東芝映像ソリューションから2019年の4K液晶レグザが3シリーズ10モデル発売された。最高峰画質の「Z730X」、タイムシフトマシン搭載の「RZ630X」、大満足のスタンダード機「M530X」というラインナップで、それぞれの型番と価格は以下の通り。

IPS液晶パネルを搭載した「55Z730X」

Z730Xシリーズ
 65Z730X 市場想定価格35万円前後(6月上旬発売)
 55Z730X 市場想定価格25万円前後(6月上旬発売)
 49Z730X 市場想定価格19万円前後(6月上旬発売)
 43Z730X 市場想定価格17万円前後(6月下旬発売)
RZ630Xシリーズ
 50RZ630X 市場想定価格19万円前後(6月上旬発売)
 43RZ630X 市場想定価格17万円前後(6月上旬発売)
M530Xシリーズ
 65M630X 市場想定価格24万円前後(6月下旬発売)
 55M630X 市場想定価格18万円前後(6月下旬発売)
 50M630X 市場想定価格15万円前後(6月下旬発売)
 43M630X 市場想定価格13万円前後(6月下旬発売)

 発表会では、東芝映像ソリューションの取締役副社長R&Dセンター長の安木成次郎氏が登壇し、2019年レグザの狙いを解説してくれた。

 今年のレグザのテーマは“原点回帰”だという。レグザでは、ユーザーに「卓越感」「本質感」「高品質」という満足を提供することがテレビの本質であるという想いで製品をラインナップしてきた。今回はそれを今の時代に合わせて進化させている。

東芝映像ソリューションの取締役副社長R&Dセンター長の安木成次郎氏が今年のコンセプトを解説してくれた

 まずは4Kへの取り組みだ。そもそもレグザは4Kテレビの家庭用モデル第一号となるCELL REGZAを発売した実績があり、昨年は他社に先駆けて4Kチューナー内蔵テレビをラインナップしてきた。それもあってか、4Kチューナー内蔵の比率も高く、安木氏によると、今発売されている4Kレグザの97%がチューナー内蔵モデルだという。もちろん今回の新シリーズでも4Kチューナーの搭載は進んでおり、Z730XからM530Xまですべて4Kダブルチューナー仕様となっている。

 そしてレグザが提案したもうひとつのフィーチャーが「タイムシフトマシン」、いわゆる全録機能だ。「テレビで録画する」という文化は今や普通のものとなっているが、タイムシフトマシンなら地デジ5チャンネルを24時間録画して、後から観たい番組を呼び出せるわけで、一度使ったらもう手放せないという声が多いのも事実だ。

 新シリーズではZ730Xに加えてRZ630Xにもこの機能が搭載され、ラインナップを充実させている(RZ630Xには購入時に2Tバイトの録画用HDDが付属している)。

 さらに、東芝独自のクラウド&AIレコメンドシステムを使い、録画した番組の中からユーザーに適した番組をお勧めする機能も内蔵している。東芝では8年前からユーザーの視聴データを回収・分析しているとかで、かなりのビッグデータに基づいたレコメンドが提供されるはずだ。

 レグザの肝ともいえる映像エンジンは、Z730Xでは「レグザエンジンProfessional」が、それ以外の2シリーズには「レグザエンジンEvolution-S」が投入されている。使われているチップは昨年モデルと同じだが、ソフトウェアの進化により、画質の向上も果たしているそうだ。

Z730Xシリーズに搭載された「レグザエンジンProfessional」

 ではここから、2019年レグザのトップモデル「Z730X」シリーズについて詳しく紹介したい(RZ630X、M530Xについては別途リポートする)。

 今回のZ730Xシリーズは、65/55/49/43インチと画面サイズも拡充した。Zシリーズはこれまで50インチ前後が中心だったが、リビングの大きな画面でZの画質を楽しみたい、パーソナルユースで使えるZが欲しいといったユーザーの声も多かったとかで、65インチと43インチを加えている。

 なお、今回の全ラインナップのうち、55/49/43インチのZ730XにはIPS液晶パネルが、他はすべてVA液晶パネルが使われているとのことだ。

 さてZ730Xシリーズの画質面での特徴としては、先述したレグザエンジンProfessionalと、全面直下型LEDバックライトの搭載があげられる。LEDの点滅を厳密に制御するリアルブラックコントロールにより、高いコントラストを実現できるよう配慮しているのだ。

Z730Xシリーズでは、AI技術を使った超解像技術を搭載している。「深層学習超解像」は東芝が独自に構築したニューラルネットワークを活用して画像の傾向を判断している

