映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第16回をお送りします。今回取り上げるのは『ヘレディタリー/継承』。不穏な空気、不気味な影……。ホラーの王道的手法を駆使した気味の悪い一作。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)

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『ヘレディタリー/継承』
11月30日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

 古くは『悪魔のいけにえ』や『キャリー』『オーメン』。最近のものではニコール・キッドマンの『アザーズ』や不気味少年の侵入劇『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』など。ホラー映画には家族を土台にして描かれるものが少なくない。

 家族はコワい。その関係から逃れるのはナンギ。ゆえに恐怖もそこから這い出てくることが多いのだろう。

 詳細は明かしていないけれど、この『ヘレディタリー/継承』が長篇第一作である新人アリ・アスター監督は“3年間以上、あまりにひどい体験をしたから、自分の家族は元々呪われているんだという気持ちになった”と語っている。

 そんな思いを抱えながら脚本を改稿しつづけ、撮影ショットを吟味し、完成したこの作品はとにかく気味が悪く、救いがない。けれども構成が緻密でおもしろいのだ。たとえば、主人公の娘はチャーリーという男の子の名前。なんで?

 終わってから考えると多くのヒントが埋められていた“ダッタノカモシレナイ”映画。ホラー・ファンは必見だろう。

 降霊会に満ちる不穏な空気。窓ガラスにぶつかる鳥。電信柱のボコッという音! リ・レコーディング・ミキサーは『アナベル 死霊館の人形』のトム・ライアン。ドルビー・デジタル7.1chの作品だが、天井近くに何かが見えるんだけど……! という高さも上手く表現されたサウンド・デザインだ。

 加えてパーカッシヴな打音から民族音楽風のドローン奏法まで、変幻自在の音を操る前衛バリトン・サックス奏者コリン・ステットソンの音楽がいい。ずうっと気色が悪い。聴覚に大きく訴えるオカルト作品である。

 来年1月公開の大注目作、リブート版『サスペリア』とテーマが似ているところもある。世界のどこかで、こういう事態が望まれているのだろうか。

『ヘレディタリー/継承』

11月30日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:アリ・アスター
原題:HEREDITARY
配給:ファントム・フィルム
2018年/アメリカ映画/2時間7分/ビスタサイズ
(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC
公式サイト http://hereditary-movie.jp/

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