イタリアメイドに回帰した
ソナス・ファベールの新ラインナップ

 近年のソナス・ファベールは、高級機だけでなくリーズナブルで扱いやすいモデルもしっかりとラインナップして、エントリー層を含む幅広いユーザーから支持を得ている。しかし、根底にある信念は変わらない。美しいデザインと意匠を含む同社のフィロソフィーは、創業者が去ったいまも、現メンバーに受け継がれているようだ。
 そんなソナス・ファベールから、「Sonetto(ソネット)」と名付けられた新スピーカーが発表された。エントリーラインに属していたVenere(ヴェネレ)の後継シリーズだ。

左から Sonetto I Sonetto III Sonetto VIII 

 ラインナップは、ブックシェルフ型スピーカー「ソネット1」、フロアスタンディング型スピーカー「ソネット3」「ソネット8」、センタースピーカー「ソネット・センター1」の4機種。
 開発陣は、サウンド・デザイナーにパオロ・テッツォン、エクステリア・デザインにリヴィオ・ククッツァを据えたチーム。これは上位モデルとまったく同じメンバー構成だ。
今年6月に、ペア1,380万円の新フラッグシップモデルAIDAⅡをリリースした彼らが、コストが限られたエントリーモデルをどう開発したのだろうかと強い興味が湧く。

Sonetto Center I 

 本シリーズは上位モデルと同じく、北イタリア・ヴィチェンツァの工房でイタリアの職人によって手作業で一台一台製造される。そう、シグネチャーを除くヴェネレの生産国は中国だったが、ソネットの生産はイタリアなのだ。ソナス・ファベールの魅力のひとつはイタリアメイドであることは言わずもがな。両手をあげて歓迎したい。 エントリーモデルとはいえその佇まいは美しい。リュート型を進化させたライラ型のキャビネットと、ダークオークの木目はオーディオルームに設置しても存在感抜群。また、人工皮革があしらわれた天板部も上質だ。 ユニットは上位モデル開発で培った技術を生かした専用設計だ。トゥイーターは、シルク・ソフトドームとリングラジエーターの特長を組み合わせた独自のアローポイント・DADユニット。これをキャビネットの振動を遮断する、粘性を持つ専用バッフルに装着。ミッドレンジはケナフ、カポック、セルロースなど複数の天然素材をブレンドしたユニット。ウーファーには軽量で剛性の高いアルミニウム合金製のダイアフラムを採用する。シリーズ4機種それぞれに、これらのユニットが組合せを変えて搭載されている。

ドームの中央付近をダンプするアローポイント・DAD(ダンプド・アペックス・ドーム)トゥイーターを搭載。ソフトドームとリングラジエーター型ユニットの長所を融合しているという

シリーズはすべてバイワイヤリング対応。また、写真のSonettoⅧ、ならびにSonettoⅢは本体下部、下向きにバスレフポートを備える。SonettoⅠはフロントバスレフ、Sonetto CenterⅠはリアバスレフタイプ

基本性能の高さゆえ マルチchソースとの相性も抜群
ヒット製品が大きく進化し、さらに高い完成度を獲得した

 今回はハイレゾ音源を中心に試聴を行なった。まずはシリーズに共通する音質傾向から記したい。本シリーズは、各ユニットの基本性能が高くトランジェントに優れる。そこにキャビネットの響きが色艶と音楽性を付加している印象だ。
 たとえば、ブックシェルフのソネット1で聴くノラ・ジョーンズは、一聴して情報量が多く、センターに定位する音像はシャープ。ユニットの性能が高いのだろう。原音を正しく提示しつつ、ヴォーカルには情緒的な表現も感じさせてくれる。ウーファーが追加されたソネット3では、低域レンジが拡大し、質感表現に余裕が生まれる。ベースやドラムの輪郭が滲まず、最低域まで伸びを感じさせるのだ。そして、さらに大型のソネット8はよりワイドレンジで、ヴォーカルの口元はチャーミングで艶やか、ベースは立体的で深く沈み込む。
 次にシアター環境でのマルチ ch再生も試した。フロントにソネット8、リアにソネット1、センターにソネット・センター1を使い、ノラ・ジョーンズのライヴBD『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』を鑑賞する。美しいイタリアメイドのスピーカーに囲まれるだけでも笑みが出てしまうが、全方位的に完成度の高い音はマルチchソースとの相性も抜群。小型のライヴハウスの音響的なクセまでリアルに表現する。特にソネット1はシリーズの中でも価格が安く、導入ハードルも低い。
 ソネットシリーズは、ヒット製品だったヴェネレシリーズを大きく進化させ、イタリア国内の生産に戻すという原点回帰も図った。創業者フランコ・セルブリン氏の時代は音のパッションや楽器の音色表現が魅力と思っていたが、ソネットはそのよさを受け継ぎつつ、情報量やレンジの広さ、サウンドステージ表現などのオーディオ的な尺度での完成度も求める形に変化している。

【Sonetto I】¥198,000(ペア)+税
 ●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー
 ●クロスオーバー周波数:2.5kHz
 ●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
 ●インピーダンス:4Ω
 ●寸法/質量:W219×H359×D305mm/5.5kg
 ●備考:専用スタンドStand Sonettoは別売で¥66,000(ペア)+税

【Sonetto III】¥500,000(ペア)+税
 ●型式:3ウェイ4スピーカー・バスレフ型
 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ミッドレンジ、
        150mmコーン型ウーファー×2
 ●クロスオーバー周波数:220Hz、3.25kHz
 ●出力音圧レベル:89dB/2.83V/m
 ●インピーダンス:4Ω
 ●寸法/質量:W219×H1,018×D305mm/16kg

【Sonetto VIII】¥900,000(ペア)+税
 ●型式:3ウェイ5スピーカー・バスレフ型
 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ミッドレンジ、
        180mmコーン型ウーファー×3
 ●クロスオーバー周波数:270Hz、3kHz
 ●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
 ●インピーダンス:4Ω
 ●寸法/質量:W283×H1,188×D427mm/26.3kg

【Sonetto Center I】¥150,000+税
 ●型式:2ウェイ3スピーカー・バスレフ型 
 ●使用ユニット:29mmドーム型トゥイーター、150mmコーン型ウーファー×2
 ●クロスオーバー周波数:1.55kHz
 ●出力音圧レベル:90dB/2.83V/m
 ●インピーダンス:4Ω
 ●寸法/質量:W495×H242×D303mm/6.5kg

問合せ先:(株)ノア☎03(6902)0941