 レグザエンジンProfessionalで進化した高画質機能として、AI超解像技術の「深層学習超解像」と「バリアブルフレーム超解像」にも注目したい。

 深層学習超解像とは、東芝が独自に深層学習させた5層のニューラルネットワークを使って映像信号の画質の特性を判別し、各シーンに最適な超解像処理を加えるというものだ。

 具体的には、編集時にエッジが強調された映像などが入力されると、ニューラルネットワークがその点を自動判別、超解像の際にエッジのざらつきがでないように処理内容を切り替えてくれる。2Kコンテンツに有効で、映像モードで「おまかせ」を選んだ場合に動作する。

 発表会のデモで通常の映像とエッジを強調した映像をZ730Xに入力し、それぞれどんな画質で再現されるかを比較視聴させてもらった。明るい海岸の映像は、「編集時にエッジを強調してもらいました」(ブランド統括マネージャーの本村氏)というもので、確かに周波数ヒストグラムを観ても全体的に持ち上げている。

 しかしZ730Xに再現される映像では極端なギラつきはなく、超解像のやり過ぎによる目に痛い映像にはなっていない。「ニューラルネットワークはブラックボックスなので、判断基準はわれわれにもわからないんです」とは画質担当の住吉氏の言葉だが、的確な判断ができているのは間違いない。

 最近の地デジ番組ではドローンを使った撮影も多用されているが、その映像はエッジが強調されていることが多いと本村氏は言う。深層学習超解像ではそんな番組も快適に楽しめるはずだ。

 なおこのニューラルネットワークの深層学習は常時更新されており(東芝の研究所で、技術者による判定結果をアップロードしている)、その結果はファームウェアアップデートとして各製品に反映していくとのことだった。

Z730Xの「深層学習超解像」動作検証モデルを見せてもらった。エッジを強調した画像を入力すると、画面下部に赤いラインが、通常の画像では青いラインが表示される。赤いラインの映像でも、再生されている画像には過度の強調感はなかった

 もうひとつのバリアブルフレーム超解像は、映像の種類と動きの量に応じて超解像処理で参照するフレームを変えることで、どのシーンでもノイズを抑えたクリアーで精細感のある画像を再現しようというもの。2K/4Kどちらの入力信号に対しても有効となる。

 動きの量が少ない映像では現在のフレーム基準に±3フレーム、中くらいの動きの場合は±2フレーム、動きの多い映像では±1フレームを参照するそうだ。なおこれは4K放送の場合で、地デジ等ではS/N改善のために、動きの量が少ない場合は±5フレーム、中くらいの場合は±4フレーム、動きの多い映像では±3フレームのデータも使っている。これらのフレーム数は、東芝技術陣が人間の知覚能力まで含めて追い込んでいった結果という。

 デモでは高層ビル群を上から捉えた画像を観せてもらったが、建物の輪郭や窓のフレームががたつくこともなく、なめらかな動きが再現できていた。こちらは3次元処理が可能な映像モードすべてで動作するとのことだ。

 その他、SDRで編集された映像をAI(人工知能)が機械学習して高精度にHDR変換する「AI機械学習HDR復元」や、HDR映像の肌色まで艶やかに再現する「美肌リアライザーHDR」といった機能もそれぞれ進化を果たしている。

 なおZ730Xシリーズは、HDR10とHLGのHDR信号には対応しているが、HDR10+やドルビービジョンには非対応とのことだ。

「レグザ重低音バズーカオーディオシステム」のユニット。写真手前がサブウーファーのボックスで、2基のウーファーユニットと4基のパッシブラジエーターを内蔵する

 最後に、Z730Xシリーズでは音の強化も図られている。それが、新開発「レグザ重低音バズーカオーディオシステム」の搭載だ。

 フロントL/Rには2ウェイ・バスレフ型スピーカーを正面向きにマウントし、さらに重低音バズーカウーファーを中央部に内蔵している。

 長方形のウーファーユニットは中央でふたつに分かれており、それぞれに楕円型ウーファーユニットと、2基のパッシブラジエーターが取り付けられている。ウーファーユニットは本体下向きに、パッシブラジエーターは前後に向けられている。こうすることでパッシブラジエーターの振動を打ち消し合うことができ、筐体を振動させることなく、豊かな低音が手に入るわけだ。

 また、これらのユニットを駆動するために合計80Wのアンプが奢られている点も見逃せない(43型までまったく同じというから凄い)。発表会のデモで映画作品も上映していたが、ダンスミュージックのビート感の切れもよく、銃撃による爆発音のずしりとした響きも心地よかった。テレビの音としては他を圧倒する品質と言っていいだろう。

 “録画文化を持つ日本という国で楽しむ、日本人のためのテレビ”として、数々の機能や高品質を備えたレグザZ730Xシリーズ。「4K液晶テレビでの一押しモデル」の座は今年も揺らぎそうにない。