ソニーから、リニアPCMレコーダーの新製品「PCM-D10」が発売される.市場想定価格は5万円前後で、1月26日の発売を予定している。

発表会では、PCM-D10を使った録音環境を再現し、モニター時の音を聴かせてくれた

 同社のリニアPCMレコーダーには、エントリーモデルのPCM-A10とトップモデルのPCM-D100がラインナップされているが、新製品のPCM-D10はその中間に位置し、趣味としての音楽録音から、プロ/セミプロの音楽コンテンツ制作まで幅広い用途で使える製品になっている。

 スペックとしては、リニアPCM192kHz/24ビットの録音・再生が可能で、上位モデルD100のようなDSDでの録音には対応していない。内蔵マイクは可動式の高感度ステレオタイプで、伸びのある低域やヴァイオリンの倍音まで収録できるという。なお記録メディアとしては、16Gバイトの内蔵メモリーに加え、SD対応のカードスロットも準備されている。

 またD10ならではの特徴として、2系統のXLR/TRSコンボジャックを搭載している点が挙げられる。これにより外部マイクや音楽機器とダイレクトに接続でき、業務用途での活躍が期待できるわけだ。

 48Vファンタム電源供給対応なので、コンデンサーマイク等をつないでも問題なく使えるそうだ。ちなみにソニーでは、C-100やECM-100N、ECM-100Uといった同社製コンデンサーマイクと組み合わせれば、ハイレゾでの録音も安心だと説明していた。

本体正面左側(写真上)には、ヘッドホン出力や各種操作ボタンが並ぶ。右側(下)には録音レベルのボリュウムノブやカードスロットなどを搭載

 A/Dコンバートの要となるチップにはAKM(旭化成エレクトロニクス)のAK4558を2基採用。これにより、録音時に「デジタルリミッター」と「高S/Nモード」という機能が使えるようになった(選択式)。

 まず「デジタルリミッター」は片方のA/Dコンバーターで通常のレベルの音声信号を、もうひとつではリミッター回路を通して12dB低い信号を確保しておく機能だ。突発的に大きな音が入って音が歪んでしまった場合には、12dB低い信号と差し替えることで破綻のない録音が確保できるという。

 「高S/Nモード」はデジタルリミッターの仕組みを応用したもので、A/D変換時に発生する機器内部のノイズを抑えている。この結果、少音量時の録音でノイズに埋もれてしまう部分のデータを差し替えることができ、微小な音までクリアーに録音できるようになる。なお「デジタルリミッター」をオンにすると、「高S/Nモード」は無効になる。

 さらに録音レベルの調整用にはアナログボリュウムを採用することで、少音量時でもビット落ち等で情報をロスすることがないよう配慮しているという。

XLR入力は本体下面に備えている。コンデンサーマイクへの電源供給も可能

 電源関連では、3300uF(マイクロファラッド)の大容量コンデンサーを2基搭載した。これにより動作時の電源変動を抑え、供給電源を安定させることで精度の高い録音が可能になっている。なお、限られた本体に大きなコンデンサーを収めるために、設置場所や取り付け方にも相当な苦労があったようだ。

 ちなみに基板レイアウトについても、アナログとデジタルを分け、ノイズ等の影響を極力受けないような回路を実現している。

 本体操作については、物理スイッチを前面に配置し、直感的な操作ができるようになっている。この他にも、ヘッドホン出力の音声を「ステレオ/Lのみ/Rのみ」の3種類(Lのみ、Rのみは両方のドライバーから同じチャンネルを再生)から選ぶことも可能だ。

 さらに専用アプリの「REC Remote」を使えば、録音設定や録音時のリモコン操作にも対応する。また本体のUSB Type-C端子は、PCにつないでファイルを転送したり、外部機器からの電源供給を受けるといった使い方も可能だ。なおBluetooth(コーデックはSBC)の再生機能も搭載済みなので、スピーカーやヘッドホンとリンクして録音内容をモニターするのも簡単だ。

大型コンデンサーは、ひとつは縦配置、もうひとつは横向きにして収めている

PCM-D10の主なスペック
●録音フォーマット:リニアPCM(最大192kHz/24ビット)、MP3(320/128kbps)
●接続端子:MIC IN/LINE IN(ステレオミニ)、XLR/TRS入力、ヘッドホン出力(ステレオミニ)、LINE OUT(ステレオミニ)、USB Type-C、カードスロット
●内蔵メモリー:16Gバイト(リニアPCM192kHz/24ビットで3時間15分録音可能)
●寸法/質量:W80.2×H197.6×D37.4mm/約480g(電池含む)