世界185ヵ国で音楽配信サービスを展開している「DEEZER」(ディーザー)。日本でも今年の3月から正式にサービスをスタートしている。その一番の特長はCDクォリティのロスレス配信サービス(44.1kHz/16ビット/FLAC)を準備していることだ。そのDEEZER Japanのカントリーマネージャー 黒川剣氏が、先日開催された「秋のヘッドフォン祭2018」で講演会を開催した。StereoSound ONLINEでは、講演直後の黒川氏に単独インタビューを実施、音質にこだわる日本の音楽ファンに向けてのメッセージを聞いた。(StereoSound ONLINE担当)

−− 「秋のヘッドフォン祭2018」での講演会お疲れ様でした。

黒川 ありがとうございます。DEEZERは音楽配信サービスプロバイダーで、ハードウェアメーカーではないので、どれくらいの人が集まってくれるかと思っていましたが、沢山の方においでいただきよかったと思います。

−− 講演会でも説明がありましたが、改めてDEEZERのサービスについて紹介していただけますか?

黒川 DEEZERはグローバルで音楽配信サービスを展開しています。元々は、創業者のダニエル・バーリーが友達と好きな音楽をシェアするためにスタートし、その後2007年に会社を設立しました。本社はパリにあり、ドイツ、アメリカ、シンガポール、東京など世界各地に拠点を持っています。185ヵ国でサービスを展開していますが、これはストリーミングサービスとしてはアップルやアマゾンに次ぐ規模です。

−− それぞれの国で同じサービスを受けられるのでしょうか?

黒川 はい。DEEZERでは音楽はどの国でも自由に楽しめるべきだと考えています。つまり、ユーザーが日本に住んでいたとしても、世界中の音楽が楽しめなくては意味がないのです。そのために、各国の音楽文化を積極的に取り込んでいます。現在、MP3品質では5,300万曲以上、CDクォリティのFLACで3,600万曲以上をラインナップしています。

−− その両方を日本でも楽しめるわけですね。

黒川 弊社の「DEEZER HiFi」サービスでは、MP3とFLACの両方を楽しんでいただけます。さらに「FLOW」という楽曲のレコメンド機能もお使いいただけます。

 現在の日本には様々な配信サービスがありますが、それらはストリーミングとダウンロードに分かれています。ストリーミングは定額・聞き放題ですが、クォリティ的にはロッシーです。これに対しロスレスのハイレゾ音源はダウンロードばかりです。つまりその中間がない。

 日本の音楽ファンは、音質にこだわっていて、いいオーディオ機器を持っている方も多いのに、これはとても残念なことです。われわれとしては、そんな方々にDEEZER HiFiを提案します。先ほど申し上げたようにDEEZER HiFiはCDクォリティのロスレスでストリーミングを楽しんでいただけるので、音質を気にしている方には最適だと考えています。

DEEZER Japanのカントリーマネージャー 黒川剣氏

−− 講演会ではアンドロイドスマホを使って、ロスレス音質でデモをしていました。無線環境がポケットWi-Fiだったにも関わらず、音切れもなく、ストリーミングとは思えない音質で再生されていたと思います。

黒川 ありがとうございます。DEEZERのサービスはスマホのアプリから操作していただくことが多いと思いますが、ユーザーインターフェイスもわかりやすいと好評です。メニューに「カード」と呼ばれるアイコンが並んでいて。それぞれがテーマやジャンルに分かれています。ユーザーはカードを選ぶだけで、項目の選択や曲の再生ができます。

−− 再生時の歌詞表示機能もユニークでした。

黒川 曲の再生時に歌詞を画面表示する機能は他のサービスにもあると思いますが、DEEZERでは早送り、早戻しに対応している点が特長です。日本語だけでなく、英語や韓国語等も表示できるので、英会話等の勉強をしている方にはぜひ試していただきたいですね。

−− そしてもうひとつ印象的だったのが、楽曲をお薦めしてくれる「FLOW」でした。

黒川 FLOWは“あなたのサウドトラックを作成します”をキーワードに、DEEZERが独自に開発した機能です。ユーザーが好みに応じて曲やアーティストに「いいね」を付けていくと、FLOWがそれを元にお薦めの曲を探してくれます。

 またFLOWは「いいね」以外に、ユーザーの聴き方も分析しています。曲が流れ始めてどのタイミングでスキップしているか、あるいは最後まで聴いているかをデータとして取っています。同じ曲を何回聴いているかも分かっています。

 これは、同じアーティストであっても、すべての曲が好きというわけではないだろうということからの取り組みです。結果として、ビートルズは好きだけど、ウィングスは好みじゃないといった細かい情報まで解析してお薦めを選べるようになっています。

