「新4K8K衛星放送」が約3週間後の12月1日(土)にスタートする。これまでの地デジやBS放送を大きく超える解像度や色域(色再現性)などを備えた高品質の放送で、NHK、民放キー局から有料チャンネルまでの4K放送18チャンネル+8K放送1チャンネルが揃っている(一部のチャンネルは12月1日以降の放送開始予定)。

 家電量販店の店頭には新しく始まる4K放送用の単体チューナーやチューナー内蔵テレビが並んでおり、実際に店員さんに4K放送が見られるテレビに買い替えたいと相談している人を見かけることも多い。新4K8K衛星放送についての認知は進んできているのは間違いないだろう。

 とはいっても、新4K8K衛星放送がどんな特徴があって、受信のためにどんな準備が必要なのかについては正直ちょっとややこしい。そこでStereoSound ONLINEでも、新4K8K衛星放送について気になる点を、できるだけわかりやすく整理していきたい。

10月に開催されたCEATECのA-Pabブースでは、新4K8K衛星放送を大々的にアピールしていた

改めて、「4K」「8K」とはどういう意味?

 ご存知の方も多いだろうけれど、今回の新4K8K衛星放送は、その名前の通り“衛星を使った、4Kや8Kの解像度を持った次世代放送”ということになる。つまり2011年の地デジのようにこれまでの放送が入れ替わるのではなく、衛星放送(BS/CS)に新しいチャンネルが追加されるということだ。もちろん現在のBS放送やCS放送に変更はない。

 では追加されるチャンネルにはどんな特長があるのか。チャンネル数は先述したように4K放送がBSとCSで合計18チャンネル、8K放送は1チャンネルだ。ところで、その4K、8Kとはどういう意味だろう?

 4Kとは水平3840×垂直2160画素、8Kは水平7680×垂直4320画素の解像度を持った映像ということになる。いわゆるフルハイビジョンが水平1920×垂直1080画素なので、4Kはフルハイビジョンの4倍(縦横それぞれ2倍)、8Kは16倍(縦横それぞれ4倍)の情報量を持つと言われる。

 実際には地デジとほとんどのBS放送は水平1440×垂直1080画素で放送されているので、4Kは地デジの5.3倍、8Kは21.3倍のクィリティと考えてもいい(あくまでも画素数の比較という意味で)。

 では画素数が多いとどんなメリットがあるかというと、同じサイズの画面なら4Kはフルハイビジョンに比べて木目細やかになるので、さらに生々しく、リアルな映像が楽しめる。これもよく言われることだが、あまりにも細部まで見えてしまうので、女優さんのメイクまでわかってしまう……ということがマジにありえる。

 8Kになるとなおさらで、もはや画素の判別もできないほど。さらに映像によっては立体感まで再現されるので(3Dメガネなしなのに)、映像の中に没入できること間違いなしだ。ちなみに8Kは画素数が多いこともあり、現在発売されているのは60インチ以上の製品ばかり。というよりも、8Kの恩恵を充分に楽しみたければ70〜80インチなどの大型サイズがお薦めといえるかもしれない。

NHKの展示より。フルHDから4K、8Kを同じ画素サイズで表現すると、画面サイズは図のように大きく異なってくる

色再現や動きぼけも、今までより改善される?

 さて、新4K8K衛星放送の進化点は、解像度ばかりではない。もうひとつの進化点として色域拡大(色の再現範囲が広がる)がある。

 これまでの地デジやBS放送は、国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)が定めたRec.709という規格に則って放送されていた。これはブルーレイなどのパッケージメディアも同様で、その意味ではこれまでホームシアターでは、自然界の色のうちRec.709の色域に収まるものを観ていたことになる。

 これに対し新4K8K衛星放送では、Rec.2020という規格に変更されている。Rec.2020はRec.709よりも再現できる色の範囲は1.3倍ほど広がっており、実際に見える色、つまり自然な色に近い再現ができるようになるわけだ。

 また色域が広がるということは、今までより階調再現も向上するわけで、同じ青でも微妙なグラデーションが再現できることになる。分かりやすい例では、海原を捉えた俯瞰映像などで、水の青さがより豊かになって、結果として深い部分や浅い部分まできちんと捉えられるようになるはずだ。

 ちなみに新4K8K衛星放送では輝度の階調もこれまでの8ビット(RBGそれぞれ256階調)から10ビット(RGBそれぞれ1024階調)にアップしている。これは明るさの変化もそれだけ細かく再現できることを意味しており、色域拡大と併せて数値以上の恩恵が感じられるはずだ。

テレビ放送の画質面での進化をチャートで表したもの。新4K8K衛星放送では、「解像度」「量子化(階調)」「色域」「HDR」「フレムレート」の5つの軸がすべて進化している

 階調という意味では、HDR(ハイダイナミックレンジ)が採用されている点もトピックだ。HDRは既に4KのUHDブルーレイにも採用されて(HDR10方式)、オーディオビジュアルファンの間では話題になっているが、放送ではそれとは異なるHLG(ハイブリッド・ログガンマ)方式が使われる。

 細かい規格の違いはここでは割愛するが、HDRを採用したことでこれまでよりも高いピーク輝度を再現できるようになり、明るい場面で白飛びしたり、白い部分の階調が再現できなくなってしまうことがない。また明るい部分と暗い部分が写った映像でも、白が飛ばずに、黒もつぶれないといった再現ができるようになる。

 もうひとつ、これまでの地デジ/BS放送はアナログ放送時代と同じインターレース方式(60i=60分の1秒ごとに半分の走査線情報を送る)を使っていたが、今回はプログレッシブ方式(毎秒60/120コマの制止画情報として送る)となる。4K放送は60p(毎秒60コマ)だが、8Kでは最大120コマの放送も想定されている(放送開始時は60p)。

 放送がプログレッシブになると、サッカーや野球のボールといった動きの速い被写体のぼけが少なくなり、なめらかな映像で再現できることになる。2020年のオリンピックなどでは、プログレッシブ放送のメリットが活かされるはずだ。

 といった新4K8K衛星放送の特長は以下の総務省ウェブページにも紹介されているので、興味のある方はこちらも参照いただきたい。次回は放送の受信方法について整理しよう。

深キョンも新しい放送の魅力をアピール