去る4月24日、東京・TOHOシネマズ新宿にて映画『さよならくちびる』の完成披露試写会が開催され、キャストの小松菜奈、門脇麦、成田凌、監督・脚本の塩田明彦、さらにサプライズで主題歌「さよならくちびる」を作詞・作曲・プロデュースしている秦基博が登壇した。

 この映画は人気インディーズ・デュオ・グループ“ハルレオ”のハル(門脇)とレオ(小松)が、付き人兼ローディのシマ(成田)と巡った解散ツアーを描いた青春音楽ロードムービー。これからの映画界を支えること間違いなしの3人がここで初めて共演を果たした形だ。

 そして監督は『害虫』、『風に濡れた女』等の作品を放ち、海外の映画祭でも高く評価されている塩田明彦。秦基博が主題歌「さよならくちびる」を、あいみょんが挿入歌「誰にだって訳がある」、「たちまち嵐」を提供していることも大きな話題だ(うたはいずれもハルレオが担当)。撮影は昨年の6月末から1ヵ月間かけて、川崎、東京、足利、大阪、新潟、函館で行なわれた。

●歌やギターについて
小松 「3曲やります」ときいたときに、「エッ」と思いました。3曲できるのかなって、それが映画で公開されるのは怖いなと思っていたんですけど、麦ちゃんという信頼できるひとがいたので一緒に楽しく練習して、「ここが難しい」とか、そういうこともだんだん素直に言えるようになりました。

門脇 1ヵ月半前ぐらいからコード(和音)を覚えて、そこから始まったんですが、最初は個人個人で先生について練習していたので、孤独な戦いで、ゴールも見えなかった。(小松と)ふたりでギターをかついでカラオケボックスに行って、練習したこともあります。

塩田 撮影が始まる3日前に、初めてふたりが本番と同じ衣装を着て、同じギターを持って、関係者の前で歌うという儀式があったんです。感動的でした。あ、目の前に本当にハルレオがいるって思った。泣いていたスタッフもいますよ、それまでのふたりの努力を知ってるから。

●ライヴ・シーンについて
小松 人前で歌って演奏して、アーティストになったような気分を味わいました。貴重な機会をいただくことができました。

門脇 歌もギターも撮影ギリギリまで不安はあったんですが、いざエキストラのお客さんを目の前にすると、少しでもいい時間だったと思って楽しんでいただきたいという気持ちが自然に沸いてくるんです。お客さんが私たちをミュージシャンにしてくれたんだと思いました。

成田 僕はライヴ・シーンを後ろから見ている唯一の登場人物です。各地方によって、ライヴの雰囲気が全然違っていたりするんです。とってもいい景色を見させてもらったなと思いますね。

●お互いについて
小松 麦ちゃんはとにかく落ち着いているんですが、ふざけると一緒にふざけてくれる。それは意外でした。

門脇 撮影中はふたりとも(髪型が)マッシュだったんです。(小松が)最初に私のことを“しめじ”と言ってきたんですよ。私は(小松を)“えのき”と言って。撮影していない会話の半分が大体きのこネタというか。

塩田 今、わかった。撮影中に“しめじ”という言葉がよく聴こえてきたんですけど、その時は何を言っているのかわからなかった。
 小松さんはすごくインスピレーションの人なんです。現場に行って、感じたことをフッと演じる。動きのひとつひとつが映画的でかっこいい。門脇さんはものすごい周到に準備してくるんですよ。台本の読みも深いんですが、現場に入ると環境に即座にフィットする。同じセリフを話すにしても相手から1メートル離れたところにいるか、2メートル離れたところにいるかでニュアンスが変わるでしょ。門脇さんは見事にアジャストするんですよ。

●主題歌について
秦 脚本に「さよならくちびる」という言葉があって、すごく大切な言葉なんだろうな、これをそのまま曲にできたらいいなと思って作りました。

小松 秦さんのデモテープを聴いた時点で「完成している、これをそのまま出せばいいのに」と思うぐらい感動的でした。これを台無しにできないというプレッシャーがありました。でもハルレオに作ってもらった曲なので、一から自分たちの色を加えることができるので、それが楽しみだなとも思いました。

門脇 この曲は劇中ではハルが作詞・作曲している設定なんです。私には(ハルの才能を)表現しきれていないのではないかという不安があったんですが、この歌にすべてがこめられていた。この歌を歌うことで、何度支えられたことかと思います。

塩田 秦さんには「単なる別れの歌じゃなくて、未来への希望が見えるような歌にしてほしい」という要望は伝えました。想定よりもかなり早くデモがあがってきたんですが、怖くてすぐには聴けなかった。心の準備をしてから聴いたら、ブワーッと鳥肌が立ってきて。「さよならくちびる」はシナリオでもあるし、セリフ、演技でもある。そのうえ、映画全体のテーマを表す一番大事な部分を人に預けたという不安があった。それがあったものだから、聴いたときの感動はひとしおで、1年経った今も聴き飽きない。毎日聴いてます。

 最後は小松と門脇が「さよならくちびる」、観客が「大ヒット!」とコール&レスポンス。バズーカから豪快に紙??が飛び出して場内を沸かせた。5月31日、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。

映画「さよならくちびる」
5月31日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか 全国ロードショー
配給:ギャガ
(C)2019「さよならくちびる」製作委員会