DEEZERの操作は、アプリ上の「カード」と呼ばれるアイコンをタッチして操作する

−− 操作としては、アプリのメニューからFLOWのカードを選べばいいんですね。

黒川 はい。FLOWは立ち上げるたびに、最新のリストからお薦め曲を選び直していますので、毎回内容が変化します。ですので、常に新しい曲との出会いがあるはずです。またFLOWには毎回曲を選び直してくれるカードの他に、「Inspired by」と呼ばれるより細かくお薦めを選ぶカードが3枚あります。

 「Inspired by」では、ユーザーがこれまで「いいね」をした曲やアーティストを元に、お薦め曲を細分化します。たとえば一枚目のカードは日本人アーティストで、2枚目は海外アーティスト、3枚目は海外アーティストでも女性ヴォーカルといった具合です。こちらはプレイリストを作っていますが、自動的に更新されるので、常に同じというわけではありません。

 もうひとつ「Discover」というカードもあり、こちらは試聴傾向に合いそうだけど、今まで聴いたことがない曲を選んでいます。これを聴いて「いいね」を押すと新しい情報が追加され、FLOWが更新されるわけです。

−− かなり複雑なアルゴリズムですが、これはすべてサービスとして行なっているんですね。

黒川 DEEZERのサーバーで処理していますので、ユーザーはまったく意識する必要がありません。さらにDEEZERでは、AIを使って曲の気分も分析しようとしています。この曲は悲しい内容だとか、怒っている曲だということを解析したうえで、ユーザーにお薦めしようという試みです。

 既にジャンルとして「ムード」はありますが、現時点ではオペレーターが手作業で分類しています。そこにAIを導入して分析を深め、ユーザーとのマッチングを深めたいと考えているのです。

 なお、FLOW以外の楽しみとして、各ユーザーが自分のプレイリストを公開できます。そうすると他のユーザーが自分と似た嗜好の人を探して参考にしたり、あるいはプレイリストを修正して、お薦め曲を交換できます。こういったユーザー同士の情報交換ができるのも、弊社の特長です。

 もうひとつ、「CHARTS」というカードでは各国の人気ランキングを公開しています。ここを見ると意外と知られていないアーティストがランクインしていたりして、面白いですよ。

日本の音楽配信サービスは、ストリーミング=ロッシー、ダウンロード=ハイレゾと区別され、その中間がないとDEEZERでは考えている

−− ところで、DEEZERのサービスで日本の楽曲はどれくらいラインナップされているんですか?

黒川 具体的な曲数は集計できていませんが、先日配信が始まった松任谷由実さんや中森明菜さんなど、歌謡曲も広くフォローしています。松任谷由実さんをロスレスで聴けるストリーミングは弊社だけです。

 またDEEZERでは、各国のユーザーがどういう曲を聴いているかを分析していますが、日本ではジャスや70年代のロックが好まれる傾向があります。EDMもそれなりに伸びてきています。

 こういった人気タイトルの充実は当然として、今後はアニメソングやアイドルの楽曲にも注力していきたいと思います。フランスではジャパニメーションの人気が高いので、本社からもアニソンの拡充をプッシュされています。

−− 最後に、日本の音楽ファンにメッセージをお願いします。

黒川 私は15年前から配信サービスに関わってきていますが、当時は回線速度がボトルネックでした。そのために、音楽であれ動画であれ、ファイルを小さくして、とにかくユーザーに届けるということが大切でした。

 しかし今日では環境は改善され、動画でも4K配信が実現しています。絵がそこまで高品質になるのなら、音もよくしていかなくてはなりません。「ヘッドフォン祭」を見ても分かるように、日本のオーディオファン、音楽ファンがいい製品を求めているのは間違いありません。

月額¥1,960で3,600万曲のCDサウンドが楽しめる点を、強くアピール

 でも、いくら高級なヘッドホンを買っても、音楽ソースが低品質だったら高音質では楽しめません。これまで音楽配信サービスはあまりいいイメージを持たれていないのは、圧縮音声で配信されているのが一番の要因ではないかと個人的には考えています。

 DEEZER HiFiは月額¥1,960のサービスで、ちょっと高いんじゃないのと言われます。でもCD1枚より安いし、それで3,600万曲のロスレスサウンドを楽しんでいただけます。またFLOWを使えば、知らない音楽に出会える可能性が広がります。これも音楽の新しい楽しみ方だと思います。

 DEEZERとしては、CD品質のロスレス音源をストリーミングで聴けるんですよということを、ユーザーさんに知って欲しいと思っています。それが広く認識してもらえれば、他の配信サービスも音質に気を配ってくれるのではないでしょうか。DEEZERがきっかけになって、CDクォリティでのストリーミングが普通になっていってくれればと期待しているのです。

 音楽ファンとしては、どのソースを聴くかも色々な選択肢があると思います。それがアナログレコードだろうと、ストリーミング、ダウンロードだろうと、種類は豊富です。しかし、もし音質に、さらに便利さにこだわるのであれば、DEEZER HiFiをお試しください。30日間の無料体験サービスも常時行なっています。