト、下部がACカップリングとなっていて、端子横のトグルスイッチで選択する。スピーカー出力は4、8、16Ωの3系統を装備。その左側はNFBのON/OFFスイッチとなる。

フロントパネル側のノブは、左から、アッテネーター、音色の深みを変化させるハーモニック・コンテント、4種の音色の違いが選べるカップリング/バイパス・キャパシター、低音の響き方を変化させるバイパス・パワー・キャパシター、バイアスメーターの表示切替え。

底板を外して内部を見る。高音質パーツを多用して全面に基板を使用し、効率的な配線を行なっている。

 NFBオフを選択して標準的なポジションで聴いた井筒香奈江「サクセス」は、ハイレゾ収録らしい広帯域さと直熱3極管ならではの新鮮味が溢れる美音で聴き手に迫ってくる。8W出力とは思えないパワー感は、筐体のリジッドさも効いているはずだ。ネルソンス指揮のショスタコーヴィチ交響曲(第5番)も堂に入った鳴りっぷりの良さが感じられた。ドラム奏者マヌ・カッチェ「キープ・オン・トリッピン」でハーモニック・コンテントを試すと、シンバルの高域倍音の艶やかさが変化するという印象。そして、ファジル・サイが弾く繊細なショパンのノクターン集でカップリング/バイパス・キャパシターの違いを聴くと、オイルコンデンサーのTYPE2-2で音色の粘りが増してくる。同じくバイパス・パワー・キャパシターは、響きの重みに作用するようだ。腰を据えて時間をかけ、じっくりと音質の違いを聴きたい製品だ。

 高槻電器製TA300Bのリファレンスアンプという性格も持ち合わせている本機は、相当にポテンシャルが高いアンプだと断言できる。

付属の真空管保護カバーを付けた状態。

Power Amplifier タカツキ TA-S01 ¥1,500,000(受注生産)
●出力:8W+8W●入力端子:LINE2系統(RCAアンバランス、Direct/ACカップリング)●入力インピーダンス:100kΩ●スピーカー出力端子:4、8、16Ω●使用真空管:TA274B×1、12AU7×4、TA300B×2●寸法/重量:W439×H240×D301mm(突起部含まず)/約28kg●備考:真空管保護カバー付属●問合せ先:高槻電器工業(株) ☎0774(43)2111 E-mail=sales@takatsuki-denki.co.jp