ヤマハのフラッグシップとなる5000シリーズとして、2016年夏にデビューしたスピーカーシステムNS-5000に続いて今回紹介するセパレートアンプのC-5000+M-5000が登場。本シリーズからは外れるが、ホームシアター用には既に大好評のセパレート型AVセンターCX-A5200+MX-A5200があり、さらに春ごろにはアナログプレーヤーのGT-5000も登場予定だ(※)。このヤマハの怒涛のリリースには感心するばかり。

写真左:M-5000/写真右:C-5000

YAMAHA
CONTROL AMPLIFIER
C-5000
¥900,000+税
●接続端子:アナログ音声入力6系統(RCA×4、XLR×2)、MM/MC対応フォノ入力1系統(RCA、XLR兼用)、ボリュウムスルー入力1系統(RCA、XLR兼用)、アナログ音声出力3系統(RCA×2、XLR) 他●消費電力:60W(待機時0.2W)●寸法/質量:W435×H142×D451mm/19.1kg●カラリング:シルバー(写真)、ブラック

POWER AMPLIFIER
M-5000
¥900,000+税
●出力:100W×2(8Ω)、200W×2(4Ω)、400W(8Ω、モノーラル駆動)●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)●寸法/質量:W435×H180×D464mm/26.9kg●カラリング:シルバー(写真)、ブラック

広いサウンドステージを描く。間違いなく長く使える優秀機だ

 ではC-5000とM-5000を紹介しよう。セパレート型のC-5000+M-5000で開発陣が注力したのは、フォノ入力を含むすべての入力からスピーカー出力に至るまでの全段を、完全バランス伝送としたことである。

 プリアンプのC-5000はフローティング&バランスアンプ回路を採用。これは従来ヤマハではパワーアンプに採用していた同社オリジナルの回路で、今回初めてプリアンプにも採用。特徴はグラウンドから解放されホットとコールドの信号のみで動作するので、グラウンドを巡るノイズの影響から逃れることが可能となり、中高域のみならず低域の質感もきわめて向上することである。さらにすべてのオーディオ回路をチャンネルごとにワンボード化して背中合わせに配置してシグナルパスの最短化を図る、ブックマッチコンストラクションを採用。これにより信号は純度を保ったままパワーアンプに届けられる。

 パワーアンプのM-5000は、出力段をパラレルMOS-FETで構成して出力は200W×2(4Ω)。本機の出力段のL/Rとホット/コールド、計4組の電力増幅回路は、C-5000のところでも触れたがグラウンドに対して電気的にフローティングされて完全対称化が図られたヤマハの特許技術、フローティング&バランスアンプ回路を採用して、微細な電圧変動やグラウンドを巡る外来ノイズの影響も徹底排除できる。他にも大容量1200VAのトロイダル電源トランスの採用や、重量パーツの振動を機構的に排除するメカニカルグラウンドコンセプトなど、注目点は数多い。

↑C-5000はフロント側に左右チャンネル別の大容量トロイダル電源トランス(各25VA)を用意。トランスとシャーシの間には3mm厚の真鍮ベースを挟み込む音質チューニングも施されている。ふたつのトランスの間にはこちらもチャンネル別の電源整流回路(上下2層)を搭載し、リア側の各チャンネル基板へと最短距離・左右等長での給電を実現している

オーバートーンの漂いと音数の多さが特筆すべき長所

 試聴はスピーカーにモニターオーディオPL300Ⅱ、ソース機器はMac+オーディルヴァーナにアキュフェーズDP750を組み合わせてハイレゾを再生した。最初はセパレートアンプに聴き慣れたアキュフェーズC2850+A75を使ってPL300Ⅱをドライヴ、その後でヤマハC-5000+M5000に替えて聴いている。

 まずアキュフェーズのペアで聴いた音だが、どの曲もほのかな温かみの感じられるリッチなサウンド。対するC-5000+M5000は総じて透明感の高さとサウンドステージの広大さが印象的で、温度感はニュートラルと言える。

 鮮烈な演奏とダイナミックレンジの大きな録音が特徴のコンテンポラリージャズ『ブルーノート・オール・スターズ』(96kHz/24ビット/FLAC) は、強烈なエネルギーの低域(特にキック)が俊敏に飛び出して、これぞ目の覚めるような音。エフェクティヴなキーボードの浮遊感も驚くほどだ。アンドリス・ネルソンス指揮『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番』(96kHz/24ビット/FLAC)も精細感が一段とアップした印象で、音数の多さとオーバートーンの漂いは特筆したい長所である。普段は温かくて柔軟、悠々とした音を聴かせる感じのPL300Ⅱだが、これほど精細な音色と共にクリアーな低音が飛び出すとは。

 ヴォーカルはホセ・ジェイムスのニューアルバム『リーン・オン・ミー』(44.1kHz/24ビット/FLAC)を聴いたが、独特のスモーキーヴォイスが切々と歌い上げる「消えゆく太陽」は、聴いているこちらのハートをジワーっと熱くした。硬質感や音にエッジを付けた印象が皆無なのに、明快でナチュラルな歌声である。

 本ペアはフロントに9㎜厚、トップにも6㎜厚のアルミ無垢パネルを採用。さらにサイドにはピアノフィニッシュのウッドパネルを装備する洗練されたデザインだ。軸受部にボールベアリングを採用したボリュウムノブや、タッチ感覚のよいレバースイッチなど操作感も上々。長く手元に置いて使える優秀機として高く評価したい。

↑コントロールアンプC-5000。入力端子は左側、出力端子は右側に配置される形をとっており、上段が左チャンネル、下段が右チャンネルとチャンネルごとに一枚の基板に集約された結果、一列に並ぶ。この基板を背中合わせに配置し、信号経路の短縮を実現した。フォノ入力はMM/MC両対応で、バランス設計の回路を最大限に活かせるXLR入力も装備している

↑パワーアンプM-5000のリアカット。スピーカーターミナルは無垢の真鍮削り出しを採用し、バナナプラグ、Y字プラグ両方に対応している。M-5000を2台使ってモノーラルアンプとして使用するプリッジ接続モードももちろん用意されている

(※)アナログプレーヤー『GT-5000』については、2019年4月の発売予定とされていたが、生産の都合により発売は2019年11月に延期となっている
(以下ヤマハからのリリース情報)
https://jp.yamaha.com/news_events/2019/audio_visual/20190214.html

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