左から OBERON3、OBERON/VOKAL、OBERON7

SPEAKER SYSTEM
DALI OBERON7
156,000円(ペア)+税
●型式:2ウェイ3スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、180mmコーン型ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:2.3kHz ●出力音圧レベル:88.5dB/2.83V/m ●インピーダンス:6Ω ●再生周波数帯域:36Hz〜26kHz ●寸法/質量:W200×H1015×D340mm/14.8kg ●カラリング:ダークウォルナット(写真)、ブラックアッシュ、ライトオーク、ホワイト

DALI OBERON3
80,000円(ペア)+税
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、180mmコーン型ウーファー ●クロスオーバー周波数:2.4kHz ●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m ●インピーダンス:6Ω ●再生周波数帯域:47Hz〜26kHz ●寸法/質量:W200×H350×D315mm/6.3kg ●カラリング:ライトオーク(写真)、ほか3種類の仕上げあり

DALI OBERON/VOKAL
54,000円+税
●型式:2ウェイ3スピーカー・バスレフ型 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、130mmコーン型ウーファー×2 ●クロスオーバー周波数:2.6kHz ●出力音圧レベル:89.5dB/2.83V/m ●インピーダンス:4Ω ●再生周波数帯域:47Hz〜26kHz ●寸法/質量:W441×H295×D161mm/7.45kg ●カラリング:ブラックアッシュ(写真)、ほか3種類の仕上げあり
●問合せ先:デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センターTEL.0570(666)112

現代的なゆるぎない応答性と、純度感を両立させた秀作

 DALI(ダリ)はデンマーク発祥のスピーカーメーカー。当初は既成ユニットを使いながら、キャビネットの立体造形やその優美な仕上げに特徴がある高級機路線だった。

 近年はユニットを自社開発して独自性を強め、また製品ラインナップも豊富になっている。今回のOBERON(オベロン)シリーズは、従来のZENSOR(センソール)に置き替わる低価格本格志向路線だ。

 オベロンは1、3、5、7とセンター用のVOKAL、また壁掛け用の薄型であるONWALLを揃えている。今回視聴したのはオベロン3と7。

 「3」は小型ブックシェルフ型ながら180mm径のウーファーを搭載した2ウェイ、リアバスレフ型式。トゥイーターはオベロン全モデル共通の29mm径ソフトドーム型。「7」は同じユニットを使ったダブルウーファー2ウェイ。スタンドは独自設計のアルミベースが付属して設置性が良好。ちなみに他のシリーズ機のウーファーは130mm径だ。

 ユニットの要素技術としては、まずウーファーのSMCマグネット・システムが特筆される。鉄などの金属磁性体や酸化鉄を使う磁極には渦電流による歪みが伴なうものだが、その対策として絶縁性の高い磁性素材を磁極端やギャップ部に配置している。そのSMC=ソフト・マグネティック・コンパウンドは鉄の微粉末にコーティングを施すことで絶縁性を確保しつつ高い透磁率を得るというハイテク素材。また駆動力を強化するために4層巻ボイスコイルを採用し、その巻線には軽量のCCAW=銅被覆アルミ線を使用する。

 振動板についてはウッドファイバー・コーンが特徴。緻密なパルプ素材に木材由来の繊維を配合して仕上げたもの。強靱性と軽さ、適度な内部損失を最適化している。これらの技術は上位機譲りだ。

 トゥイーターの振動板はシルク繊維系の丈夫で超軽量のドーム型だ。ドーム内部の吸音材はドーム形状に合わせていて不要な反射を吸収。トゥイータープレートによる振動板の落とし込みはさほど深くはなく、これは正面軸上音圧の強化と指向性の広さを両立させたためだろう。スピーカー端子は全機種シングル配線仕様。

雑味の少ない音響志向で
端正な描写力も際立つ

 まず「3」を2チャンネルで視聴すると、雑味の少ない清水のような音が流れ出してこのブランドの基本的な音響志向が知れる。中高域の輝きを目立たせずなめらかなタッチだ。オペラにおける男声の張り上げはやや抑え気味。最大の魅力は、微弱音ほどしっかり和声感や陰影をトレースする能力にある。それに音量を上げてもこの清涼なトーンに明るい音色美が伴ない、スケール感が破綻しにくい。

 次の「7」はアキュフェーズA75との相性が良好というべきか、大スケールの響きを放ちながら、よく彫り込まれた個々の音像が三次元的に定位する。混じりけのなさや端正な描写力は基本として確保しているのだが、ダイナミックレンジや低域のゆとりがあってこその表現域の広さは隠れもない。ジョニー・ホッジスとビリー・ストレイホーンのビッグバンドジャズ(SACD)など、厚い響きの音群が基調を作り、アルトサックスの高唱が明瞭な音像と密度感で浮遊する。躍動感も良好。凝縮感のある音が凝り固まらないのは微弱な余韻のトレース能力と和声の醸成能力による。オペラの男声も伸びやかだ。

 最後にフロントLRを「7」、センターをVOKAL、サラウンドに「3」、サブウーファーにSUB E9F、AVセンターにパイオニアSC-LX901を起用した5.1ch構成で『ブレードランナー2049』の音を確認。 

 荘重にして鮮烈な音の活気を痛感。各チャンネルのつながりがよく、静かな場面の透明な音場感が際立ってくる。各スピーカー自体がそういう描写性能を保持していることからくる響和的効果だろう。声の輪郭や語勢も明快。またAVセンターの明晰志向という個性もよく伝えている。現代的なゆるぎない応答性と純度感を高度に両立させた秀作を歓迎したい。

OBERONシリーズにはサブウーファーのラインナップがないため、同社で組合せを推奨しているSUB E9F(67,000円+税)をサラウンド再生時に用いた。ユニット口径は230mmで、クラスDアンプ出力は220W。30cm強のキューブ型の筐体で質量は11kgとなっている

バスレフポートは背面。スピーカー端子はシングルワイヤリング接続専用でYラグ/バナナプラグに両対応する。トールボーイ型のOBERON7(写真)とOBERON5には、不要な振動を低減させるアルミ製のベースがつけられた

最上部のトゥイーターユニットはOBERONシリーズ全モデルで共通の29mm口径品を採用。ウーファーユニットはOBERON7(写真)とOBERON3で180mm口径を、そのほかのモデルでは130mm口径品を使用。500Hzから2kHzの帯域で歪みを抑えるという磁気回路SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)マグネット・システムが新投入されたことが注目される。これはもともと上位シリーズで用いられてきた技術で、エントリークラスにあたるOBERONシリーズに技術継承されたことになる

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